甲殻類は「潰して飲む」と美味い? カニ・エビ・オオグソクムシで「がん汁」作ってみた
味は良いけども、外骨格に覆われて食べづらいのが欠点の甲殻類。これを美味しく食べる方法が古くから日本各地に存在します。
どんなカニでも作れる「がん汁」
味はとても良いけど食べるのが面倒な食材、といえば、きっと多くの人が「カニ」を想像されるのではないでしょうか。タラバガニのような大きなカニであればまだ良いものの、基本的にはカニの身を殻からほじくり出すのは極めて面倒です。
しかし、そんな「カニの身ほじり」をせずとも美味しく食べられる便利な調理法がひとつあります。それは「がん汁」。これは生のカニを潰してエキスを取り、味付けして加熱したものです。エキスに含まれるタンパク質が塩分と合わさり、熱の力でつみれのように凝固し、非常に濃厚な汁の美味しさとカニの風味が楽しめます。
がん汁は、美味しいけれども手のひらほどの大きさしかない、河川に生息する「モクズガニ」というカニの調理法として全国的に知られています。しかし実はモクズガニ以外でもがん汁を作ることができ、海産のカニでも(やや凝固が弱くなりますが)ちゃんとそれなりの味になります。
エビで作ると「えびまき」
この「がん汁」と似たような料理に、宮崎県の「えびまき」があります。しかしこれは、名前からもわかるように、カニではなくエビを使います。
えびまきに使われるのは、河川の下流域に多く生息しているテナガエビ。大きいと胴の大きさが10cmを超えるそれなりのサイズのあるエビで、からあげの材料としては高級食材ですが、贅沢にもこれを潰して汁にしてしまいます。
できた汁はがん汁よりも甘みが強く、固形分も多くてより濃厚に感じます。テナガエビは各地の河川で採れる身近なエビなので、自作してみるのも良いと思います。
オオグソクムシでも作ってみた
さて、筆者はおそらく他に誰も真似したことがないであろう材料で「がん汁的なもの」を作ったことがあります。その材料とは「オオグソクムシ」。
オオグソクムシは深海底に生息するダンゴムシの仲間の甲殻類で、巨大なダンゴムシのような風体で活発に泳ぎ回る様子が「キモかわいい」と最近人気の生き物。深海魚の漁で混獲され、最近では食品にも加工されます。
このオオグソクムシで作ったがん汁は、カニのものともエビのものとも違い、とてもふわふわしたはんぺんのような食感がありました。味はシャコのようでうまみが強く、ちょっと独特の香りがありました。
美味しいは美味しいのですが、1杯作るのに数千円分のオオグソクムシが必要であり、一般的にはあまりおすすめできる料理ではありません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>