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6月24日は美空ひばりの命日 − 52歳で終わってしまった80年代の挑戦

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1986年05月29日 美空ひばりのシングル「愛燦燦」がリリースされた日

昭和アイドル「三人娘」の系譜


1964年(昭和39年)生まれの筆者が、小学校低学年のころに初めて好きになった歌手は天地真理だった。当時、天地真理、小柳ルミ子、南沙織が「新三人娘」と呼ばれて人気を博していた。

次に好きになった歌手は桜田淳子。日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』からデビューした同級生三人娘を「花の中三トリオ」と呼び、新三人娘を凌ぐ人気者となっていった。

その頃見ていた歌番組、NHKの『レッツゴーヤング』、日本テレビの『NTV紅白歌のベストテン』、フジテレビの『夜のヒットスタジオ』などには「花の中三トリオ」がよく出演していた。

歌番組のなかで真理ちゃんや淳子ちゃんよりも大人の歌手というイメージだったのは、伊東ゆかりや中尾ミエ。この二人に園まりを加えて「スパーク三人娘」と呼ばれ、新三人娘の前に人気があったと筆者が知るのはずっと後になってのことだ。

「新」三人娘がいるということは「旧」三人娘は誰だろう?

―― と疑問に思い親に尋ねたら、美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ、だと教えてくれた。

それぞれの存在は知っていても、いつも見る歌番組で頻繁に出るわけでもなく、小学生からすればものすごく年上のとても遠い人たちだと感じていた。

テレビの歌番組に出てくるのは、その時のヒットチャートを賑わす旬な歌手たちが中心であり、根強いファンが支える大物歌手は全国を回るコンサートなどステージが主戦場。田舎の小学生にとっての旧「三人娘」はテレビのなかでごくたまに見かける存在でしかなかった。

今と違って、ビデオやDVDもなければ、インターネットもない時代。音楽配信どころか、レンタルレコードというシステムもなかった。過去の映像や音源に手軽に触れる機会がないので、自分が見ているテレビ番組に登場しない大物歌手に親近感を覚えるきっかけがなかったのだ。

美空ひばり「愛燦燦」軽やかに歌い上げた “生きることの哲学”


1986年、テレビから流れ始めた「味の素」の新しいCMが、筆者と美空ひばりとの距離をグンと縮めることになった。

そのCMは、ハワイで撮影されたというちょっとレトロで『大草原の小さな家』をイメージさせるサトウキビ農家の家族を描いた映像に、現役銀行員でありシンガーソングライターの小椋佳が美空ひばりに書いた「愛燦燦」が流れるというもの。

人生を振り返る歌詞の世界は普遍の愛を感じさせ、包容力に満ちた美空ひばりの声とスケール感がありながら優しいメロディーにすっかり惹きつけられてしまい、初めて美空ひばりのシングルレコードを購入した。

テレビでたまに見かける美空ひばりといえば、ケレン味たっぷりに作り上げた独特の世界が特徴。そこが長年のファンにはたまらないところだが、そのケレン味を苦手と思う人がいるのも事実だ。美空ひばりを遠い存在だと思っていた筆者も、後者であり、苦手な印象を抱いていた。

ところが、「愛燦燦」は美空ひばりに抱いていた印象を大きく変えるものだった。

歌詞の内容的には「川の流れのように」と同じく人生を振り返り “生きることの哲学” を謳ったものでありながら、「愛燦燦」はケレン味とは無縁の小椋佳らしい肩の力が抜けた軽やかさがある。

この2曲を聞き直して浮かんできたのが、竹内まりやが同じように “人生” をテーマに描いた2曲だ。

2001年リリースのアルバム『Bon Appetit!』収録の「毎日がスペシャル」と、2007年リリースの『Denim』収録の「人生の扉」。「川の流れのように」と同じく重厚感のある「人生の扉」と、「愛燦燦」のような軽やかさがある「毎日がスペシャル」。

この2曲なら「毎日がスペシャル」により惹きつけられる筆者が、「愛燦燦」を好きになったのは必然だったのかもしれない。

そんな「愛燦燦」だが、リリース当時、多少話題になったとはいえ決してヒットしたわけではない。しかし、じんわりと心に沁みてくる世界観は彼女の没後あらためて評価され、今では美空ひばりファンでなくとも耳にしたことがある曲のひとつとなっている。

80年代、美空ひばり未完の挑戦


根強いファンに支えられ芸能活動を続けていた美空ひばりだが、実は80年代には音楽的な挑戦に取り組んでいた。

1983年には来生たかおとコラボした「笑ってよムーンライト」、そして1985年にはイルカとコラボした「夢ひとり」をリリース。1980年代の美空ひばりは、大物歌手の座にとどまることなく、新たなファン層を開拓していこうという気持ちが強かったのだろう。

生前にリリースした最後のアルバム『川の流れのように~不死鳥パートⅡ』(1988年)は、作詞に秋元康、作曲に林哲治、後藤次利、中崎英也、高橋研と、当時のヒットチャートを賑わす楽曲のクリエイターたちと組んだ、新しい美空ひばりの世界を印象付ける作品だった。

あのとき、もし彼女の体調が快復していて、当初スタッフが推していた「ハハハ」をリードシングルとしてリリースして、歌番組にも積極的に出演して活動していたら、もっと若い世代のファンを増やしていたかもしれない。

ものすごく年上の遠い存在だと思っていた美空ひばりだが、実は享年52という若さだったのだ。まだいくらでも新しい世界に挑むことができたはずだったのに、いつの間にか彼女の年齢を追い越してしまったアラ還の筆者は感じる。

近年、氷川きよしが演歌のイメージを脱却して歌の世界を拡大しようと挑んでいる姿は、1980年代の美空ひばりの姿に重なってくる。美空ひばりは未完に終わってしまったその挑戦を、氷川きよしなら鮮やかに実現できるのではないか、と密かに期待しているところだ。

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