「恋」「愛」「性」にまつわる3部作「オスロ、3つの愛の風景」日本公開記念《心に残る名作トリロジー3選》
北欧映画の知られざる才能を特集上映で
第75回ベルリン国際映画祭にて、ノルウェー映画で初めて最高賞<金熊賞>を受賞したダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の『DREAMS』が、トリロジーとして制作された『LOVE』『SEX』と共に、特集上映「オスロ、3つの愛の風景」として一挙上陸。9月5日(金)よりBunkamura ル・シネマ渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開となる。
爆選!<心に残る名作トリロジー>
映画の公開本数が増え選択肢があふれるいま、「まずは1本だけ観たい」「短くても心に残る作品がいい」――そんな声も少なくない。しかし、たった1本では描ききれないものがあるのも事実だ。
たとえば、「愛」。出会いと別れ、信頼と裏切り、欲望と赦し、他者との距離感――。その複雑さを真正面から見つめ、誠実に語るために“3つの物語”を必要とした作品たちがある。
ということで今回は、愛という言葉だけでは収まりきらない、感情の陰影をすくいとった<3つのトリロジー作品>をご紹介。1作だけではたどりつけない、“奥行き”に触れる映画体験を楽しんでみては?
ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督 特集上映「オスロ、3つの愛の風景」
北欧映画界の知られざる名手、ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の長編作が日本初上陸!
『LOVE』(2024年)
『SEX』(2024年)
『DREAMS』(2024年)
女性教師に恋をした17歳の少女の赤裸々な初恋手記をめぐる『DREAMS』、2人の医療従事者が様々な愛の形を模索する『LOVE』、妻子がいる男性がとある体験から”らしさ”を再考する『SEX』の3作が、特集上映「オスロ、3つの愛の風景」として今秋公開される。
手がけたのは、『DREAMS』で今年の第75 回ベルリン国際映画祭にてノルウェー映画初となる金熊賞受賞という快挙を成し遂げ、世界的な映画監督の仲間入りを果たしたダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督。このトリロジーは僅か1年間で制作され、3作ともベルリン、ヴェネチアで高い評価を得て世界中の映画祭で上映された。
ようやく世界に“発見”された北欧の新星が紡ぐ、愛や親密さ、セクシュアリティにまつわるスリリングでユニークな会話劇は、映画ファン必見だ。
『DREAMS』『LOVE』『SEX』~特集上映「オスロ、3つの愛の風景」~は3作ともに9月5日(金)よりBunkamura ル・シネマ渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。
『DREAMS』(上映時間:110分)
女性教師のヨハンナに初めての恋をした17歳のヨハンネは、この恋焦がれる想いや高揚を忘れないようにと自らの体験を手記にする。そしてこの気持ちを誰かに共有するため、詩人の祖母に手記を見せたことから、物語は思いもよらない展開へと進み始める。
2025年、第75回ベルリン国際映画祭にてノルウェー映画初となる金熊賞を受賞。同映画祭審査員長のトッド・ヘインズ(『キャロル』)は、本作について「鋭い知性で観る者の心を深くえぐる」とたたえ、「叙情的、そしてほんのり挑発的なユーモア。観る者をやさしく、そしてどこか夢見心地に包み込む作品」(The New Yorker)、「秘密主義と吐露したい気持ちで大きく揺れ動く10 代の恋心を見事に表現」(Variety)など、有名誌からも絶賛の声が寄せられた。
『LOVE』(上映時間:120分)
泌尿器科に勤める女性医師のマリアンヌと男性看護師のトール。共に独身でありステレオタイプな恋愛を避けている。マリアンヌはある時トールから、マッチングアプリから始まるカジュアルな恋愛の親密性を教えられる。興味を持ったマリアンヌは、自らの恋愛の方法の可能性を探る。一方トールは、フェリーで出会った男性を偶然勤務先の病院で見かけ――。
