えんぷてい『RUSH BALL 2025』ライブレポートーー柔らかな歌で会場に溶かした普遍の愛と夏の輝き
『RUSH BALL 2025』えんぷてい
『RUSH BALL』初出演を果たした5人組・えんぷていは、比志島國和(Gt)のリフが切り込む「煙」をオープニングナンバーに選択。奥中康一郎(Vo.Gt)は以前インタビューで「夏が苦手だから、自分にとっての夏が体系化されている」という旨を語ってくれたが、この曲はまさしく<夏が嫌いな僕らでも それで一緒に居られるでしょ><夏のせいだって言わせない 今夜はここは熱帯夜>と青臭い草の匂いさえ漂ってくる密やかな夏夜を記しており、彼の視点が色濃く反映されていると言えよう。
軽やかに揺らめく神谷幸宏(Dr)のシンバル然り、時に長拍で鳴らされ、折に踊り回る赤塚舜(Ba)のベースライン然り、えんぷていの作品群は、空気の隙間にするすると潜り込み、溶けあっていくような手触りがある。均衡と調和を基盤に据えているからこそ、一瞬のブレスや予定された筋書きを捨て去るジャムセッションがスリリングかつ美しく響くのだ。「自由に踊っていってください」と誘った「ステラ」は、そんなえんぷていのエネルギッシュな一面を象徴していた。
「今日のために新曲を書いてきました」とシンガロングの光景も想像に容易い広大なスケールの新曲をハンドマイクに持ち替えてプレイすると、石嶋一貴(Key)の温かなメロディーから最終曲の「夏よ」へ雪崩れこんでいく。笹の葉がそよぐみたいなアコギの音色をはじめ、レトロな歌謡曲や1980年代から2000年代初頭のJ-POP的な展開を視野に入れつつ、よりタイムレスな煌めきを探求したえんぷていのポップネスが凝固した一曲。散りゆく線香花火や浴衣から覗く白い肌、潮風でパサついた長い髪。こうしたありとあらゆる夏のイデアを浮かべ、過ぎ去る季節に対する焦燥と寂寥を宿した奥中の歌声が、力強く会場に染み入っていった。
取材・文=横堀つばさ 撮影=河上良
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