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山麓に現れたリゾート風スリランカカレー店《福岡県篠栗町》

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ひすずキーマ

福岡市内を中心に多様なジャンルにわたる飲食店を展開する「わらび野グループ」をご存じだろうか。店名を挙げると「知ってる!知ってる!」となる人が多いと思う。
「池田商店」「池田屋」「池三郎」「池ぽん」「春馬屋海物山物」「かつえ」「旧かつえ」「茶房わらび野」「蕎麦文治郎」「豚ステーキ十一」「山水水出珈琲」「山水水出珈琲焙煎所」「キヨノ」「肉豆腐しげ子」などがそうだ。
福岡の名物料理にもなっている炊き餃子をはじめ、居酒屋、豚ステーキ、カフェ、蕎麦、そして牛丼と肉豆腐など、そのジャンルの広さに驚かされる。元々は平成元年に福岡市博多区博多駅南に開業した「海物」(かいぶつ)という居酒屋一軒からのスタートだったというから不思議な店舗展開だ。そして出す店出す店人気を博しているからなおさら興味深いのだ。
その「わらび野グループ」が昨年の7月、糟屋郡篠栗町にある若杉山のふもとにスリランカカレーの店「ひすず」をオープンした。もう少し若杉山を登ると「茶房わらび野」と「蕎麦文治郎」があるあの道沿いだ。

こちらの店を管理しているのはマネージャーの作原達巳さん(40歳)。新店舗の企画や立ち上げを担当しており「わらび野グループ」のベテランスタッフ。今回は作原マネージャーにインタビューさせてもらった。

なぜ、今度はスリランカレー店なのか。
「以前『わらび野グループ』で働いていたスリランカ人のアサンカさんという人がいたんですが、彼が作るカレーが美味しくて、スタッフの多くがスリランカを近く感じるようになったんです。アサンカさんは今はスリランカに帰国してしまいもう彼の作るカレーは食べられないんですが、スタッフから『またあのスリランカカレーが食べたい』という話が盛り上がり、じゃあスリランカカレーの店を出すか!と話が進んでいったんですよ」
そして「ひすず」のカレーは、アサンカさんの指導の元で日本人向けにアレンジされ完成。スパイスはアサンカさんがスリランカから送ってくれるフレッシュなものを使ってるそうだ。ちなみに、「ひすず」という店名だが、『ひ=日本』と『すず=錫蘭(スリランカ)』を合わせた造語らしい。なるほど、両国の友好の意味があるのだ。

そして「ひすず」では日本人スタッフとともにスリランカ人スタッフが4人働いている。作原マネージャーは、スリランカ人の調理スタッフに肉の焼き方や日本料理の技術を教えている。スリランカ人スタッフとのコミュニケーションには少し苦労もあるが、その辺も日本とスリランカの友好を深めるということで前向きに捉えているそうだ。

メニューは、スリランカカレーのみ。ココナッツベースのスパイス20種類以上を使ったサラサラスープ状のスリランカカレー。これに薪で焼いた肉との組み合わせが中心。肉を薪で焼くことが日本を表現しており、それをスリランカカレーに合わせることで両国合作の意味を込めてるらしい。

もう一つ面白いのは、ここの建物のこと。木造の骨組みに全面ガラス張りの壁で組み立てられた明るくリゾート気分満載のオシャレな建物。この建物は、数年前まで博多区博多駅南にあった同じグループ店「海物山物」の建物を解体して、そのままこちらに移築したものだ。僕も「海物山物」には数度行ったことがあるが、あの建物が十数キロ離れた山の中腹に再現されてるのを見た時はびっくりした。あのまんまなのだ。その辺のやり方というか「わらび野グループ」の発想力と実行力には感心されられる。

居酒屋一軒からスタートし数々の人気店を作り出してきた「わらび野グループ」だが、その後は居酒屋ではなく専門店化させた店舗展開をしてきている。特に「池田商店」などで炊き餃子のブランド化に成功したのは有名な話である。さらに最近はカフェや定食屋にも力を入れて展開してきて今度はカレー店である。
その方針転換には最近の飲食店利用者の行動変容にも要因がある。若い世代に酒を飲まない人が増えたり、COVID-19の影響もあると思うが夜の営業形態での集客が難しい状況が続いているのは周知の事実。この状況はしばらく続くと思われる。その対応として専門店化と昼にも楽しんでもらえる店舗の展開はこれからの重要なテーマだと考えているそうだ。

ちょっと話が肩苦しくなったので、最後は「ひすず」の店の話に戻そう。
「ひすず」では、店内だけでなくガーデンスタイルで料理を楽しんでもらえるように外にも20席用意されている。ガーデンの一部にはカレーに合わせる肉を薪で焼くための焼き場の小屋がある。これが駐車場からガーデンを通って店内へ行く途中で見えるようになっており、肉を焼いている風景もエンターテインメントとして楽しめるように前面がガラス張りに設計されている。
「季節や天気によっては、ガーデン内のテーブルを利用してビアガーデンなどが出来る様になれば楽しいと思うんですよね」と作原マネージャー。

料理良し、ロケーション良し、施設良し。そして、日本とスリランカの友好というテーマも良し。篠栗町の自然の中でいただくカレーはさらに美味しく感じること間違いなし。
福岡市内からはちょっと離れているけど、この距離感がドライブコースに最適だし、ちょっとした記念日やカップルデートにも持ってこいだ。

その楽しさ美味しさをじっくり味わってもらいたい。そんなオススメの「ひすず」である。

《ひすず》
福岡県糟屋郡篠栗町若杉814
092-948-5770

※掲載しているメニューや価格は取材時のものです。感染再拡大防止対策期間により時短営業や休業してることがありますので、訪問する際にはお店のSNSや電話等でご確認ください。

上野万太郎
ここ10年間、カレー店と珈琲店やカフェを中心に年間外食はのべ1100軒以上。本業の傍ら、外食写真日記的なブログ「万太郎.net」で福岡を中心とした飲食店の人々やお客さんと関わったエピソードを発信。著書は「福岡カフェ散歩」(書肆侃侃房/2012年)、「福岡のまいにちカレー」(書肆侃侃房/2014年)。
インスタID:mantaro_club

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