新世代オルタナ濃度MAXのエモ・ダーク・バイオレンス『ザ・クロウ』 復活した伝説的カルト映画の注目ポイント
いまだ根強いファンの多い伝説的カルト映画の正統リブート作『ザ・クロウ』が3月6日(金)より全国公開中。30年の時を経て蘇った本作は、2020年代のトレンドを踏まえたエモ・バイオレンス&ロマンスに仕上がっている。
難題に挑んだ『ザ・クロウ』の軌跡
人気コミックを原作に1994年に映画化された『クロウ/飛翔伝説』は、主演ブランドン・リーが撮影中に事故死するという悲劇に見舞われた作品としても知られている(※代役を務めたのはチャド・スタエルスキ)。1982年に『トワイライトゾーン/超次元の体験』の撮影中に起こったヘリコプター墜落と並び、“ハリウッド史上最悪の撮影事故”として語り継がれてきた。
ブランドンが演じたクロウは妖しく、そして汚らしくて美しい、唯一無二の存在感だった。『ダークナイト』(2008年)でジョーカーを怪演したヒース・レジャーが参考にしたというのも納得の、映画史に残るキャラクターだ。当初はルーク・エヴァンスが演じるという噂やジェイソン・モモアの関与などの情報もあったが、最終的に白羽の矢が立ったのがビル・スカルスガルドだった。
ビルは、かつて怪優ティム・カリーが『IT/イット』(1990年)で演じた道化師ペニーワイズを、リメイク版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)で違和感なく現代に蘇らせた。出世作『シンプル・シモン』(2010年)のナイーブな青年役や、プライベートでのスラッとした無敵イケメンぶりからは想像できないモンスター役は、北欧スカルスガルド家の四男坊であるビルの評価を一気に高めることとなった。
『カウボーイ・ビバップ』もオマージュした悪役はどうなった?
映像面で言えば、『シン・シティ』(2005年)に引き継がれ強化されたノワール・コミック的なビジュアルが失われたことは残念ながら、低温かつ湿度高めのダークな世界観や、ダニー・ヒューストン演じる悪役ヴィンセントのキャラ設定などは『コンスタンティン』(2005年)を彷彿させる部分もあり、好きな人には刺さりまくるだろう。エリックとシェリーが入所するリハビリ施設のユニフォームの色ひとつ取ってもスタイリッシュで、とにかく目に楽しい。
94年版のボス敵だったトップ・ダラーは手段を選ばない地上げ王的な犯罪者だったが、ぐっとファンタジーに寄せた“闇の存在”への改変は賛否が分かれるところだろう。だが本作は、巨大な社会格差を生んだ“現実世界の悪”は、もはや従来のモチーフでは釣り合わないと判断したのかもしれない。トップ・ダラーの構成要素はエリック自身に引き継がれ、ヴィンセントには某エプスタインや某ワインスタインを彷彿させる部分もある。なお、94年版でアーニー・ハドソンが演じたアルブレヒト巡査部長の眼差しは、複数のキャラクターに分散されたように感じられる。
――伝説的な名作カルト映画を、どう蘇らせるべきか? ブランドン・リーというカリスマは永遠に失われてしまった。ただでさえ制作が難航し、内から外から否定的な声も聞こえてくるなか完成した本作には、たしかに苦慮した痕跡が端々に見受けられる。
だが、そうしたノイズを遮断して観てみれば、単なるリベンジアクションではないゴツゴツとした暴力性を叩きつけ、かつ内省的なトーンも含んだエモみたっぷりのバイオレンス・アクションとして楽しめるはずだ。あの『カウボーイ・ビバップ』がオマージュした94年版のラストバトルがどう描かれるかについても、ぜひ本編を観て確かめてほしい。
『ザ・クロウ』は3月6日(金)より全国公開中