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ロッテの“若手左腕”への期待 成瀬善久以来の“エース左腕”を目指せ

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千葉ロッテの小島和哉と中村稔弥ⒸSPAIA

規定投球回に到達した左投手は2人だけ

昨季、規定投球回に到達した投手はセ・リーグが9人でパ・リーグが6人。投手の分業制は年々進み、一昔前のように先発投手が完投するケースは減少傾向だ。左投手に限れば、規定投球回に到達したのは中日の大野雄大とDeNAの今永昇太のみで、パ・リーグはゼロ。完投能力を備えた左の先発投手は、球界全体で特に不足している。

先発左腕は元々稀少な存在。先発ローテーションに左腕が1枚でも2枚でも加われば戦い方のバリエーションが増す。どのチームにも言える喫緊の課題が先発左腕の台頭だ。

光るものを見せたロッテの若手左腕

先発左腕に着目した時、面白い存在がロッテ。2018年のドラフトで獲得した小島和哉(同年3位)と中村稔弥(同年5位)はルーキーイヤーの昨季、互いにプロの壁に当たりながらも随所で光るものを見せた。

小島はプロ初登板の西武戦では2回8失点を喫するほろ苦いデビューとなったものの、8月以降は防御率2.36と安定感抜群の投球で3勝(5敗)を挙げた。

中村は主にリリーフとして10試合に登板して1勝(1敗)3ホールドをマーク。対左打者の被打率が高いことは課題だが、落差が大きくシンカーの軌道に近い独特のツーシームは高い奪空振率(22.5%)を誇った。

プロ入り3年目の昨季、1軍では1勝(0敗)に終わったものの、2軍で9勝、防御率2.35の好成績を残した土肥星也も虎視眈々と先発ローテーションの座を狙う。昨オフに左肘のクリーニング手術を受けたが、3月20日に行われた楽天との2軍の練習試合では実戦に復帰した。

各投手ともに経験という点ではまだ足りないが、確固たる実績を誇り全幅の信頼を寄せられるような先発投手がロッテには不足しており、現状はどの投手にも先発ローテーション入りのチャンスがある。左腕であれば尚更だ。

エース左腕として君臨した成瀬善久

かつてロッテに在籍していた成瀬善久(現BCリーグ・栃木)は、エース左腕と呼ぶに相応しい活躍をした。特にプロ入り4年目の2007年は16勝(1敗)で6完投、4完封、防御率1.82、勝率.941という驚異的な成績を残し、「負けない左腕」とも称された。

当時チームの指揮を執っていたボビー・バレンタイン監督も、「状態さえよければ、必ず勝ち星が計算できる」と全幅の信頼を寄せ、レギュラーシーズンもクライマックスシリーズ(CS)も成瀬中心に先発ローテーションをまわした。

ソフトバンクと対戦した第1ステージでは1勝1敗で迎えた第3戦に先発。強力ソフトバンク打線をわずか5安打に抑える完封勝利を挙げ、チームを第2ステージに導いた。

日本ハムとの第2ステージでは2勝2敗で迎えた第5戦に先発。勝てば日本シリーズ進出が決まる大一番を任されたが、3回にフェルナンド・セギノールに先制の3点本塁打を打たれて主導権を握られると、反撃も及ばず2-6で敗れた。この敗北が、成瀬がパ・リーグのチーム相手に同シーズンに喫した初の黒星だった。

シーズン3位からの下克上日本一を決めた2010年も、13勝(11敗)を挙げるなどエースとして君臨。ソフトバンクと対戦したファイナルステージ第1戦では1失点の完投勝利、第6戦では4安打完封勝利。中日との日本シリーズでは第1戦と第6戦に先発し、第1戦で勝利投手となった。

2011年は6完投をマークするなど10勝(12敗)、2012年には12勝(11敗)を挙げるなど2009年から4年連続二桁勝利をマーク。2010年以降は勝率が低下したものの、2010年と2012年には200イニング以上投げるなど、先発ローテーションの柱として活躍した。

小島や中村、土肥ら若手左腕には、是非とも成瀬のようなエース左腕を目指してほしいし、互いに切磋琢磨することで先発左腕王国を築いてもらいたい。

左腕の台頭がイニシアチブを握る

1980年代、球界屈指の投手王国を形成した広島には、大野豊と川口和久という絶対的な先発左腕がいた。1990年代の中日は、今中慎二と山本昌の両エース左腕がチームを牽引。2000年代、ソフトバンクが常勝軍団の地位を着々と確立していく過程では、和田毅と杉内俊哉の両エース左腕がチームを牽引した。

近年で言えば、毎年のように大卒即戦力左腕をドラフトで獲得しているDeNAが左腕王国の礎を着々と築いている。石田健大、今永昇太、濱口遥大、東克樹らを擁し、昨季のドラフトでも大卒左腕の坂本裕哉を獲得した。

元西武の菊池雄星(現マリナーズ)以来、先発左腕の主な台頭が見られないパ・リーグにおいて、先発で計算のできる左腕を揃えていくことはイニシアチブを握ることにつながるはずだ。

昨季、小島はなかなか1軍での勝ち星に恵まれなかったが、8月に日本ハム戦で待望のプロ初勝利を挙げると、以降に登板した5試合では毎試合5~7イニングを投げて3失点以内に抑える安定した投球を見せ、先発としての資質を感じさせてくれた。

先発またはロングリリーフとしての起用が示唆されている中村は、得意のツーシームでの奪空振が22.5%。同じくツーシームを得意としているDeNA・山﨑康晃の同球種の奪空振率が15.1%であることを考えると圧巻の数値だ。直球の威力を磨くことで、よりツーシームが生きるだろう。

キレ味抜群のチェンジアップ(奪空振率は24.5%)をウイニングショットとする土肥は、昨季唯一の白星を挙げた西武戦で中村剛也と森友哉から同球種で空振り三振を奪うなど、1軍の強打者相手にも通用することを証明した。チーム事情からかこれまで1軍での登板数が少ないが、大いに化ける可能性を秘めている。

今のロッテの先発陣は、左腕不足はもとよりエースも不在。経験と実績に多少の違いはあれどほとんど横一線の状態だ。小島、中村、土肥をはじめとした左腕には、先発ローテーションの座を勝ち取ることで満足するのではなく、かつての成瀬のように全幅の信頼を受け、勝負所で任されるようなエースの座を目指してほしい。

2020年プロ野球・千葉ロッテマリーンズ記事まとめ

記事:浜田哲男

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