【島田・そば玄】そばに“焼き”を入れる? 江戸時代から続く製法のそばを食べたい!
静岡・島田市に江戸時代からの製法を守るそば店「そば玄」があります。つゆに“焼き”を入れるというのですが、いったいどういう意味なのでしょうか。 味の違いを調べてきました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ旧東海道・島田宿にあるそば店「そば玄」
島田市に江戸時代からの製法を守るお店があるとのことで、にむらあつとリポーターが早速調査に向かいました。
場所は島田市の旧東海道・川越街道沿い。島田市博物館の東側です。江戸時代の宿場町の雰囲気が残る街並みの中に、ウワサのお店はあります。
にむらあつとリポーター:
雰囲気があって、のどかな街並みです
大きなヤナギの木が目印。伝統的な日本家屋のお店「そば玄」です。
早速中に入ると、落ち着いた雰囲気の店内で、ご主人の長谷川安孝さんと雅子さんが迎えてくれました。
江戸時代から続く製法とは一体何でしょうか。
聞いてみると「一つだけあります」と長谷川さん。
それは、長谷川さんが修行時代に師匠から習ったという伝統の製法。
人気のランチセット「そば玄ランチ(1480円)」でその味が楽しめるということで、早速注文しました。
そば玄・長谷川安孝さん:
これから寒くなってくるので、温かいおそばです
手打ちそば、すし、ふろふきダイコン、天ぷら、ナスとタマゴ焼きの煮びたし。運ばれてきた豪華な料理の数に驚きです。
どれも伝統がありそうに見えますが、ウワサの製法が使われているのはこの中のひとつ。まずは手打ちそばのつゆから確認です。
にむらリポーター:
カツオの味がしっかりして、甘味のあるつゆです。そばは香り高くておいしいです
そば玄・長谷川安孝さん:
北海道の幌加内(ほろかない)産のそば粉を使っています。行ったことはないですけど
ちょっと正直な長谷川さんに親しみを感じつつ、そばに舌鼓。
お次はサーモンのすし。脂がのっていて、酢飯の加減も絶妙でした。
元はすし職人として腕をふるっていたという長谷川さん自慢のすしです。
さてセットの中で、すし、天ぷら、そばは江戸時代に完成されたものだと言いますが、特別な製法を受け継いでいるのは、すしでも天ぷらでもありません。
正解はそば。
そばに使うしょうゆの「かえし」に江戸時代の製法が使われているというのです。
江戸時代から受け継ぐ特別な「かえし」
しょうゆをベースにみりんや砂糖を加えて作るのが「かえし」です。
そばつゆの味の決め手ともなる、この「かえし」にひと手間加えるのが、江戸時代に始まった独特な製法なんです。
それは「焼き」と呼ばれるそうです。
そば玄・長谷川安孝さん:
今は鉄を焼いて「焼き」を入れるなんて作業は、ほとんど誰もやっていないと思います
火で熱し赤くなるまで高温にした鉄を「かえし」に直接入れて、鉄分を加えるのが「焼き」の作業。実際に見せてもらいました。
鉄製のナタの刃をコンロの火に直接かけて熱します。
高温になったナタを直接鍋のつゆに入れます。つゆはぶくぶくと沸騰しています。
「焼き」はかえしをまろやかにする製法として、江戸時代に開発されたのだそう。
繰り返し使っているナタは溶けて、ボロボロになっています。
長谷川さんによると、一度さびた鉄はおもしろい味が出るそう。一番いいのは「使い古したクワ」だと言います。
「焼き」によって入る鉄の力
「焼き」を行う前と後では、実際にどのくらい味が変わるのでしょうか? 味を比べてみました。
まずは「焼き」を入れていないものからです。
にむらリポーター:
だいぶ塩味の強いおしょうゆです。甘みがあります
次は「焼き」後の「かえし」です。
にむらリポーター:
全体的な味わいにあまり変化は感じませんが、まとまった感じがあります
色味や香りにそれほど違いがないことを伝えると、「そのぐらいのもんですよ」と、またまた正直なコメントをする長谷川さん。
そば玄・長谷川さん:
はっきり言って、そんな味はめちゃくちゃ変わりません。ただ香ばしさは出るんです
長谷川さんによると、現代のしょうゆは完成度が高いので、「焼き」は行われていないそうです。
そば玄・長谷川さん:
ごちゃごちゃ余分なことをしなくても、おしょうゆ自体がおいしいですからね
ちなみに妻の雅子さんは「正直違いがわからないんですが、なんとなくまろやか」と感じているそうです。
現代のしょうゆなら「焼き」を入れなくても、十分おいしいのですが、それでもあえて「焼き」の製法を続ける理由を聞いてみました。
そば玄・長谷川さん:
自分だけの技であり、そして鉄の力ですよね。鉄はこんなにも料理に使えるんだと可能性を感じていますね
長谷川さんはこの製法をずっと続けていくと言います。
鉄によってまろやかになった、そばつゆの味とは? みなさんも確かめに訪れてみてください。
■店名 そば玄
■住所 静岡県島田市河原2-14-5
■営業時間 平日11:00〜(LO)13:30
      土日祝11:00〜(LO)14:30
■定休 月、第3火
■問合せ 0547-34-3332