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androp・内澤崇仁が音と言葉のみの配信ライブで届けてくれたもの

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内澤崇仁 ※音声のみのライブ配信のため、画像は今回のものではありません。

「U」 ~Bedtime Stories Vol.2~ 2020.6.12

6月12日(金)、andropの内澤崇仁が行なった配信弾き語りライブ『「U」 ~Bedtime Stories Vol.2~』。コロナウイルスの影響で先行きが見えない状況が続く中、“不安な日々を送っているあなたに寄り添い、少しでも元気になってもらえるように”という想いから内澤がスタートさせたもので、5月30日(土)の初公演終演後、視聴者からの大きな反響やリクエストを受け、今回の第2回公演が開催されることになった。また、前回同様、今回の収益の一部は、内澤の故郷である青森のライブハウス・八戸ROXXの支援にあてられることになっている。

現在、多くのアーティストが配信ライブを行なっているが、『「U」 ~Bedtime Stories』の最大の特徴であり醍醐味となっているのは、“音声のみの公演”であるということ。内澤が弾き語っている映像をそのまま流すわけではなく、あくまでも“音”と“言葉”を届けることに重点を置いている。開演前、サイトにアクセスすると、画面にはライブタイトルのロゴが映し出されていて、赤と青がグラデーションになった背景の色は、まるで夕暮れの空を彷彿とさせるものだった。

透明感のあるアンビエントなBGMがフェードアウトすると、柔らかく爪弾かれるアコースティックギターの音色が聴こえてきた。内澤がこの日の1曲目に選んだのは、「Koi」。優しい歌声でメロディーを紡いでいく内澤だったが、指がギターの弦に触れて擦れる音や、細かな息遣いまではっきりと聴こえてきて、かなり生々しい。

「眠りにつくまでのしばらくの時間は、一旦すべてを忘れてもらって、あなたが一番落ち着ける場所に身を置いて、この声を受け取ってもらえると嬉しいです」と話す内澤は、andropの楽曲はもちろんのこと、「自分の好きな曲」ということで、ヒトリエの「フユノ」のカバーや、上白石萌音に楽曲提供した「ストーリーボード」など、開演時間の23時という落ち着いた時間帯にマッチする楽曲、アレンジ、温度感で届けていた。また、基本的にはギターを用いていたが、「Songs」ではピアノの弾き語りも披露。彼の歌声と演奏を存分に堪能できる時間が続いていく。開演時には、赤と青が混ざり合っていた背景の色も、時間が経つごとに青が濃さが増していき、夕焼け空は少しずつ夜へと移り変わっていった。

そんな心地よい演奏の合間に挟まれるMCは、どこかラジオを聴いているような感覚もあって、とても距離感が近いものになっていた。第1回のときに、『Bedtime Stories』というタイトルを『Bedside Stories」と言い間違えていたことを恥ずかしそうに話したり、おとぎ話(=bedtime story)が好きで、小さい頃は弟によく読み聞かせていた際、話の前後に即興でオープニング曲とエンディング曲を付け足して遊んでいたエピソードを話したりと、どれも親密な空気があって、自然と笑みがこぼれる。また、エレキギターの音色が満天の星空を描き出した「HoshiDenwa」を終えた後、「やっぱり、バンドでやりたいなぁ……」と、内澤が想いを零す場面もあった。ちなみに、この日の内澤は「ギター6本に囲まれている」状況で演奏していたとのこと。実際にどんな雰囲気なのかいろいろと想像が膨らんだのだが、そんな状況を見て内澤は、「自分は元々ギタリストだったけど、もう11年、ボーカリストとして生きているんだなぁ」と、しみじみとつぶやく。そして、過去のある出来事を話し始めた。

それは、内澤がandropを始める少し前のこと。彼に歌を教えてくれた人がいたのだが、残念なことに、andropがデビューする前に病気で帰らぬ人になってしまったそうだ。内澤は毎年その恩師のお墓参りに行っており、今年もコロナウイルスの影響が出る前に足を運んだとのこと。そのとき、お墓に彫られた恩師が亡くなったときの年齢が、いまの自分と同じ歳だったことに気づき、涙がとまらなくなっていたと、ゆっくりと話す。

