名手が教えるカワハギ攻略。入門者がまず覚えるべき「ゼロテンション釣法」
ホバリングしながらついばむようにエサを食べるカワハギはアタリがとても繊細でエサを取るのも上手。指先、手のひら、穂先に感覚を集中させてわずかな反応をとらえるのが楽しい釣りだ。そんなカワハギのアタリをしっかりと感じ取るためのコツと、初心者に最適なシンプルな釣り方をエキスパートの高槻慧さんが教えてくれた。
解説◎高槻 慧
マルチに沖釣りを楽しむエキスパート。カワハギ釣りにおいても、最新のタックルと理論を駆使して数・型ともに釣果を叩き出す実力派アングラー。
そう簡単には掛からない!悶絶のカワハギ釣り
船カワハギ釣りは一年中楽しめる釣りだが、冬季のカワハギは栄養をキモ(肝臓)に溜め込むという特徴があり、そのキモが非常に美味。醤油に溶いて刺身をにつけて食べると他では味わえない濃厚な冬の味覚を楽しめる。肥大化したキモを持つ、いわゆる「キモパン」と呼ばれるカワハギを釣ることができるのが晩秋からのシーズンだ。
「カワハギはその美味しさも人気の理由の一つですが、釣趣もとても魅力的です。口先が器用でついばむようにエサを食べるため、アタリがあってもエサだけが取られてしまう場合も多いです。合わせるのが難しい魚ですが、コツさえつかめばカワハギ特有のゴンゴン!という引きを楽しむことができます。船釣りのターゲットとしては珍しく、釣った尾数を競うトーナメントが開催されているほどテクニカルな釣りです」
こう語るのは高槻慧さん。カワハギは海底付近でホバリングしながら仕掛けの動きに追従し、おちょぼ口でエサをついばむ。また、咥えたアサリの中に硬いもの(ハリ)を感じるとすぐに吐き出してしまうらしい。明確なアタリが出にくいうえに掛けにくい。そんな反応に悶絶しながら仕掛けや誘い方を工夫するのが楽しい釣りだ。
マルチに沖釣りを楽しむ高槻慧さんはカワハギ釣りもエキスパート
今回は神奈川県横浜市の平潟湾の老舗船宿である一之瀬丸から出船。メインとなったのは東京湾のカワハギ釣り場として有名な竹岡沖だ。
「例年10~翌1月末までカワハギ乗合が人気です。特に11月半ば以降は美味しいカワハギの最盛期で、入門にはもってこいです。冬の海上は寒いのでしっかりと防寒してきてくださいね」
こう語るのは船長を務めた西村幸治さん。常にお客さんを気遣ってくれる優しい船長だ
お世話になった西村幸治船長
船カワハギ釣りのタックルと仕掛け
今回高槻さんが使用したサオは「極鋭カワハギ EX AGS MC」。一般的なカワハギ用サオに比べて穂先がしなやかで、小さなアタリも目感度で掛けにいくことができる調子だ。初めてのサオには掛けやすさと感度のバランスがよいMHパワーのカワハギ専用サオを選ぶとよいらしい。
柔軟な穂先が小さなアタリを増幅する
PEライン1号を巻いた小型ベイトリールを組み合わせる。カワハギ用の仕掛けは全長が短いため、根ズレに弱いPE ラインを保護するためにもリーダーは必須。14ポンドのフロロカーボンを1mほど接続しよう。
仕掛けには集寄も有効
仕掛けは市販の完成仕掛けと25~30号のオモリを用意した。カワハギは口周りが硬く、ハリ先が鈍りやすいため、替えバリは多めに持って行く。食いが渋った時は反射板やシリコン素材のスカートなど、集寄が活躍する。
用意した仕掛け。オモリは「快適船シンカーS K」の25 ~ 30号(船宿の指定した号数)、仕掛けは「快適カワハギ 幹糸仕掛けⅡ」、替えバリは「D-MAXカワハギ パワースピード」(いずれもダイワ)
カワハギ用ハリは2タイプある
カワハギ用のハリは主に2種類。吸わせにくいが吐かれにくい「ハゲバリ」と、吸わせやすいが吐かれやすい「吸わせ系(セイゴバリなど)」だ。入門者にはオートマチックに掛かることが多い後者がオススメ。
左がハゲバリ、右がセイゴバリタイプ。入門者には後者がオススメだ
入門者にもおすすめのシンプルな「ゼロテンションの釣り」
