アルバック希釈冷凍機 量子コンピューターに採用 国産化実現に貢献
茅ヶ崎市萩園に本社を構える、真空総合メーカー・アルバックとその子会社であるアルバック・クライオが開発した希釈冷凍機がこのほど、国内の研究機関に設置されている量子コンピューターに採用された。同社の冷凍機が採用されたことで初めて「純国産」の量子コンピューターが実現したとされる。現在開催中の日本国際博覧会(大阪・関西万博)のイベントでも一般公開され、操作が体験できるようになるという。
アルバックは1952年の創立以来、真空技術を基盤として半導体・電子部品や分析機器、サービスなどを提供している「製造装置メーカー」。68年に本社を茅ヶ崎市に移転している。
同社の希釈冷凍機が採用されたのは、大阪大学量子情報・量子生命研究センターに設置されている量子コンピューター。量子コンピューターは「次世代コンピューター」と言われ、スーパーコンピューターをはるかにしのぐ性能が期待される一方で、稼働には極めて低温の環境を安定的に長時間実現する必要がある。
同社では独自の冷却流路の設計や高精度な部品加工、温度・応力分布に関するシミュレーションを駆使することで、こうした課題をクリアする希釈冷凍機を開発した。
今回、同社の製品が中核装置として採用されたことで、初めて純国産の量子コンピューターが誕生したことになる。
国産化により、量産などに向けて柔軟に技術対応できるようになることや国内での部品供給、システムの定期的な点検・修正する保守体制が整備され、ユーザーにとっても導入時のリスクの低減、また持続的な運用につながるという。同社では「量子コンピューターの分野で今後の国際的な技術競争で存在感を発揮するための重要な礎となるもの」としている。
この量子コンピューターは、関西万博で8月14日から20日に行われるアートイベント「エンタングル・モーメント『量子・海・宇宙』×芸術」で、クラウド(インターネット経由でデータやサービスを利用する仕組み)を通じて来場者が実際に操作を体験できる形で一般公開される。
希釈冷凍機の開発を担当したアルバック・クライオ技術部の斎藤政通さんは「日本の技術で量子コンピューターを冷却するという挑戦は低温エンジニアとして大きな誇り。量子技術という、最先端の領域に貢献できたこともうれしい。冷却技術を追求し、地元茅ヶ崎から世界へとさらに発信していきたい」と話している。