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『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女~』は観客体験型の作品 鮮やかなコンビプレーで勝村政信と向井理が公演の魅力を語る

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(左から)向井理、勝村政信

ゴシック・ホラー小説の傑作『ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>』の舞台版は、ロンドンで1987年に誕生し、以来、世界40余国で上演を続け愛されてきた。

演技派のシニア俳優と気鋭の俳優が組んだ2人芝居で、PARCO劇場では1992年に初演、8演目となる今回は、舞台経験豊富の勝村政信と近年舞台出演にも意欲的な向井理がコンビを組む。
中年の弁護士キップス(勝村)がかつて体験した身も凍るような恐怖体験を、若い俳優(向井)に演じもらうことによって、葬り去ろうという試みははたして成功するのか。そして弁護士が体験した恐怖とはいったいどんなものなのか。尽きぬ緊張感で最後まで目が離せない。俳優の芝居や音響効果というアナログな表現がゾクリとさせる。
舞台では初共演となる向井と勝村だが、映像での共演経験はあり、取材の場はすでにリラックスした雰囲気が漂っていた。

サッカーが好きという共通点をもつ勝村と向井。たったふたりで演じきる2時間強の芝居で鮮やかなコンビプレーを決めてくれそうだ。

ーーではまず脚本を読まれた印象と作品の魅力についてお話ください。

向井理(以下 向井):容易にオチがバレないようにうまく書かれていますね。最初から不穏な空気は漂っていますが、なかなか核心が見えてこなくて。どういうふうにオチがくるのかわからないまま台本を読み進め、最後までいったところですごくゾッとしました。僕ら俳優がどれだけお客さんをこの世界観にひっぱり込めるかで、面白みが変わってくるのかなあと思うので、やる側としては大変だなと思っています。

勝村政信(以下 勝村):ほんとによくできた作品です。何度も再演を繰り返していて、基本的な演出が盤石なので、演じる僕らも含めて、観客の皆様は演出家の魔法にかかってしまうでしょう。安心して物語に身を委ね、こわがってくださいという感じです。

ーーおふたりはこの作品を観客として見たことはありますか。

向井:ないです。

勝村:ないです。

ーー観客の目にはどういうふうに映ると思いますか。

勝村:話の面白さはもちろん、僕らがひとりで何役もやったりすることもおもしろさだと思います。なんといってもお客さんの想像力が試される作品です。向井さんが演じる俳優が、僕が演じる弁護士キップスの体験を演じることで、キップスの恐怖体験が紐解かれるのですが、そのとき、お客さんも想像力を思いきり使って、キップスたちと一緒に体験するような構成を楽しんでいるうちにだんだんだんだん怖くなっていく。それがこの作品の一番の魅力ではないでしょうか。

勝村政信

向井:僕も台本を読んだだけで実際は体験していないからわからないのですが、台本を読んだうえでは観客体験型の作品になると思いました。たとえば、客席での芝居もありますし、弁護士と俳優の会話のなかには「この劇場で」というセリフがあって、ふたりは劇場のなかで話している設定になっています。劇場に座っている観客の方々は、僕らからは見えてない設定ではありますが、お客さんも劇の舞台である劇場にいると思うことも可能で、観客でもあり出演者でもあるという構造になっている。だからこそ余計に没入体験が楽しめると思うんです。

ーーそれぞれの役どころについて教えてください。

向井:僕は俳優を生業としている人物で、キップスに頼まれてキップスを演じることになります。冒頭では、わかりやすく演技を教える側の俳優と教わる側のキップスの会話があって、そこから考えると、俳優はキップスより年下だけれど演技を教える側であるし、生意気だったりプライドが高かったりする面があるのかなと。いやな人ではないけれど、ちょっといらっとするようなキャラなのかなといまのところは思っています。ただ、キップスを演じるときは、誠実な面が出ると思いますし、キップスを演じたり、キップスにツッコんだり、いろいろな面が見える人になりそうなので、こういう人と決めてやらないようにしようと思っています。

勝村:僕が演じるキップスは、過去にほんとうにおそろしい思いをして、傷ついていまだにトラウマで、夜に悪夢を見てうなされていて。それをなんとか払拭する方法はないものかと自分なりに考えて、同じ体験を再現することで葬りたいと願っている人です。とにかく向井さん演じる俳優にすがるような思いで頼っているという感じですね。

ーー勝村さんは9年前の公演にも出演していますが、そのときはいかがでしたか。

勝村:9年前は岡田将生さんと僕でやりました。演出家のロビン・ハーフォードさんは、いろいろな俳優と何パターンもやってきているから、いまのふたりがやったことがキップスと俳優になりますよと、おっしゃっていました。とてもジェントルマンで、やさしいかたで、笑顔を絶やさないかたでした。決め事はありますが、それ以外は自由にやってくださいと。だから今回も、向井さんと僕の俳優とキップスになると思います。僕は前回の経験から自分のなかにたぶん残っているものもあるので、それにも近くはなっていくと思うのですが、向井さんとの共演で新たに何かが生まれることもあるでしょう。それこそがいま、ここでしかできないもので、それが一緒に舞台をやる楽しみだと思います。

