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高齢者雇用を定めた法の改正で延長される定年。60歳は もはや、人生の「再出発」を意味するようになりました。

アットエス

アラ還世代は懇親会が増えます。「還暦を迎えたから」が旧友に声を掛ける格好の理由になるから。「何か赤いものを身に付けて集まろう」が合言葉。定年の一区切りで来し方行く末を語り合い、家族の愚痴や“病気自慢”が飛び交う。コロナ禍を脱し、そんな集いがそこここで催されていることでしょう。

サラリーマンが何歳で定年になるかは変化しています。改正高年齢者雇用安定法は希望する人が原則65歳まで働くことができる環境の整備を義務化し、70歳までの就業確保を努力義務としました。

厚生労働省の就労条件総合調査(2022年)によりますと、定年の定めがある企業は94%。一律の年齢条件で対応する企業が大半で、60歳定年の企業は72%、65歳は21%でした。前回17年の調査では60歳定年が79%、65歳定年が16%だったので、定年の年齢は徐々に65歳へと移行している様子がうかがえます。

昭和生まれの世代は、終身雇用や年功序列の日本型雇用制度の中で先輩に教えを請いながら滅私奉公してきました。資料を抱え、顧客回りに靴底をすり減らし、カンと経験と度胸で営業活動に汗を流してきたのがアラ還世代のサラリーマン。居酒屋では皮肉を込めて「社畜の幸せ」を叫びます。転職で自身のキャリアをステップアップさせ、タイパ(タイムパフォーマンス=費用対効果のコストを所要時間のタイムに置き換えた和製英語)を重視する世代にはなかなか理解されない感性です。

「生涯現役」「人生100年時代」では、定年はもはや人生の再出発を意味することになります。定年で掛けられる「長年、お疲れさまでした」のねぎらいは、ますます「まだまだ頑張ってください」の激励や鼓舞に変わっていくことでしょう。

「定年は自分が決めること」

こうした雇用制度と一線を画するのが、自営業や定年のない士業(しぎょう)と呼ばれる皆さん。最近、声掛けをいただいた同世代が集う趣味の会で、士業や自営業者の意気軒高ぶりに圧倒されました。

士業は専門資格を生かして仕事をする人たちの通称で、職業名の最後に「士」が付くことに由来します。司法や会計、不動産、建築、土木、医療などの職種が知られています。個人事業主の事務所開設は苦労が多いと聞きますが、一線を退くか否かは自分で決断することになります。

懇親会の場で定年の話題になったとき、士業の一人は「還暦は通過点。人生の勝負はこれから」と満面の笑み。「港で俺の船が一番人気」と豪語した遊漁船の船長は、船頭を継ぐ息子の特訓と、趣味のゴルフのスコアアップが目下の懸案でした。定年や高齢者雇用とは全く異なる世界観に圧倒されました。

ところで、その懇親会で隣り合って腰かけた士業の一人、一級建築士のつぶやきにドキッとしました。それは「二重サッシ、三重サッシにご用心」とのアドバイスです。

住宅の窓は日光を取り入れ、換気を担います。大きな窓は開放的な住環境づくりに欠かせません。一方で、蓄えたい室内の暖気を逃がしたり、入ってきてほしくない熱気が室内に入り込んだりする弊害もあります。サッシのガラスを多重化すると断熱性が高まり、寒さや暑さの解消に役立ち、省エネが期待できます。結露が発生しにくく防音効果もあり、環境性能を高めることが期待できます。メリット満載ですが、「ところが」なのです。

「いいとこどり」にご用心

1級建築士によると、「二重サッシ、三重サッシは2階に設置するためにユニック車(クレーン付きトラック)がないと厳しい。とにかく重い」そうです。例えば、古い基準の耐震設計の住宅をリフォームするケースで2階に重量級のサッシを複数据え付け、同時にソーラーパネルを屋根に敷き詰めるような施工なら、念のために住宅全体の耐震診断を推奨するとのことでした。

また、気密性を極限まで高めた住宅を設計し、換気扇をフル稼働させたら室内の気圧が下がり、ドアを開けるのに難渋する現象が生じたそうです。士業ならではの専門的な話はとても興味深かったです。

リフォームやリノベーションは生活環境を向上させ、住まいを豊かにしてくれます。環境性能の高い住宅の整備には公的支援も用意されているそうです。多重サッシも太陽光パネルも、その重さが耐震性を損なうのはごく限られたケースで、設置に問題ない建物がほとんど。ただ、各種設備機器や設計に「いいとこ取り」で飛びつくと、思ったほどの満足感が得られないことがあるとの指摘には要注意。

一級建築士は、弊害があればクリアする対処方法はしっかりと用意されているので手間や費用を惜しまず、施工業者や専門家の話に耳を傾けることが安全安心につながると話していました。

震度7を観測した能登半島地震に続き、四国で最大震度6弱の地震が発生しました。南海トラフ巨大地震の震源域と重なり心配した静岡県民は多いと思います。気象庁は「巨大地震が発生する可能性が高まったとは言えない」との見解を示しましたが、皆で防災の意識を一層高めるようにしましょう。

一級建築士の話で震災への不安をあおる意図はありません。人生、何度も痛い目に遭ってきたアラ還は「あの時、ああしておけばよかった」を語ればきりがないのです。ご勘弁を

中島 忠男(なかじま・ただお)=SBSプロモーション常務
1962年焼津市生まれ。86年静岡新聞入社。社会部で司法や教育委員会を取材。共同通信社に出向し文部科学省、総務省を担当。清水支局長を務め政治部へ。川勝平太知事を初当選時から取材し、政治部長、ニュースセンター長、論説委員長を経て定年を迎え、2023年6月から現職。

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