そびえ立つ工場!令和の世に見られる鉱山鉄道の光景 模型も発表「赤ホキ」と呼ばれる貨車はどんな車両?
取材日:2021.10.2(特記以外)
text&Photo:福島鷺栖(特記以外)
貨物ファンにとって中京圏の車扱貨物といえば太平洋セメントのタキ1900で構成されるセメント列車や、白いホッパ車のホキ1000で構成される衣浦臨海鉄道直通の炭カル・フライアッシュ輸送などが有名です。今回はそんな人気の高い中京圏の車扱貨物の中でも、今話題を呼んでいる「赤ホキ」の発駅側にスポットを当てていきたいと思います。
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■祝!KATOよりホキ2000が製品化!
中京圏の貨物輸送のレイル・ファン的な話題では、先日KATOより10月予定の新製品として発表されたホキ2000が名古屋臨海鉄道のND552と併せて発表されたことが記憶に新しいですね。以前、同社からはこの赤ホキで使用されているホキ9500が発売されましたが、実車のホキ9500はホキ2000と混結していることもあり、このホキ2000は貨物ファンにとっては待望の製品化でした。
そこで、今回は発表されたばかりの赤ホキをさらに楽しむために、実車の様子をご紹介していきたいと思います。
■始まりは盲腸線の先
美濃赤坂駅はレイルファンの間では言わずとしれた東海道本線の支線です。赤ホキこと石灰石輸送列車は、この美濃赤坂駅に接続する貨物専業の西濃鉄道市橋線の乙女坂駅を起点としています。なお、積荷となる石灰石はこの乙女坂駅の西側にそびえる金生山から採れるもので、これを名古屋臨海鉄道の名古屋南貨物駅隣接の工場まで輸送するのが、この赤ホキの役割です。
美濃赤坂駅を起点に北へ延びる線路が西濃鉄道。
出典:国土地理院発行地理院タイル(標準地図)
■令和の世に現役の鉱山専用線が見られる!
先述の通り、赤ホキこと石灰石輸送列車は美濃赤坂駅に接続する西濃鉄道からJR貨物へバトンタッチされます。そのため、美濃赤坂~乙女坂は西濃鉄道の機関車が列車を牽引しています。この日は、茶色一色のセンターキャブが古めかしい雰囲気を持つDD403が牽引を担当していました。
乙女坂駅に停車中。背後には石灰石を採掘する矢橋工業乙女坂工場が見える。
列車は積み込み作業を行うため、一両分進んでは停車を繰り返します。積み込みが完了すると1.3km先の美濃赤坂駅へ向けてゆっくりと出発していきます。
短い路線ではあるものの、途中には神社を横切る踏切など有名な撮影地も点在している。
‘21.06.26 西濃鉄道 乙女坂〜美濃赤坂 P:東野 誠
(今日の一枚より)
美濃赤坂駅に入線する石灰石輸送列車。西濃鉄道は美濃赤坂駅の東端に接続している。
美濃赤坂駅では、すでにJR貨物の本務機が待機しており、ここで西濃鉄道からJR貨物の機関車への受け渡しが行われます。美濃赤坂駅での様子を追っていきたいと思います。
西濃鉄道の機関車は駅に到着すると間髪入れずに駅構内の南側に一旦引き上げ、構内の端へ退避。
美濃赤坂駅を南側から望むとJR貨物との授受駅らしく賑やかな光景が広がっている。今回、西濃鉄道の牽引を担当したのはセンターキャブのDD403。
西濃鉄道の機関車の入換が完了すると、駐機していたJR貨物のEF66が動きだす。
赤ホキにJR貨物のEF66が連結される。
美濃赤坂駅を発車した石灰石輸送列車。この日は吹田機関区所属のEF66 122号機が牽引。名古屋臨海鉄道と接続する笠寺駅まで運行される。
■撮影後は廃線跡めぐりも…
西濃鉄道は、現在でこそ美濃赤坂~乙女坂の1.3kmのみですが、かつては美濃赤坂から西に分岐していた昼飯線、乙女坂から先には市橋までの路線も存在していました。今でも、昼飯線との分岐点には当時のレールが残っており、廃線跡巡りも楽しむことができます。
現在は、日に数本の貨物列車と2両編成の電車が来るのみですが、構内に残るかつての栄華の跡もたどってみてはいかがでしょうか。
昼飯線の跡。今なおレールが残る。