ーー9年前、お客様の反応はどうでしたか。

勝村:当時は、せっかく僕がやらせていただくので、少し笑いを多めにしようかなと思ってやったんですよ。ロビン・ハーフォードさんは、自分からたくさん演出するかたではなくて、稽古場で起こることを楽しんでいましたから、いつのまにかそうなっていったと記憶しています。こわいこわいと言いながらも、おもしろいところもあるという、振り幅の大きさを楽しんでいただけたのではないかと思います。今回もそれは踏襲する予定です。

ーーそもそも、向井さんがこのお仕事を引き受けた要因はなんだったのでしょうか。

向井:やっぱり勝村さんと芝居ができることですね。

向井理

勝村:嘘だ(笑)。

向井:この作品のオファーを受けたときは、勝村さんとはお仕事したことが1回くらいしかなかったのですが、以後、ここ最近、立て続けに共演することが増えて。それも何かの縁だなあと思っています。あとは、おりにつけて舞台をやらないといけないと思っているので、舞台作品のなかでもいままでやったことのない二人芝居はハードルが高く、やりがいがありそうだと思いました。やるからにはたやすくできたとか楽しかったなというものではなく、挑戦しがいのあるものをやりたいですから。

ーー向井さんが参加すると聞いたとき、勝村さんはどう思いましたか。

勝村:びっくりしましたね。向井さんと舞台が僕のなかであまり結びついていなくて意外だったんです。ところが、この間、お話しをしたら、意外と舞台出演も多かったことを知って、僕は勘違いをしていたのだなって(笑)。

向井:最初はテレ朝のドラマ『リーガルV〜元弁護士・小鳥遊翔子〜』(18年)ですよね。

勝村:米倉涼子さん主演の弁護士ドラマですね。

向井:その前に勝村さんに誘われてサッカーをやったのが最初の出会いでした。

ーーサッカーを通して感じたお互いの資質を教えてください。

勝村:僕は若いときから、芝居とサッカーは似ているという説を唱えてきたんですよ。向井さんのなにに驚いたかというと、彼はセンターバック(キーパーの前)なんですよ。イケイケで点取り屋かと思ったら、センターバックをやっていた。ビルドアップ(パスのつなぎ方)のしかたとかもうまい。だいたい、後ろのポジションはまわりが見えているから、芝居もうまい人が多いというのが自論です。トップはだめなんですよ。

勝村政信

向井:(笑)。いますけどね。まわりを気にしないでガンガンいく俳優は意外とフォワード経験者であることが多いですよね。

ーー勝村さんのポジションは?

勝村:僕は若い頃、ウイングポジションでした。年をとってから、トップ下やボランチみたいなことをしはじめて、いろいろ反省しましたね、若いときにもっといろいろな体験していたほうがよかったなって。芝居も同じですね。

向井:勝村さんはお芝居で吸収したものをサッカーに生かしている気がしますよ(笑)。

勝村:俳優としての向井さんはドラマで共演したときはNGを出さないところがすごいと思った。

向井:いや、勝村さんだって。この前、ある俳優が、数日前にもらった長ゼリフが完璧に入っていて畏怖を覚えたと言っていましたよ。

勝村:それは若い頃、泣きながらセリフを覚えた経験によるものでしょうね(笑)。

ーー向井さんが演じる俳優が演じるキップスは、勝村さんを意識することになるのでしょうか。

向井:まだ決めていないんです。いまは決めずに、1ヶ月の稽古のなかで時間をかけたときに出てくるものを待ちたい。稽古で勝村さんの芝居を拝見したら、見えてくるものは自ずとあるでしょうから。まずは、日々、弁護士として仕事をしていくというキップスを演じることだけを考えて、あまり作為的に演じようとは思ってないです。

向井理

ーー最後に、公演をご覧になろうと思っている方々にメッセージをお願いします。

勝村:向井さんとこれほど密に共演するのははじめてで、しかも舞台となると、自分でもどうなるか想像できませんが、ふたりの作り上げる雰囲気みたいなものが楽しみだし、それをお客さんが楽しんでくださったらいいなと思っています。

向井:正直、いまの段階では膨大なセリフ量を前にして、引き受けたことを後悔していますけれど(笑)。稽古を経て、セリフが馴染んできて、自然にできるようになればとても楽しめる作品になると思います。たぶん勝村さんもそうだし、僕もそうで、楽しませたいという気持ちが強めなんですよね。だから、お客さんを驚かせることも笑わせることも、すべてエンタメの要素であり、成立させるためのアイデアがいろいろ出てくるんじゃないかなと思っていて。お客さんはそれに身を委ねて、席に座っていてもらえば、いままで見たことのない世界を体感していただけるのではないかと思います。

勝村:……いま、向井さんの後ろの鏡に黒い服を着た人が映っているんだけど?

向井:あれは僕のマネージャーですね。

勝村:驚きと笑いって、こういうことなんですよ(笑)。

取材・文=木俣 冬

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