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【80年代アニメソング総選挙】ゴダイゴ、杏里、TM NETWORK で完成した “J-POPアニソン”

Re:minder

1987年04月08日 TM NETWORK のシングル「Get Wild」発売日

結果発表【80年代アニメソング総選挙】リレー総括 vol.7

2020年代のアニソンは、明日を夢見るミュージシャンの登竜門である


つい先月(2024年3月)放送が終わった『葬送のフリーレン』。めちゃくちゃ面白いアニメだったよね。物語が面白いのはもちろんだけど、それにも増して楽曲が素晴らしかった。オープニングテーマを担当したのは、今や人気絶頂グループのYOASOBIとヨルシカ。「勇者」も「晴る」も、アニメソング(以下アニソン)としてはもちろん、J-POPとしてメロディも歌詞も最高だった。

前年(2023年)に放送されていた『推しの子』の主題歌「アイドル」もそうだけど、どの曲も歌詞のなかに物語の強さと切なさが巧みに表現されている。もちろん、原作をしっかり把握した上でのソングライティングだから当然なんだけど、やっぱり感心してしまう。

ちなみに、星野源やBUMP OF CHIKEN、Ado、Official髭男dismが担った『SPY×FAMILY』とか、LiSA『鬼滅の刃』、Eve『呪術廻戦』のオープニングやエンディングなどの楽曲も物語と歌詞との親和性が高い。日本の最先端を突っ走るミュージシャンが作るアニソンは、どの曲も個性に溢れていて楽曲の完成度が高いのだ。2020年代におけるアニメ主題歌の提供は間違いなく一流ミュージシャンの証であり、アニメ番組のタイアップは、明日を夢見るミュージシャンたちの登竜門と言っていいだろう。

そこで思い出して欲しい。1970年代のアニメソングは、当たり前だが子供向けの音楽として作られていた。果たしてそれは、いつ、どこで、どんな風にJ-POP的な “アニソン” へと変わっていったのか? 今回は、その重要なカギを握る楽曲をピックアップしながら、ターニングポイントを探ってゆく。

ちなみに検証した結果だが、驚くことに、先月発表された『80年代アニメソング総選挙!ザ☆ベスト100』の上位ランキングと、ターニングポイントとなった曲が符合していた。数字は噓をつかない。みんなの好きな曲には、実は流れを変える “仕掛け” があったのだ。ということで、アニソンの歴史を紐解きながら核心に迫っていこう。

安価なソノシートによる功罪? アニメ主題歌の価値観が認められない歯痒さ


1970年代のアニメ主題歌は、ポップスとは一線を画した子ども向けの楽曲が主流だった。僕は、『デビルマン』や『海のトリトン』などを、主題歌が録音された “ソノシート”(朝日ソノラマ ソノシート)で聴いていたものだ。色付きの透明でペラペラなソノシートは子ども向け雑誌の付録として広く流通していたから、50代以上の人なら知っているよね。

ただ、ソノシートという安価な素材の商品が大量に市場へ出回った影響もあって、当時のアニメ主題歌は、ちゃんとした録音物であっても格下の商品として扱われていた。そう、その当時はアニメ主題歌とポップスとの垣根が高く、同じ音楽でありながら無情にも隔たれていたのだ。主題歌である楽曲自体も、番組タイトルや主人公の名前を連呼する歌詞スタイルが主流だった。

アニソンのJ-POP化の始まりはゴダイゴ「銀河鉄道999」である


それまで続いていた “アニメ主題歌の価値観の低さ” に一石を投じたのは『銀河鉄道999』劇場版(1979年)だろう。

テレビ版は、ささきいさお・杉並児童合唱団で子ども向けとしての色が強いのだが、劇場版はゴダイゴの演奏による「銀河鉄道999(The Galaxy Express)」である。歌詞のサビが英語であり、曲調もロック色が強めという完全なニューミュージックだ。作曲したタケカワユキヒデの “僕らにしかできないポップソングを作ろう” という強い思いが込められたメロディを、ミッキー吉野が蒸気機関車が力強く走るようなアップテンポにアレンジしたことでこの名曲が完成した。今から45年も前のこの楽曲こそが、アニソンというジャンルを確立する第一歩であり、その礎だといえよう。

アニメは子どもだけのものではないという常識を覆した「ラムのラブソング」


ただ、1980年代に突入してからもテレビ放送のアニメ主題歌は、職業作家が曲を作り、水木一郎や堀江美都子など職業歌手が歌う一連の流れのなかにあった。けれど、1981年〜1982年頃から “アニメは低年齢層の子どもが観るもの” という常識に変化が訪れる。その風向きを変えた作品のひとつが『うる星やつら』(1981年)だ。ヒロインであるラムちゃんのビキニ姿は鮮烈であり、間違っても低年齢層向けじゃないアニメなのは確かである。

今回の総選挙で11位にランキングされた『うる星やつら』の主題歌「ラムのラブソング」は、編曲にシンセサイザーを多用してキラキラ感を演出したことにより、かつての子ども向けの雰囲気を一掃した。なにせ演奏は高中正義のバックバンドだ。歌詞はコミカルな感じだが “ラム” とか “うる星やつら” などのワードが一切使われていないことも当時のアニメ主題歌としては画期的だった。

