小千谷市にある学生や社会人が集う場。「テレワークステーションおぢや」。
小千谷市の本町商店街の中にある「テレワークステーションおぢや」は、コワーキングスペースや会議室を備えた施設です。こちらでマネージャーを務める谷口さんは小千谷市の出身。県外のさまざまな企業で働いた後「株式会社あわえ」に所属し、2年前に企業連携型地域おこし協力隊としてUターンしてきました。現在は「テレワークステーションおぢや」を拠点にセミナーやイベントを積極的に企画し、小千谷の地域活性に奮闘しています。施設のことや、谷口さんの日々の活動についてお話を聞いてきました。
株式会社あわえ
谷口 諒 Ryo Taniguchi
1992年小千谷市生まれ。広告制作会社、Web・アプリ制作会社、コワーキングスペースの運営などを経験。企業連携型地域おこし協力隊として「株式会社あわえ」に所属し、2022年に小千谷市へUターン、。「テレワークステーションおぢや」のコミュニティマネージャーとして施設の運営をメインに、商店街や高校生向けのIT人材育成に関わるイベント企画などを行う。休日の楽しみは銭湯巡りやカフェ巡り。
協力隊として、東京から小千谷にUターン。
——この「テレワークステーションおぢや」はどういう経緯で立ち上げられた場所なんですか?
谷口さん:ここは小千谷市の施設なんです。テレワーク交付金を使った事業で、立ち上げにあたって運営する母体を探していたみたいで。それで「株式会社あわえ」に問い合わせがあって、今はうちの会社もここに事務所を構えています。
——オープンしたのはいつなんですか?
谷口さん:オープンは2022年7月です。僕はオープンの1週間後に入社したので、立ち上げまでは「あわえ」の東京オフィスのメンバーが市とやりとりをしていて、それ以降は僕がメインになってやってきました。
——谷口さんは地域おこし協力隊として小千谷市に来られているんですよね。
谷口さん:そうです。協力隊として「あわえ」に所属していて、この場所の運営をしながらイベントを企画していくという役割ですね。
——以前はどんなお仕事をされていたんですか?
谷口さん:新卒で広告制作会社に入って、その後はWeb系の仕事を長くしていました。あとはコワーキングの運営とか場づくりとか、地域に関わるような仕事をして、仕事以外でもまち歩きのイベントをやったりしました。コロナ禍を経て、場作りとかイベントを仕掛けるようなことを本業としてやっていきたいなと思うようになったんです。
——地域に関わるお仕事に興味を持つようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
谷口さん:高校生まで小千谷に住んでいたんですけど、進路を決めるときに「とりあえず外へ出てみたい」っていう気持ちがあって、東京の大学に進学したんです。環境が変わると、地元にあるものを周りと比較していろいろ見られるようになって、自分の地元を見つめ直すタイミングになりましたね。そういうところから「地元で何かしたいな」っていうのは学生の頃からうっすら考えていました。
——地元から一度離れることで見えるようになることってありますよね。
谷口さん:それから、学生時代にいろんな地域に足を運ぶ機会があったんです。課題を抱えている地域で、自治体の方とか、いわゆる「プレイヤー」と呼ばれるような方たちが活動する様子を見て、すごくかっこいいなと思って。それに小千谷にも同じような課題があることに気づいて、同じように取り組めることがあるんじゃないかって、その頃からずっと考えていました。
——小千谷に戻ってきたことは、学生の頃から考えていたことを行動に移すいい機会になったわけですね。
谷口さん:ここの業務が、場所の運営だったり商店街の活性化だったりっていう、自分が「いつか地元でやりたいな」って思っていたことを、そのままやれるんじゃないかなっていう内容だったんです。30歳の節目のタイミングだったこともあって、小千谷に戻ることを決めました。
定期的に開かれる、セミナーやイベント。
——ここの利用者はどういう人が多いですか? やっぱり学生さんとか?