第81回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作。海外レビューでは「軽やかでセクシー、どこか哲学的――そして意外にもラディカル。カジュアルな関係も真実の愛も、同じ温度で見つめる優しく繊細な愛の物語」(Variety)と言われるほど、すべての愛を肯定する優しい1作。
『SEX』(上映時間:118分)
煙突掃除を営む妻子持ちの2人の男。ひとりは男性との衝動的なセックスを通じて新しい刺激を覚えるが、悪びれることなく妻にこの話をしたことで夫婦間がこじれる。もうひとりはデヴィッド・ボウイに女として意識される夢を見て、自分の人格が他人の視線によってどう形成されていているのか気になり始める。良き父、良き夫として過ごしてきた2人は、この奇妙な出来事をきっかけに自らの“男らしさ”を見つめ直すようになる。
2024年、第74回ベルリン国際映画祭にてエキュメニカル賞を含む3部門を受賞。「“らしさ”にうんざりしたあなたへの解毒剤」(The Hollywood Reporter)、「当たり前の規範の破壊と再構築が繰り返される」(Cineuropa)と評された、我々の固定概念や価値観を問いただす異色作だ。
リチャード・リンクレイター監督『ビフォア』3部作
時間とともに変わりゆく男女の関係を9 年ごとに描いた恋愛映画の金字塔!
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』(1995年)
『ビフォア・サンセット』(2004年)
『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)
列車のなかで出会ったアメリカ人のジェシーと、フランス人のセリーヌ。ウィーンの街を歩きながら“夜明け”までの時間を過ごし、再会を約束して別れた『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』。
それから9年後、ジェシーはウィーンでの一夜を小説に綴り、作家として訪れたパリの書店でセリーヌと再会する。ふたりが過ごした“夕暮れ”までのわずかな時間を描く『ビフォア・サンセット』。
そしてさらに9年後。『ビフォア・ミッドナイト』では美しいギリシャの海辺の街を舞台に、“真夜中”まで飾らぬ思いを語り合う――。
それぞれにパートナーがいながらもお互いへの感情に気づいてしまったふたりは、あの後、どんな人生を歩いているのか? “恋愛哲学映画”とも称される本トリロジーは、とりとめのない会話のなかに、豊かな人生を送るための示唆に満ちた言葉が巧みに織り込まれている。さらに、実際に歳を重ねる俳優たちと長い年月をかけて共に歩んだ撮影スタイルが、物語に深い真実味を与えている。
等身大の男女をリアルに体現したのは、イーサン・ホークとジュリー・デルピー。その自然な会話と息の合った掛け合いで魅せる本シリーズは、洗練された会話劇として高く評価され、多くの観客の心をとらえてきた。現在『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』と『ビフォア・サンセット』がU-NEXT、Prime Videoなど各動画配信サイトで配信中。
クシシュトフ・キェシロフスキ監督 「トリコロール」3部作
フランス国旗の3色をモチーフに、人間の深層心理を巧みに描き出した傑作人間ドラマ
『トリコロール/青の愛』(1993年)
『トリコロール/白の愛』(1994年)
『トリコロール/赤の愛』(1994年)
フランス国旗の三色――青・白・赤が象徴する「自由」「平等」「博愛」をテーマに、三つの愛のかたちを描いたキェシロフスキ監督による珠玉の人間ドラマ3部作。
突然の事故で家族を失った女性が、過去と向き合いながら再生の道を模索する『青の愛』。
離婚を機に祖国ポーランドに戻った男が、かつての妻への復讐を胸に秘めながらのし上がっていくコメディタッチの『白の愛』。そして、他者を受け入れることの意味を問いかける、若き女性と孤独な老夫の交流を描いた『赤の愛』。
一見異なる3作の物語はやがて静かに交差し、人と人とのつながりの不思議さと、人生の不可思議さを深く掘り下げていく。繊細な映像美と詩的な語り口で、90 年代ヨーロッパ映画を代表する不朽のトリロジーだ。
現在、3作品ともPrime Videoなど動画配信サイトで配信中。https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00HV7CLB6/ref=atv_dp_share_cu_r