『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野由悠季もまた、格下に甘んじていたアニメ主題歌に異を唱えたひとりである。テレビ版『機動戦士ガンダム』のオープニングテーマでは叶わなかったものの、“井荻麟” というペンネームを使い自らエンディングテーマの作詞を手掛けている。とにかく当代一流のポップスに勝てるような楽曲を作りたいという高い志を持つ人たちが、こぞって時代に風穴を開けようと動き出していたのだ。

アニメは大人も観るものという風潮を決定的にした想い出がいっぱい」と「CAT'S EYE」


職業作家や職業歌手がアニメ主題歌を担当する流れに歯止めをかけたのは、9位にランキングされた『みゆき』(1983年)のオープニングテーマ「想い出がいっぱい」と、4位にランキングされた『CAT'S EYE』(1983年)のオープニングテーマ「CAT'S EYE」であろう。「想い出がいっぱい」は、作詞:阿木燿子、作曲:鈴木キサブロー、「CAT'S EYE」は、作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎という座組である。

「想い出がいっぱい」は、中高生が憧れる青春がいっぱい詰まった歌詞をH2Oのふたりが美しいハーモニーで表現している。「CAT'S EYE」に関しては番組タイトルを連呼すれど、タイトルそのものがポップなので違和感がない。なによりも、メロディを紡いだ小田裕一郎のセンスが抜群であり、完全にシティポップとして曲が完成されているのだ。

テレビ局側の意向でシティポップを歌う大人の歌手、杏里に白羽の矢が立ったのは、扱うアニメ番組に青年層の視聴者を取り込めると判断したからだ。どちらのアニメも “お色気” を随所に入れてくるが、『まいっちんぐマチコ先生』に代表されるパンツ丸みえシーンとは明らかに違い、身体の艶めかしいラインやセクシーさが加味された演出である。そう、このときすでにアニメ番組は10代に限らずもっと大人の層にまで広がっていたのだ。この頃を境に、アニメ主題歌とポップスの垣根を取り払う楽曲がぽつぽつと出現してくる。

アニソンにおける89秒の制約とは何か?



ここでひとつ。アニソンには ”89秒の制約” があるのをご存じだろうか? 30分のアニメ番組の内訳はこうである。

オープニング曲90秒 → CM150秒 → 本編前半11分 → CM150秒 → 本編後半11分 → エンディング曲90秒

オープニング曲とエンディング曲の90秒において、その始まりと終わりに0.5秒ずつ無音部分が必要になるため、89秒が楽曲に使われるタイムとなる。これがアニソンにおける89秒ルールだ。もちろん、厳密にこの決まり通りの曲を作るのは至難の業なので、編集マンが完成した曲を切り貼りして時間を合わせるのだが、自分の曲を切り貼りされるのを嫌うミュージシャンはおよそ指定の秒数通りに楽曲を仕上げるという。まさに職人芸である。

とにかく、サビのメロディのほかにも聴く人のフックになるキメやアクションが重要であり、これを踏まえつつ楽曲として完成させる器用さが作曲者に求められるのだ。“タイアップは、一流ミュージシャンの証” とはそういうことである。アニソンで売れたいという駆け出しミュージシャンの夢はそう簡単には実現しない。しっかりした理論と技術が伴わなければやはり世間には認められないのだ。

「Get Wild」でアニソンはJ-POPとして完全に確立


話を戻そう―― そう、その89秒ルールをぶち破るアニソンがついに登場する。時は1987年…『シティーハンター』のエンディング曲、今回『80年代アニメソング総選挙!ザ☆ベスト100』で第1位に輝いた、TM NETWORK「Get Wild」である。

この曲の使われ方は実に画期的だった。アニメ本編が終わるとCMを挟んで次回予告、そしてエンディング曲と映像というのが一般的な流れなのだが、『シティーハンター』では、作中の物語ラストシーンの途中から曲のイントロが流れ始め、CMを挟まずそのままエンディング映像に突入するのだ。これが実にカッコイイ。この手法は後付けではなく制作会社であるサンライズからの指定であった。

イントロの静かなキーボードアレンジは、まだ本編の台詞が残っているための配慮。そこからクラッシュ音を挟み、シンセベースとバスドラムの4つ打ちがフェードインして高揚感を煽ってくる。このアレンジ… 映像と楽曲が融合したイリュージョンであり小室哲哉の神業としか言いようがない。エンディングなのにワクワクの余韻を演出するというまさに天才の仕事なのだ。

そして歌詞… 小室みつ子の書いた詞には、言うまでもないが番組タイトルも主人公の名前も必殺技も出てこない。それでいて物語のイメージを彷彿させるフレーズが散りばめられていて楽曲に彩りを添えてゆく。まさに現在人気のアニソンの原型といっても過言ではないだろう。タイアップであるアニソンのはずなのに、すでにTM NETWORKの「Get Wild」という独立した楽曲として完成しているところも今に通じている。そう、ここが時代の転換点なのだ。

この楽曲が出現したことで、この後に生まれるアニメソングの多くはJ-POPとして日本の音楽シーンを席巻してゆくことになる。そう、『名探偵コナン』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、アニソンタイアップ全盛期である1990年代は、もう目の前にまで迫っている。

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