谷口さん:日中は社会人の方が利用して、夕方になると学生の方が多くなります。利用料が1日500円なんですけど、高校生以下は無料なんです。なのでテスト期間は勉強しに来る高校生が多いですね。あとは商店街にバス停があるので、そのバスに乗る学生の子たちがバス待ちに使っています。
——へ〜、学生にはありがたい場所ですね。
谷口さん:そうですね。僕が学生のときに欲しかったなっていうくらい(笑)
——ここでセミナーも開催されていると聞きました。
谷口さん:2階が多目的ルームになっていて、そこを会場に市民の方向けのセミナーをいろいろ開いています。例えば、企業の方に講師を務めてもらい「ドローン体験セミナー」を開催したり、都内で働く小千谷出身のデザイナーさんに「デザイン講座」をやってもらったりしています。
——いろんな分野の専門の方から話を聞けて楽しそうですね。
谷口さん:あとはVRコンテンツとかアプリ製作に強い会社さんから、高校生向けにデバイスの体験ができるイベントをやってもらったり、DXを支援している企業さんから、市内の企業さん向けに製造業のDXについてお話ししてもらったりもしました。「IT人材育成」「企業のDX化」がこの場所のテーマとしてあるので、そういう内容のセミナーが多いですね。
——「Holiday Popup Shop」という、商店街にいろんなお店を集めたイベントも定期的に企画されていますよね。どんなきっかけではじめることに?
谷口さん:この施設がオープンしたとき、最初はなかなか認知が広がらなかったんです。ここ、前は子育て支援施設だったので、その印象を持っている人が多くて。まずはここへ来てもらうことが重要だなって思っていました。
——なるほど。
谷口さん:あと、僕がUターンしてきたときに、ここの向かいに図書館を含む複合施設が新しくできるっていうことが決まっていたんです。でも今の商店街の雰囲気だと「点」だけが盛り上がってしまう。中心地が「面」で賑やかにならないと難しいよなっていう課題感があって。そこで「Holiday Popup Shop」という企画を新しく立ち上げました。
——商店街全体を活気づけようと考えた企画なんですね。
谷口さん:お店の軒先とか空き店舗を使って、商店街のいくつかの会場を周遊するようなかたちにすれば、アーケードを親子連れが歩くような風景が作れるんじゃないかと考えました。半年に1回のペースで開催していて、今月の開催で4回目です。21店舗に参加していただいて、徐々に回遊できるような見え方になってきたかなと思います。
戻ってきてから気づけた、地元の面白さ。
——学生の頃と今とでは、地元の見え方がぜんぜん違うと思います。Uターンしてきて思うことはありますか?
谷口さん:小千谷の外にいるときって、地元の情報がぜんぜん入ってこなくて。アルビとか、十日町の「大地の芸術祭」とか、そういう話は聞きますけど、市町村名で「この地域面白いね」って、新潟の、特に小千谷の話を聞くことがなかったんですね。そういう情報を知る機会が少ないっていうのもあって。そんな中で小千谷に戻ってやっていけるのか、けっこう不安だったんです。
——久しぶりに戻る地元がどんなふうになっているのか、イメージできなかったわけですね。
谷口さん:でも実際に来てみたら、学生のときには接点がなかったような方たちと交流が生まれて、企画したイベントに出店してもらったり、チラシやポスターを置いてもらったり、関係性ができていって。「面白いことをやろうとしている人たちがいるんだな」って気づけたのは良かったなと思います。
——地域の中に入ったからこそ気づけたことですね。
谷口さん:片や自分が戻ってきてからも、外に情報を出せていないのがもったいないなと思っていて。地元を面白がれるような地域になっているってことを外に出せると、一度小千谷から離れた人も「地元で何かやってみようかな」っていう気持ちにもなるかもしれないですよね。
——谷口さん個人として、これからの目標はありますか?
谷口さん:個人的な目標は考え中です。協力隊の任期が3年なのであと1年ちょっとなんですけど、その先どうしようかなって考えているところです。
——これからも小千谷とは関わり続けるつもりで?
谷口さん:ここでいろいろやらせてもらっている以上、「じゃあ」って外には出られないですね(笑)。そこは自分のミッションとして、小千谷と継続して関わっていくつもりです。ただ、小千谷市外でやってみたいこともあって。市外で活動することで小千谷に還元できることも出てくるでしょうし、バランスを考えてやっていこうと思っています。
テレワークステーションおぢや
小千谷市本町1-11-1
0258-86-4731