「その先生の分まで、この教えてもらった歌を届けられたらいいなと思っていて。受け継いだものは、いまも心に生き続けていると思っているので……」

そして、その恩師のことを思って作ったという「Missing」が披露された。この曲はサビのファルセットが印象的で、やり切れなさや喪失感を爆発させるように、その悲しみを抱きながらも前に進んでいくことを誓うように力強く響かせるのだが、この日の彼は、オクターブを下げた低い声で、つぶやくように歌っていた。その歌声は、自身の音楽に閉じ込めた想いを改めて確かめているかのように聴こえてきて、ただただ胸を熱くさせられた。そして、「最近、泣いたあなたへ」と一言告げた後、「Rainbows」へ。煌びやかな12弦ギターの音色は、まさに雨の後に空にかかる虹のように美しく響き渡っていた。

“音”と“言葉”のみという状況だからこそ、より心の深いところまで届き、響くものになっていたライブだったが、昨今の配信ライブは映像付きのものがほとんどで、無料で観れてしまうものも多い。そんな中で、音声のみのプログラムを有料配信するというのは、かなりチャレンジングな内容とも言えるだろう。それに対して内澤は、andropというバンドの原点を踏まえつつ、彼らを支持してくれている人たちへの愛を込めて、こう話していた。

「なんにでも映像がついているこの時代に大丈夫かなと思っていたんですけど、音だけでも楽しんでくれる、あなたのような“ちょっとアレな人”がいてくれて嬉しいです」
「昔、“耳だけで判断してほしい”と尖っていた、某・andropというバンドがいました。そのバンドの音楽を信じて、CDやライブを求めてくれた人がいました。僕はそういう“ちょっとアレな人”が大好きで。自分もそうだし、そういう人たちに救われてきました。なので、あなたのために、これからも場所を作っていきたいと思います」

また、この『「U」 ~Bedtime Stories Vol.2~』が開催された6月12日は、本来であれば全国9都市を廻るワンマンライブツアーをスタートさせる日でもあった。バンドとしては、ツアーを中止にするのではなく、約1年後の2021年5月まで延期することを発表している。決して中止ではなく、あくまでも延期という選択をしたことについて、「少しでも目標とか希望を持つことが大事なんじゃないかなと思う」と内澤。

「中止という判断もできたけど、もしかしたらそのほうが簡単なのかもしれないけど、僕らは敢えて未来の希望を提示したいと思っています。もしまた大切な場所で音楽を心から楽しめる日が来たら、一緒に楽しみましょう」
「音楽はなくなりません。また会える日を信じて活動していきますので、どうか待っていただけると嬉しいです。それまでは、お互い元気でいましょうね」

再会の日を願って「Home」を演奏し、ライブが終了したのは24時を少し過ぎた頃。夜のとばりが下り、画面も真っ暗になった……のだが、「あれ? 日付も変わったのに、まだ寝てないのか」という内澤の声。そこからアンコールとして、彼が音楽プロデュースを務めた映画『サヨナラまでの30分』に登場するバンド・ECHOOLの「風と星」を披露。柔らかな歌声を届ける中、真っ暗だった画面に少しだけ明りが灯っていた。暗闇に揺れるその明かりは、輪郭もはっきりしておらず、ぼんやりとしていたのだが、そこには確実に光があることを、それこそ未来には希望があることを教えてくれているようだった。

この日のMCで、「こんなときだからこそ気づけたことやわかったこと、その考えや感情を音楽にしていこうと思う」と話していた内澤。未来への希望は確実に提示されてはいるものの、それがまだ少し遠い先の話でもあることに、一抹の寂しさを覚えてしまうのが正直なところだろう。そんな中、嬉しい知らせが届いた。

6月25日(木)20時から、andropはCreepy Nutsとの配信ツーマンライブ『androp×Creepy Nuts「SOS! 2020」』を開催する。andropとCreepy Nutsといえば、2017年に「SOS! feat. Creepy Nuts」でコラボレーションをし、その後も何度か共にステージに立っている間柄。そんな両者が、今度はオンラインでどんな共演を見せてくれるのか。正直どんな展開になるのか予測不能だが、おそらくきっと(むしろ予測不能だからこそ)、スペシャルに楽しい夜となるだろう。

取材・文=山口哲生

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