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ヒット曲の歌詞誕生裏話を大公開! SMAP「SHAKE」の「プルルルゥハァー!♪」は、 「書くかそんなもん!(笑)」

TBSラジオ

6月1日(土)。ゲストは、日本を代表する作詞家&小説家の森浩美さん!
森さんが現在まで歌詞を手掛けた作品総数は、約700曲以上!荻野目洋子「Dance Beatは夜明けまで」、酒井法子「夢冒険」、森川由加里「SHOW ME」、田原俊彦「抱きしめてTonight」…などなど、歌謡曲を彩る名曲から、SMAP「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」、Kinki Kids「愛されるより愛したい」、ブラックビスケッツ「タイミング」など誰もが口ずさめるJ-POPまで、国民的ヒット曲のオンパレード!ゲストコーナーでは、森さんにヒット曲が生まれる経緯を根掘り葉掘り伺いましたが・・・?!

作詞家になる前は、放送作家だったという森さん。同門で兄弟子の秋元康さんの作詞活動に刺激を受け、「あきもっちゃんが売れるなら、俺も売れるかな」と、作詞家の道へ。「3年間やって、売れなかったらやめよう」と決意して臨んだ作詞業でしたが、3年経つ前に「Dance Beatは夜明けまで」(荻野目洋子)がオリコン4位の大ヒット!そこからは、”営業”しなくても作詞の仕事が入るようになったそうです!

SMAPのあの名曲が、○日で完成という衝撃の事実!

井上:やっぱり森さんといえば、SMAP!具体的に伺いたくて。森さんの「心血、注いだんだよ、この一言!」とか。

森さん:…うん。

井上:ない?!

森さん:…うん。それ考えてる時間与えてくれない作業だったからね、SMAPに関しては。もう、1日2日とか、そんな感じ。

犬山:い、1日2日で、この名作たちを…?!

森さん:大体そんなもん。作詞が一番最後の工程になるので。曲ができてアレンジして、もらうともうレコーディングまでさほど時間がありません、みたいな。そんなのばっかりだった。割とね、”駆け込み寺”みたいな役割をしていた。だって、「助けてー」って電話かかってくるけど、そんな、助けられないよね。まあ、時間をかければヒットするんじゃなくて、スッと書けた方が絶対ヒットする。

井上:「降ってくる」みたいなことはないんですか?

森さん:よく聞かれるんだけど、プロは「降ってくる」のを待ってたら締め切り間に合わないんで、ひねり出します。

井上:どういうところからひねり出しているんですか?

森さん:とにかくもう、いっぱい僕は書いていくんですよ。僕は「打ち込む」という作業で、何回も紙で打ち出していって、赤を入れて訂正をしていく。それを繰り返す。だからエコではない、決して。何枚も打ち出すので。で、直す時は手で直す。だから、「よし整ってきた、整ってきた」ってなると、完成に近づいてくる。

犬山:メンバーのことを考えながらとかは?

森さん:あー、全くないです。

犬山:えーーー!

井上:ないんですか!

森さん:だって、どこのパートを誰が歌うっていうのは、僕は決めるわけじゃないから。SMAPというグループは分かってるけど。グループのどこに焦点を合わせるってのはない。

「青いイナズマ」の「ゲッチュー!」は、マイケル・ジャクソン由来?!

井上:例えば、「青いイナズマ」っていうのはどういう経緯で書かれたんですか?

森さん:これはね、基本的にはもう林田建司君のために書いてるんで。SMAPはいわゆるカバー扱いなんですよ。でも、林田君も僕も、SMAPが歌う時に「これSMAPのために作った曲だね」ってなった。

井上:「ゲッチュー」とかそういうのは、どういうところから着想を?

森さん:これがね、林田くんの曲の特徴で、「うー」だの「あー」だのいっぱい入ってるんで、マイケル・ジャクソンみたいな、いっぱい入ってるんですよ。無視しても良いんですけど、無視すると負けた気になるんで。よーし全部つけてやろうと思った中に、「ゲッチュー」って言葉がハマって、意味は持たない。でも、やっぱり木村くんが単独で歌うと、ひとり歩きしちゃうんだろうね。だから「ゲッチュー」「ゲッチュー」、なんの話だか分かんなかった(笑)

井上:そこに思い入れは…?

森さん:ないです!合いの手だもん、あれ。それを誰が言うかで、こんなに大袈裟なことになってしまうっていうね。

井上:「青いイナズマ」でいうと、この部分こだわったっていうのは…

森さん:ない…。

井上:ないんですか!

森さん:ただ、これをね、SMAPに歌わせるって時にね、「大丈夫?」って。

井上:大丈夫?

森さん:当時の所属事務所としてみれば、こういうフラれちゃう詩とか、嫉妬する歌みたいなのを、「大丈夫?」って思ったんだけど、SMAPは何をやってもいいようなグループだったんで、それがかえって良かったんだろうなと。

犬山:確かに、ちょっとドキッとするセクシーな歌詞とかもありましたもんね。

森さん:まあね、どっちかって言うとそうですね。うん。

「SHAKE」は、お風呂で●分で完成!

