ドルーリー朱瑛里「体の声が聞けるようになった」 陸上女子のホープが沖縄で語った進化の手応えと2026年の抱負
陸上女子中長距離界の次代を担う存在として、中学生の頃から注目を集めるドルーリー朱瑛里。2024年にあったU20アジア競技選手権大会の1500mで金メダルを獲得するなど、強烈な存在感を放つ。 その走りは、ダイナミックという表現が似合う。体に一本の筋が通ったような綺麗な姿勢を維持し、大きなストライドと力強い腕の振りで大きな推進力を生み出す。 ただ、本人いわく、これまでは「感覚」で走っていた部分が大きく、自身の走りに対する理解が深まってきたのは最近のことだという。それは、進化の余白が十分に残されていることを示していると言えるだろう。 「世界で戦うこと」を目標に据えるホープは、より高いレベルの環境を求めて今秋に米ワシントン大学へ進学することが決まっている。今年は愛知県開催のアジア競技大会やU20世界選手権も控えており、2028年の米ロサンゼルス五輪への出場を見据えると、2026年が重要な1年になることは間違いない。 昨年末、ドルーリーが合宿候補地として沖縄県読谷村を訪れた際、2026年の抱負を聞いた。
「感覚だけ」から「思考」を活性化
「直近では、U20世界選手権とアジア大会で必ずいい結果を残すということを大きな目標にしています。そこまでに、しっかり戦える体を作っていきたいです」 インタビューの冒頭で強い決意を語ったドルーリーは、そのために必要な準備を逆算して積み重ねている。 「体づくり」というのは、もちろんウエイトトレーニングによる筋肉の強化もあるが、それだけではない。身体感覚を研ぎ澄ませ、理想的な走りを追究している。 「今まではほとんど感覚だけで走っていたのですが、最近は繊細に自分の体と向き合うようになりました。筋肉や走りの調子など、体の声が聞けるようになってきたことで、より良い体の使い方が少しずつ分かってきました」 どのように着地すれば、より強い力を地面に加えることができるのか。足が後ろに流れないためには、どんな足運びがベストなのか。思考力を養い、「ここ数カ月でかなり走りが変わりました」と好感触を得ている。
「弱点」を明確にしたデータ解析で意識変化
意識変化のきっかけになったのが、昨夏に導入したフォームのデータ解析である。専用デバイスで走りを分析し、足の角度や接地の位置などを画像や数値で可視化したのだ。 結果、「自分の弱点が明確にできました」と効果を語る。 高校2年で臨んだ2024年の日本選手権では1500mで7位入賞を果たすなど、既に国内トップレベルの力を有しているが、自身の感覚では「着地位置がズレていたりして、走り全体に余裕がありませんでした」と課題感を抱えていた。 データ解析では、明確にした課題を克服するための助言やドリルの提案を専門家から受けることができる。それらに真摯な姿勢で取り組んだことで、より効率的なエネルギー伝達ができるようになった感覚があるという。「本来であれば改善に時間がかかるを過程を大幅に短縮し、進化の軌道に乗っている感じです」と確かな手応えを口にする。 津山高校陸上競技部の植月透監督も「足が流れなくなって、より地面に力が伝わるようになり、無駄なブレーキがかからなくなりました」と評価。練習への取り組み方についても「どんな選手もはじめはガムシャラに頑張ると思いますが、客観的なデータが入ってきたことで、より頭を使うようになりました。頑張り方が変わったんだと思います」と教え子の前向きな変化を感じ取っている。
9月渡米…「逃げずに続ける力」で進化へ
今秋には、米国で新たな挑戦が始まる。 進学予定のワシントン大学は屋内外に充実した施設を揃え、世界基準の選手たちが高め合う環境だという。それを念頭に「競技の面でも、その先のキャリアを見据えても、自分の可能性をより広げられる」と選択理由を語る。 津山高校は陸上の強豪校ではないため、これまで同レベルの選手と練習で競い合える機会は限られていた。「一人で走ることが多かったので、整った施設で誰かと競走し、切磋琢磨できる環境はすごく楽しみです」と高揚感をうかがわせる。 自身の強みを「自分と向き合い、物事に対して逃げずに、徹底して続けられること」と自負するドルーリー。トップレベルを目指す競技者にとって、これ以上ない資質だ。その愚直な姿勢が、思考の質を高め、より高いレベルに身を置くという選択につながっているのだろう。 2027年の世界選手権、2028年の米ロサンゼルス五輪などの代表選考を兼ねた大会もあるため、進学後も日本でのレースに参戦予定だ。 大舞台へとつながる重要な通過点となる2026年。次なるステージへと足を踏み出すドルーリーから、目が離せない。