「カワハギ釣りには多彩な誘い方があり、活性や底のようすに合わせて使い分けます。入門者にオススメなのは、アタリが分かりやすくカワハギにエサを吸い込ませやすいゼロテンションの釣りです」
と高槻さん。ゼロテンションとは仕掛けを張らず、緩めずの状態でキープすること。具体的な誘い方の手順は以下のとおりだ。
【ゼロテンション釣法の4ステップ】
①リールのクラッチを切って仕掛けを投入。着底したらイトフケを巻き取る。②海底を5回連続して小突く。きらめいたオモリでカワハギを寄せるイメージ。③ピタリと仕掛けを止め、張らず緩めずの状態で2~3秒キープ。サオを水平に保ち、アタリを待つ。④アタリがあればサオを斜め45度まで持ち上げる(聞きアワセ)。ゴンゴンと引きがあれば一定の速度で巻き上げる。
穂先が曲がり切らず、戻りきらない状態を保つことでゼロテンションをキープできる。船の上下の揺れに合わせて腕を上下させ、穂先の曲がりぐあいを一定に保つことが重要だという。
「カワハギは好奇心が旺盛な魚です。小突きの動作できらめいたオモリに集まり、ステイのタイミングでエサを口に含むというイメージで誘ってみましょう。アタリはリールの上に添えている手にチクッとした金属的な感触があった後に穂先が不自然に動くことが多いです。活性が高い状態であれば金属的なアタリで合わせてもよいですが、まずは穂先にアタリが出るまでじっと待ってみてください」
サオを水平に保つのが基本の構え。リールの上に手を添えるとわずかなアタリも感知しやすい
アタリがあったら聞くイメージでサオを45度くらい起こす
ゴンゴンと引き込まれたら口切れしないようにゆっくりと一定の速度で巻き上げる
船の揺れを体の動きで相殺するイメージでゼロテンションを保とう
エサ取り(ゲスト)への対処法
カワハギが多く棲息しているのは砂地。トラギスやベラなども同じようなエリアに棲息しているため、ゲストが多いのもこの釣りの特徴だ。
「モゾモゾッとしたアタリはカワハギのものである可能性が高いですが、慣れるまではゲストのアタリとの見分けが難しいと思います。はじめのうちはアタリがあったら積極的に合わせてみるとよいでしょう」
ゲストの活性が高く、すぐにエサを取られてしまう場合は以下の対処法を試してみよう。
誘いの後に底から10~20cmオモリを持ち上げてアタリを待つ一度仕掛けを大きく持ち上げてから別の位置に入れ直すオモリを底から浮かせた状態で誘い、アタリも宙で取る
また、カワハギはアサリのキモが大好物。エサがほぐれてキモが取れてしまうと本命のアタリが出にくくなる。定期的に仕掛けを回収し、エサを確認するとよいそうだ。
根回りは重点的に探る
竹岡沖は砂地にツブ根が点在するエリア。特にカワハギが群れやすいのは根の周辺だと高槻さんはいう。
「仕掛けを動かしていると、オモリの着底時にカツンとした感触があるタイミングがあると思います。見つけたら重点的に探ってみてください」
最後の流しが始まった直後、高槻さんのサオが弧を描いた。ゴンゴンとサオを絞りながら上がってきたのは今日イチの良型。キモパンの23cmクラスだった。
「カワハギの引きは特徴的です。掛けた直後はゴンゴンと引き込みますが、中層あたりからは抵抗しなくなります。ゲストか本命か、ドキドキしながら巻き上げてくるのもこの釣りの魅力の一つだと思います」
リリースとアフターケア
高槻さんは合計で32尾のカワハギを釣りあげ、食べる分のみキープして残りはリリース。深場から釣りあげた場合は水圧の変化によって腹が膨らんで自力で潜れなくなる場合があるため、エア抜きを行なう。
エア抜きは専用のニードルを使って行なう。腹の下部に刺して空気を抜いてやると元気な状態でリリースすることができる
初心者には難易度の高いイメージがあるカワハギ釣りだが、ゼロテンション釣法はシンプルだ。マスターして、繊細なアタリとキモパンの美味カワハギを堪能してみてはいかがだろうか。
※このページは『つり人2024年1月号』を情報更新・再編集したものです。