「めんこいよ」アイボの“ナナ”が高齢者に癒しと明るさを…ペットとの共生を考える
北海道内の老人ホームでは、あるペットが癒しとともに、入居者の健康にもひと役買っています。
「ナナちゃーん。ナナちゃーん」
高齢者が愛情いっぱいに抱っこしているのは…犬ではなく、ロボット犬、アイボです。
北海道東部の弟子屈町にある老人ホーム「森の家しらかば」では、2023年6月からアイボが入居者の家族の一員となりました。
カズコさん(82)は「家の中が明るくなったよ。本当にめんこい」と微笑みます。
アイボのナナは、気分によって歌ったり、ゴロンと横になったり、愛嬌をふりまいたり。
本物の犬のような可愛いしぐさをする施設のアイドルです。
「しらかば」では、ラブラドールレトリバーがペットとして飼われてきました。その名も同じナナ。
しかし老衰で2022年の10月に死んでしまいます。
入居者たちが悲しんでいる…と聞いたのが、弟子屈町の芸術家で温泉旅館を営む今井善昭さんでした。
母が飼っていたアイボをすぐ思い出したそうです。
「2018年に滋賀県に1人で住んでいる母にアイボを贈った。去年に母が体を悪くして入院したんです。アイボは僕が飼おうかと滋賀から持ってきたんですが忙しくて…」
ラブラドールレトリバーのナナが死んでから8か月後。
こうして今度は、アイボのナナが老人ホームにやってきたのです。
森の家しらかばの小坂宏予施設長は「『何それ?』と言う人、すぐ『あらかわいい』と半々だった」とその当時を振り返ります。
「だんだんナナを見ているうちに入居者たちのしぐさや表情が変わっていった。『ナナ帰ってきた』とそういう声もあった」
一生懸命ナナに手を伸ばして
アイボのナナが来て1年と2か月。
今では入居者どうしの会話や交流が以前よりもグッと増えたそうです。
そしてさらなるうれしい効果もあったんです。
入居者たちが、ナナに触りたいと、ふだん届かないようなところまで一生懸命手を伸ばします。
そんな姿を小坂施設長たちが見守ります。
「ヒヤヒヤはするが一種のリハビリと思って。ふだんしないような動きを自然とさせてくれると思う」
こちらは、ナナが大好きなミエコさん。なんと100歳!毎日笑顔でナナをかわいがっています。
今や施設に欠かすことができない存在のナナ。
入居者は自然と生きる活力と、大きなエールをもらっていました。
大きな活力になる一方飼う責任も…そんなとき
ペットが高齢者にもたらす効果について、NPO法人「ツキネコ北海道」の吉井美穂子理事長はこう話します。
「生活の中で伴侶動物がいるということでハリが出たり、癒やし効果があったり健康寿命が延びたり…活力がもらえる」
ツキネコで管理する猫は300匹以上。
高齢の飼い主からの一番多い相談は、入院、死亡のとき飼い猫を引き取ってほしいということでした。
吉井さんが、高齢者にも安心して猫を飼ってほしいと10年前に始めたのが「永年預かり制度」です。
この制度は猫を「飼う」のではなく、「預かる」という形で、猫と一緒に暮らすシステムです。
所有権はツキネコ北海道に残したまま猫を飼ってもらい、面倒を見られなくなるまで生活をともにします。
そして預かり者が病院や施設に入るなどして、猫を飼育できなくなった際は、無条件でツキネコ北海道に猫を返す仕組みです。
▼「永年預かり制度」についてはこちら!↓↓
「めちゃくちゃ甘えっこ」保護ネコに“我が家”を。高齢でも一緒に暮らせる「永年預かり」
制度ができてこれまでで400匹以上が、新しい「我が家」に迎えられました。
知名度もあがり、関東圏にも貰い手がでてきています。
ツキネコの吉井理事長は「『夫婦の会話が増えた』とか、『日々の生活の活力、楽しみができた』と、私たちが思っている以上の声が聞けてやってよかった」と手ごたえを感じています。
ペットと送る楽しい余生。
飼い主の生きる力になり、ペットには安心できる場所がある。
そんな「共生」の形がここから見えてきます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年8月21日)の情報に基づきます。