七福神ってどんな集まり?御利益や特徴を出身国別で紹介! 大黒天・弁財天・毘沙門天【インド出身の神様編】
縁起物として人気の「七福神」。絵画や置物としてよく見かけたり、飲食店の名前にもなっていたりして身近ですよね。しかし、7人(本当は7柱と数えます)の神様がいること以外、詳しく知らないという方もいるのでは?実は、日本だけでなくインドや中国の神様もたくさん混ざっているんです! というわけで、七福神の神様それぞれを「出身国別」で詳しくご紹介します。今回は、インド出身の3人から!
にこやかだけど実は怖い?暗黒の神様「大黒天」
現代の日本では商売繁盛や縁結びなどの御利益がある、福の神として知られている「大黒天」。俵に乗って、打ち出の小槌と大きな袋を持った2頭身の姿と、満面の笑みが愛らしくもあります。
ですが、笑顔の裏になんだかブラックなものを感じませんか? 藤子不二雄Aさんの『笑ゥせぇるすまん』に出てくる、喪黒福造のような恐ろしさ。その実感、間違いではありません。
この大黒天、元はインドのヒンドゥー教の神様で「マハーカーラ(大いなる暗黒)」という破壊を司る存在なのです。しかしなぜ、恐ろしい神様が日本では福の神になったのでしょう。
実は、マハーカーラは「戦闘神・軍神・財福神」という3つの性格を持っていたのですが、インドから広く伝わっていくうちに、中国では財福神としての性格が強調されるようになって、日本に入ってきたのです。
日本ではさらに、出雲大社に祀られる有名な神様「大国主命(おおくにぬしのみこと)」と大黒天は一体であるとされました。一説によるとそれは、「黒」と「国」の音読みが「こく」と同じであることからだと考えられています。
※藤子不二雄Aの「A」は、正しくは○の中にA
7人の中で唯一の女性神、芸能と金運に御利益ありの「弁財天」
琵琶を持った、女性の姿で表されるのは「弁財天」。ヒンドゥー教の「サラスヴァティー」という水の神様が元になっています。
日本に伝わってからは日本古来の「宇賀神」という蛇の姿をした神様と習合していきました。そして合体し「宇賀弁天」として祀られる例も。
宇賀弁天は、琵琶を持っておらず、手が8本もあり頭上に鳥居を立て、その奥にとぐろを巻いた蛇が乗っています。しかも、その蛇の頭は老爺の顔という個性的な姿で、筆者の大好きな像の一つです。
弁財天は日本では金運アップの神様としても知られていますが、それは、こんこんと湧き出る水と、財福が湧き出るイメージが重ねられたことが一因と思われます。ほかにも、金運や豊穣を象徴する宇賀神と習合した影響も大きいと考えられることも。
また、芸事の神様としても知られ、新宿の「花園神社」内に祀られる弁財天には、数多くの有名人もお参りに来ています。
七福神きっての武闘派!鎧を着た戦いの神様「毘沙門天」
縁起物として人気の七福神は、温和で福々しいイメージが強いですが、その中で唯一、戦う姿をしているのが「毘沙門天」。インド神話の「ヴァイシュラヴァナ」が元となっていますが、この時代には武神としての性格はありませんでした。
仏教に飲み込まれる中で、東西南北のうち北を守る大将に変化していったのです。その変化のおかげで戦国武将からは注目され、上杉謙信に至っては自らを毘沙門天だと語ったほど。現在では、さまざまな勝負事に御利益があるとして人気を集めています。
ちなみに、東西南北を守るのは、毘沙門天の他に「持国天(東)」「広目天(西)」「増長天(南)」で、この4人が「四天王」です。なお、毘沙門天は四天王としてグループに入っている場合は「多聞天」と名前を変えます。ソロとグループで名前を変えるなんて、ソロで俳優として活動するときは「瀧正則」の名義になることもある、電気グルーヴのピエール瀧さんみたいですね!
七福神としてのグループで持っていた、福徳満載なイメージから、徐々にそれぞれの神様のイメージが具体的に見えてきたのではないでしょうか。次回は、中国で生まれた七福神の神様をご紹介します。お楽しみに!
写真・文=Mr.tsubaking
Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。