鵠南小新校舎棟が完成 屋上に津波避難スペース
施設の老朽化に伴い、建て替え工事が行われていた鵠南小学校(秦野知己校長・児童数596人)の新校舎棟が7月末に完成した。防災機能の充実を図り、津波発生時には屋上が避難スペースとなる。児童と教職員は9月2日、新しい学び舎で2学期をスタートさせた。
「おはようございます」。2学期初日の登校時間。秦野校長をはじめ、教諭たちが昇降口で子どもたちを出迎えた。校舎内を見回して「すごくきれい」「廊下の色がかっこいい」などと歓声をあげる児童ら。教室へ向かう足取りも弾んだ。
校内放送で「2学期を始める会」があり、各クラスで児童が話に耳を傾けた。秦野校長は「たくさんの人の力を借りてこの校舎が建ちました。感謝の気持ちで毎日を過ごし、来年の新入生やこれから先の鵠南小学校の子たちへきれいな校舎をつないでいってくれることを願います」と話し、「『ありがとう』があちこちから聞こえてくる温かな学校生活を作りましょう。掃除の時間を大事にして、気持ちよい風が吹く学校をみんなで作っていきましょう」と呼びかけた。
5千人超収容
同校付近は津波の浸水深が最大で3〜4mと想定され、津波避難対策が求められていた。新校舎棟と2022年春からすでに供用が開始されていた複合施設の体育館・保育園棟は津波発生時に避難場所となる。4階と屋上に約5300人が避難できるという。新校舎には防災備蓄倉庫や、外から屋上に直接上がれる避難階段も設置された。
市では、学校再整備事業を20年9月から実施。建て替えにあわせ、第1期工事として体育館とともに近隣にあった浜見保育園と放課後児童クラブを一体的に整備し、22年2月、地上4階建て・高さ約15mの複合施設が敷地西側に完成した。プレハブの仮設校舎も建てられた。同年9月からの第2期工事で引地川に面する北側の旧校舎を解体した後、同じ場所に4階建ての新校舎を建設した。
新しい校舎は「海のそばの森の分校」をコンセプトに整備。教室の床や表示板に木を多用しているのが特徴だ。各階には廊下との仕切りがない多目的ホールがある。
新しい校舎について4年生の子どもたちは「廊下や階段がとても広くて気持ちがいい」「オープンな感じがする学校なので、友だちとたくさん話ができそう」「教室から江の島の景色が一番よく見えると思う」などと感想を口にした。
新型コロナウイルス感染症が拡大した年に整備工事が始まり、5年目。この間、児童らはコロナ禍で行動制限を余儀なくされたほか、新校舎へ移るまでの2年間をプレハブの仮設校舎で過ごした。工事期間中はグラウンドがせまくなっているため、屋外での活動を工夫する必要もあった。
「さまざまな制限がある中で小学校生活の大半を過ごし、卒業していった子どもたちもいる。児童と教職員が新しい校舎の使い方を一緒に考え、この建物に負けない素敵な時間を築いていきたい」と秦野校長は話す。
現在、仮設校舎を解体中。今後はグラウンド整備などの第3期工事を進め、来年3月までに全ての整備が完了する予定。