気軽に立ち寄って自由に料理やお酒が楽しめる、古町の「La Cadenza」。
古町7番町の裏通りに「La Cadenza(ラ・カデンツァ)」というお店がオープンしました。入り口は小さくて目立ちませんが、白と木目を基調とした店内はゆったり広々としています。そんな店内で、オーナーシェフの髙島さんからオープンのいきさつやお店のこだわりについてお話を聞いてきました。
La Cadenza
髙島 庸平 Yohei Takashima
1979年愛知県生まれ。9歳からエレクトーンをはじめ、作曲の仕事を目指す。横浜にある音楽系の専門学校を卒業し、バンド活動やレコーディングスタジオでの仕事を経て、イタリア料理の道へ。2013年に新潟へ移住し、イタリアンレストラン、スーパー、ファミリーレストラン、定食屋で経験を積み、2024年に「La Cadenza」をオープンする。
音楽家を諦め、イタリアンの料理人へ転向。
——店名の「La Cadenza」っていう言葉にはどんな意味があるんでしょうか?
髙島さん:音楽用語で「自由に即興的な演奏や歌唱をすること」を意味しています。大切な人と自由に楽しく過ごしていただける店にしたいという思いと、基本を大切にしつつも自由な発想で作った料理でおもてなししていきたいという思いを込めました。
——音楽の言葉を使ったのは、何か理由があるのですか。
髙島さん:実は料理をやる前に、作曲の仕事を目指していたことがあったんです。エンニオ・モリコーネや久石譲のように、映画音楽やドラマの音楽を作りたいと思っていました。
——そうだったんですね。いつ頃から音楽を?
髙島さん:小学校の同級生がエレクトーンを弾く姿に憧れて、僕も9歳からエレクトーンを習いはじめました。音楽系専門学校への進学の前からはピアノを弾くようになりました。
——だから店内に立派なピアノがあるんですね。
髙島さん:気が向いたらときどき演奏しています。記念日にコース料理をご注文いただいたときは、デザートの前にお祝いの曲を弾かせていただいたりもしているんです。
——店主自ら演奏してくれるっていうのは贅沢ですね(笑)。専門学校を卒業してからは作曲の仕事に就いたんですか?
髙島さん:いきなり作曲の仕事に就けるわけではないので、まずは実績を作って世の中に認めてもらおうと思ったんです。そこで専門学校で知り合った仲間たちとバンド活動をはじめたんですが、それは数年で解散して、それからはレコーディングスタジオを手伝うようになりました。
——音楽から料理に方向転換したのは?
髙島さん:スタジオを手伝いはじめてから、改めて音楽の仕事で生活していくのは難しいと感じたんです。そこで音楽を仕事にすることは諦めて、料理の道に進もうと考えました。実家でやっていた定食屋の手伝いなんかもしていたので、料理にも興味があったんですよ。
イタリアンの修業をしたくて新潟へ移住。
——どうしてイタリアンを選んだんですか?
髙島さん:小学生のときに連れて行ってもらったイタリアンレストランがお洒落でかっこよかったので、もし自分が飲食店をやるんだったらイタリアンの店をやりたいと決めていました(笑)
——そんなに前から決めていたんですね(笑)。料理の道を選んでからは、どんなお店で腕を磨いたんでしょうか?
髙島さん:当時アルバイトしていたイタリアンダイニングで事情を話したら正社員に採用してくれて、店長として店を任せてもらえるまでになったんです。でも料理の仕事をしているうちに、もっと本格的にイタリアンの勉強をしたいと思うようになりました。
——なるほど。
髙島さん:本当は本場のイタリアに渡って修業したかったんですけど、それはなかなか難しかったので、せめてイタリアで修業した経験のあるシェフの元で修業したいと思っていました。ちょうどその頃、妻の実家がある新潟のイタリアンレストランでスタッフを募集していたので、移住することに決めたんです。
——そのお店で修業するために新潟へ移住したんですか?
髙島さん:子どもが生まれたばかりだったので、妻の実家が近いと何かと便利だったということもありました(笑)。そのイタリアンレストランには見習いというかたちで入れていただいたので、収入面ではキツかったんですけど、その分勉強になりましたね。
——どんなことを学んだんでしょう?
髙島さん:言葉で教わるというより、仕事は見て覚えました。覚えた仕事は家に帰ってから実際に試してみるんです。それでもわからないことは質問して教わりました。イタリアの地方ごとの特徴や、どのように素材の美味しさを引き出すのかを学びましたね。
——そのお店でいろいろ学んだ後に独立したんですね。
髙島さん:でも見習いとして修業していたので、お店をオープンするための貯金がまったくなかったんですよ。そこで、開店資金を貯めるために大きめの企業で働くことにして、魚を扱う勉強をしたかったのでスーパーの鮮魚部で働いたり、ファミリーレストランや定食屋でオペレーションについて学びました。3年間だけ働こうと思っていたんですけど、コロナ禍がはじまったので、結局6年働いたんです。
友達の家みたいに気軽なイタリアンレストランを目指す。
——古町にお店をオープンしたのは?
髙島さん:お酒と料理を楽しんでいただける店にしたかったので、新潟駅前か古町でオープンしたいと思っていました。でもなかなか条件に合う物件が見つからずに苦労したんですよ。この物件も想定していたより広かったんですが、立地が良かったので思い切ってここでオープンすることに決めました。
——内装はどんなイメージにこだわったんでしょう?
髙島さん:「誰もが入りやすい明るい雰囲気」というイメージだけお伝えして、あとは内装工事をしてくれた業者さんにお任せしました。一般住宅を得意にしていた業者さんだったので、白や木目を使ったリビングっぽい内装に仕上がりました。お客様からも「家のなかみたいで落ち着く」と好評で、お店のコンセプトにもぴったり合っていると思っています。
——それって、どんなコンセプトなんでしょうか?
髙島さん:仕事帰りに友達の家へ立ち寄って料理やお酒を味わうような、気軽にイタリアンが楽しめるお店にしたかったんです。毎日でも来てもらえるように、料金をリーズナブルに抑える努力をしています。
——それってけっこう大変なんじゃないですか?
髙島さん:高級な食材を使わなくても、手間をかけることで美味しい料理は作れると思っているので、できるだけ一から手作りするようにしているんです。あとお客様をお待たせしないようにする工夫も心がけています。
——例えば具体的にはどんな工夫でしょうか?
髙島さん:ピザ生地はあらかじめ伸ばして裏面を焼いておいて、オーダーをいただいてから仕上げをすることで味を落とさず効率化することができます。あとオーブン料理を多めにしていることで、オーブン調理中に他の作業を進めることができるんです。これらは今まで働いてきたお店で身につけた知識です(笑)
——オペレーションを工夫することで効率化を図っているんですね。
髙島さん:だからといって決して手を抜いているわけではなく、むしろ丁寧な仕事をするように心がけています。イタリアの野菜料理「カポナータ」では野菜の大きさを揃えてカットするようにすることで、味わいのバランスが変わってくるんですよ。
——細かいところにも気を配っているんですね。ところで、これからはどんなお店にしていきたいですか?
髙島さん:この場所で長く営業を続けて、地元の老舗イタリアンレストランになるのが目標ですね。そのためにも、近所の方がふらっと立ち寄れる気軽な店でありたいです。
La Candenza
新潟市中央区古町通7番町1004-2 K・Iビル 2F
025-311-7354
11:30-14:00(13:30L.O)/18:00-24:00(23:00L.O)
日曜休