森さん:あと、「SHAKE」なんかも、「プルルルゥハァー!」(※「SHAKE」冒頭で木村拓哉さんによるフレーズ)ってあるんだけど、書くかそんなもん!(笑)そんなの、書かないよね(笑)

犬山:森さん、「プルルルゥハァー!」を書いたわけではない?(笑)

森さん:これは書いてない、どう書くのこれ。曲に入ってたら書くけど、これはメロディーに入ってない。書かないよね、普通。これ書いてたら天才だよね(笑)

犬山:天才だと思います(笑)

井上:でも、この入り出しの…「きょう会わない?」ってキミの電話/ボクも今そう思っていた/テレパシーみたいでウレしい って、この入りとか…

森さん:これ、あちこちで話してるから、知ってる人は「またかよその話」だけど、これ30分で書いたんですよ。お風呂で書いたの。

井上&犬山:30分…!!

森さん:「SHAKE」はね、珍しく1ヶ月くらい前に曲もらってたの、実は。それで、違う詩を書いてプロデューサーに送って。あれ、もうそろそろレコーディングじゃないかなって思ってたら、ちょうど電話かかってきて、「どう?レコーディングいつ?」って言ったら、「うーん…、あれでも良いんだけどさ」って。「あれでもいいんだけどさ」は良くないんだよ!

犬山:はあ、はあ。

森さん:「本当はどういう風にしたいの?」って聞いたら、本当は山下達郎の「DOWN TOWN」みたいな雰囲気にしたいって。全然違うじゃん!曲も違うんだけどなと思いながら。まあいいやって。「ちょっとこれから風呂入るから、思いついたらまた連絡するわ」って。で、風呂入った途端、メロディーが流れてくるわけ、何回も聞いてるから。「DOWN TOWN」…って思った時に、渋谷の交差点がポンと浮かんだ。で、実はこれ「ポケットティッシュ」が出てきたけど、ここの2番が「ポケットティッシュ配ってんな、何してんな」っていうのが映像で浮かんだわけ。で、それを歌ってったら、ツルって歌えちゃったわけ。

井上:ちょっとでも、それでも「シェイクシェイク ブギーな胸騒ぎ」とか出てこないですよ!

森さん:でもこれは、小森田君(※小森田実さん)って作曲の人が、そんな風に歌ってるんですよ。あれ、いただいちゃおって。2番からできて、1番に戻って。それで、ただ、一応ね、何も考えてないって言うとアホみたいな作詞家になっちゃうんで(笑)。一応、そこに意味を持たせようっていうところがあって。この頃「草食男子」みたいなのが言われ始めて。

井上:1996年。

森さん:うん。これはだから、実は「デートにいそいそと行く男の子」みたいな感じだけど、全く逆で、書いてるのは。「今日はもう残業も何もなくなったんで、帰ってためたビデオ見よう」とか、「ゲームしよう」とか「1人で楽しくしよう」と思ったとこに、彼女から電話かかってきちゃったんで、
「これはどうしよう」と。「俺、帰って1人でゲームやる」と言ったら、「私と会いたくないの!」って突っ込まれるな、と。それは平和主義者としては得策ではないと。で、いろんなことを瞬時に考えた挙句、「いや、俺も今電話しようと思ったんだよ、テレパシーみたいだなね」って、調子のいいこと言っちゃった。

犬山:え!あれ?!心から、本当に会いたいんだと思ってました!

森さん:違う違う。

井上:直球の歌詞じゃないんですか?!

森さん:だからそういう風な男の子が増えてきているっていうことがあって。やっぱそこにちょっと「時代」が入ってないと、「雰囲気」入ってないと売れないんだよ。

犬山:でも、確かにすごく時代を感じます。

森さん:だから結局ね、テンション上げていかなきゃいけないんで、渋滞でも怒らないし、ガム踏んづけても怒らないと。「なんでそんな嫌な顔してんの?」ってやっぱり言われたくないんで、テンション高めに会った時に、「よ!待った?」っていうところへ入っていきたいっていう、男の子の詩でございます。

井上:はーー、そのあたりがあるんだぁ。

犬山:いやぁーーー

森さん:そういうのって、よく「引き出し」っていうか、やっぱためとくんだよね。こういうものを書きたいってっていう風に。

犬山:いつもこう、フワっと、映像があってそこから?

森さん:僕の場合、映像的だと思う。絵が浮かばないと駄目です。小説もそう。

名曲「ベストフレンド」も、「覚えてない」の衝撃!


井上:あと私、「ベストフレンド」も好きなんですよ。これあの、ある程度ストレートな歌詞じゃないですか。シンプルで。

森さん:これ、NHK「みんなのうた」っていうところ前提で、これすごく尊敬してる筒美京平先生が作曲をされていて、先生から「森君、こういうのをやるんだけど、書いてくれない?」と言われて。実は、女子高生が書いた詩があって、そこに「ママはベストフレンド」ってあったんですよ。「これ生かしたいからさ、他のとこちょっと補作してくれない?」って言われて書いて。

井上:それは新しい形ですか?人が書いたのは今までなかった?

