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犬の飼い主と獣医療専門家、シニア犬の健康管理についての認識を調査 そこには大きなギャップがあった

わんちゃんホンポ

シニア犬の健康、飼い主と専門家の認識はどのくらい違うだろう?

犬も人間と同じく加齢とともに慢性疾患などが増え、病院のお世話になる機会が増えるものです。このようなシニア犬のライフステージにおいて、飼い主さんが愛犬の健康管理についてどのような認識を持っているのかは、病気の予防や治療に影響を与えます。

また、獣医師や動物看護師などの獣医療の専門家がシニア犬の健康管理について持っている認識は、一般の飼い主さんのそれとはどのくらい違うものなのでしょうか。

この点について、イギリスのリバプール大学、同国の獣医療チャリティ団体People's Dispensary for Sick Animals (PDSA)、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームが調査を行ない、その結果が発表されました。

飼い主と獣医療専門家へのアンケート調査を実施

調査はイギリス全土の犬の飼い主と獣医療専門家(獣医師、動物看護師、動物医学療法士)を対象にしたアンケート形式で実施されました。

参加者の募集は、飼い主についてはソーシャルメディアやプレスリリースを通じて、獣医療専門家については英国小動物獣医師会の会員へのEメールで行われました。(どちらも抽選で商品券が当たる特典を設定)

飼い主への質問は、飼い主と犬の基本的な情報に加えて、ペット保険の有無、投薬をうけているかどうか、過去1年間に動物病院を訪れた頻度、過去1年間のワクチン接種状況、ワクチン未接種の場合はその理由、健康状態についての20項目、48項目の病気の兆候について観察したことがあるか、それぞれについて獣医師に相談したか(または将来において相談するか)、治療を受ける緊急性についてなどが含まれました。

獣医療専門家への質問は、参加者の職業と診療の属性、シニア犬の健康管理と病気の兆候に関する個人的な見解、シニア犬の健康相談を実施しているかどうか、シニア犬は若い犬とは異なる診察アプローチが必要か、シニア犬の受診やワクチン接種についての必要性などが含まれました。

最終的に飼い主からの回答は633件、獣医療専門家からの回答は305件が寄せられ、研究チームによって分析されました。

飼い主の認識と専門家の認識には大きなギャップがあった!

回答を分析した結果、飼い主と獣医療専門家の認識には大きな隔たりがあることが明らかになりました。

健康なシニア犬(7歳以上)は、年に1回は獣医師の診察を受けるべきと考える飼い主は47%(獣医療専門家は25%)でしたが、獣医療専門家の73%(飼い主は39%)は6ヶ月に1回は受診するべきと考えていました。

また14%の飼い主が動物病院に連れて行くのは病気になった時だけと答えたのに対し、98%の獣医療専門家はこのやり方は勧めないと回答しました。

ワクチン接種については、92%の獣医療専門家がシニア犬は毎年ワクチン接種を受けるべきだと考えているのに対し、前年にワクチン接種を受けていないと答えた飼い主は全年齢の犬で28%、そのうち33%はシニア犬にはワクチンは必要ないと考えていました。

飼い主が観察したことのある病気の兆候で最も一般的だったのは、散歩のスピードが遅くなる(57%)、歯石(53%)、立ち上がる時のこわばり(50%)でした。

飼い主はこれらについて病気の可能性より加齢と結びつけて考えていることが多く、診察の緊急性を感じていない人が大多数だったといいます。

同じく病気の兆候について、ほぼ全ての獣医療専門家が獣医師の診察を受けることは「中程度に重要」〜「非常に重要」と考えていました。

また獣医療専門家は「多くの飼い主がこれら病気の兆候を単なる老いだと考えることが一般的だ」と認識していました。これは飼い主の回答とも一致しています。

この調査結果で明らかになった飼い主と獣医療専門家の認識のギャップは、専門家による新しい教育的取り組みと、飼い主と獣医師のより効果的なコミュニケーションが必要であることを示しています。

調査で得られた知見は、病院で診察を受ける前に飼い主が記入するチェックリスト作成の設計にも使用されました。これは飼い主が見逃しがちで、そのため獣医師に伝えられない病気の兆候についてのリストです。

また調査結果を活かしたリーフレットやオスターも作成されクリニックなど診療現場で使用されています。これらのツールの効果を測定するため、現在飼い主や獣医療専門家からのフィードバックが収集されているとのことです。

まとめ

シニア犬の予防医療や治療について、飼い主と獣医療の専門家の認識には大きなギャップがあることが調査によって明らかになり、その調査結果を活かしたツールが作成されたという話題をご紹介しました。

イギリスでの調査結果ですが、日本でも同じような現象が起きていると考えられます。飼い主が気付きにくい病気の兆候のチェックリストなどは、ぜひイギリス以外の国でも広がってほしいものですね。

愛犬が歳を重ねた時の変化はついつい「もう歳だからねえ」と済ませてしまいがちですが、定期的に獣医さんの診察を受けて、積極的に相談することの大切さを改めて感じさせられました。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2024.1358480

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