森さん:いや、補作とかよくあるんですよ。で、NHKの場合は「ママがベストフレンド」っていうところが良いと。でも流石にCDにする時に、SMAPが「ママがベストフレンド」っていうのはちょっと気持ち悪いだろうっていうことで、友達っていうことに。

井上:母親に向けてのものだった曲を、友達向けにして。

森さん:うん、でも、そこだけかな。でも、これはストレートかな。

井上:「風が吹き抜けて 嵐が過ぎた後/必ずきっといつも通りに 空が晴れるように」とか、この部分。

森さん:ああ、なるほどね。

犬山:首を傾げていらっしゃる!(笑)

井上:ちょっと待って!(笑)深読みし過ぎなんですか?!

森さん:いやいや、皆さんだから、違うところに感じるんだなって。

井上:これ、最も感じてもらいたいところはどこなんですかね?

森さん:覚えてないよ。

井上:全部それ!(笑)

森さん:覚えてる?だって自分の番組で「あの時、あのニュース、こんな風に読んだな」っていう風に覚えてる?

井上:いや、自分の思い入れがある時は、「あの時のロケこうだったな」とか・・・

森さん:あー、Nスタで覚えてる?絶対覚えてる?!(笑)

井上:いや、全部は確かに覚えてない部分はあるけど…!(笑)


南ちゃんのナイスパスで生まれた、ブラックビスケッツ「タイミング」


犬山:私ですね、大好きな曲がブラックビスケッツさんの「タイミング」!

森さん:最近またちょっとね、TikTokでブレイクしまして、おかげさまで。

井上:これは、どういう経緯で?

森さん:これね、1回歌詞書いたのよ。で、プロデューサーは南ちゃん(※南原清隆さん)なんだけど、南ちゃんが「うーん」って、「これでも良いんだけど」って、「これでも良い」は良くないんだ。で、突然「森さんね、ビビアン(※ビビアン・スー)がね」って、ビビアンの話をし出して、「こいつね、間が悪いんですよ。だけど、何かしゃべり出すとすごく和むんですよ。周りね、雰囲気いいんですよね」って、全く違う話して、「あー、そっちかあ…」って。で、帰って、1時間で書いた。

犬山:1時間で!

井上:それ、元々見せたのは、タイミングについて書いてたんですか?

森さん:タイミングをね、「合わせる方が良いよね」って詩を書いてたの。結局、同じことを言いたいんだよね。同じ山を登りたいんだけど、ルートが違うっていうことであって。「あ、そうか、南ちゃん、なるほどな。合わせなくてもいいじゃんかっていう方が気が楽か」っていう。「それも個性だよね」っていう風に捉えた方が深くなるよね。ありがとう!ナイスパス!みたいなんで、もう帰ってすぐ1時間ぐらいで「できたよ」ってなって。

犬山:その歌詞を私は受け取って、「ズレた間のワルさも/それが君のタイミング」で、どれだけ救われたかっていう。人と一緒のようにできないこととで、ウジウジしがちなのが、「まあでも、これが私のタイミングだもん」なみたいなことで、本当に勇気をもらってたんですよ。

森さん:うんうん。変な話、「いじめ」とか1個も書いてないんだけど、割とね、そういうお手紙いただくんですよ。「これ聞いて、ちょっといじめられてたけど、頑張ろうかなって思いました」みたいな。

井上:森さんとしては、特に意図としてはないんだけども…

森さん:あのー、ちょっとそれは意図としては若干あったんだけども、ストレートに書いちゃうのは嫌だったんで、うん。でも、誰しもがやっぱり調子のいい時ばっかりじゃないし、全部ずれちゃってる方がいいよって言った方が、気が楽かなっていうのやっぱあるし。だからこれは、南ちゃんのお手柄っていうか(笑)

井上:なるほど、だからこれは、南原さんのその一言がなかったら、逆にタイミングを合わせた方の歌詞になってたかも…

森さん:そうだね。アジャストさせた方がいいよって詞になってたかもしれないけど。でもやっぱり、あの、捻りたいじゃん?(笑)

井上:かわいい(笑)

森さん:いい歳して「じゃん」もないんだけど。さっきの「SHAKE」もそうだけど、書かなくても念を作家として込めると、伝わるんだろうね。特に歌詞はそういう力があるんじゃないかなと思ってはいるけども。

犬山:今、だって20年経って、またTikTokで話題に…

森さん:でもそれだけ、世の中が不幸なままってことだよね。

井上:そうですよね、社会情勢は変わってないってことですね。やっぱりその背景背景に、合わせていくわけですよね。

森さん:やっぱりよく「時代の風」とかって言うけど、かっこよく言うと。そういうのは感じて書いていくんだけど、だから逆にまたウケたことは、もしかすると変わってないだろうなっていう。不幸せなのかなって、思っちゃうよね。


いかがだったでしょうか?ヒット曲の歌詞の誕生裏話や、森さんの歌詞の生み出し方、とても興味深かったです。

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