「ラン活」10年間の激変! 2027年度「ランドセル選び」の新常識〔ラン活ライター〕が徹底解説
2027年度入学向けのラン活(ランドセル選び)。約10年間ランドセル取材を行ってきたライターが、トレンドを振り返る。ラン活2027第8回。
【▶画像を見る】デイジーチャームがかわいい! “マリクワ”の新作ランドセル子育てメディアで約10年、ランドセル取材を続けている筆者。2026年5月現在、中2、小6、小1の三兄弟を育てている筆者が、初めてのラン活(ランドセル選び)をしたのは2017年のことでした。この10年で、1人1台タブレットを持つなど子どもたちの学習環境は大きく変わり、それに伴ってランドセルの在り方や選び方も変化を遂げてきました。
自身のラン活を振り返りながら、約10年のランドセルトレンドの変遷をたどります。
ラン活の「早期化」 人気ランドセルは争奪戦!
現在(2026年5月)中2になる長男が小学校へ入学したのは、2019年のこと。先輩ママたちから「ラン活は年中からが勝負よ!」とあおられ、2017年秋にスタート。
各ブランドのカタログを片っ端から取り寄せ、同級生のママ友たちと公園で冊子を広げて話し合ったのを今でも思い出します。
2018年の春が始まると同時に気になる店舗や展示会を次々と巡り、5月のGWには購入完了。人気ブランドのランドセルは発売と同時に即完したり、発売当日にアクセスが集中してサーバーがダウンしてしまうなど、ラン活は「ランドセルの争奪戦」という側面がありました。
当時、同級生の女の子たちには、爆発的人気だった『アナと雪の女王』効果で、赤やピンクよりも、水色や薄紫色のシャーベット系カラーが人気。とはいえ、友達の娘がピスタチオカラーのランドセルに決めたのを、みんなで「冒険したねぇ」と話した記憶があります。
まだ、「いろいろな色のランドセルが売られてはいるものの、実際そんなに多くの色を背負っている子どもがいるわけではない」「店頭では男女で想定される色やデザインが分かれて売られている」というのが体感でした。
ランドセル選びのポイントとして記憶しているのは、2015年ごろから教材の大型化が始まったのに呼応して「A4フラットファイルが入る大容量サイズかどうか」というところ。容量は、ランドセル選びで大事な条件でした。
長男のラン活は、親としても気合が入っていたので、試着をしに店舗を回る日々。1年生の黄色い帽子もかぶらせてもらってご満悦。 写真:遠藤るりこ
色の選択肢で言うと、大きな転換点となったのは2021年にリリースされた「ジェンダーレスシリーズ《RECO》」(土屋鞄製造所、以下土屋鞄)の登場。
土屋鞄ではもともと性別で分けた売り場作りや製品展開はしていなかったものの、改めて「性別や固定概念にとらわれない、好きな色選びをより後押しする」と銘打たれたシリーズで、このコンセプトはラン活に大きなインパクトを与えました。
2020年に入ると「軽量化」が競われるように
少し経って、次男のラン活は2019年秋にスタートしましたが、翌年春は新型コロナウイルスの流行で、1度目の緊急事態宣言が発令された時期だったので、ラン活も控えめに。初めて試着したランドセル姿の次男の写真は、布マスクをしている姿でした。
「色は黒で軽ければいい」と条件が明確だった次男のラン活は一瞬で終了。コロナ禍のはじまりということもあり、長男のときに感じたラン活熱もヒートダウン。 写真:遠藤るりこ
このころは、ランドセルの大容量化に反する「軽量化」もキーワードに。各ブランドは「どれだけ容量が入るのか」をうたう一方で、「どれだけ軽いのか」も競うように。しかし、ナイロンなどの布製ランドセルはまだほとんどなく、次男は少し軽めの人工皮革であるクラリーノ素材のランドセルを選びました。
ランドセルの「軽量化」が求められた背景には、二つの理由があります。ひとつは、コロナ流行でGIGAスクール構想が早まったから。
2020年春に全国小学校が臨時休校を余儀なくされたことを受けて、2023年度までに整備予定だった「1人1台端末」が大幅に前倒しされました。
子どもたちの荷物にタブレットが加わったことにより、荷物はさらに重くなり、ランドセルは軽いものが求められるようになったのです。
もうひとつは、2021年に大学教授や医師によって提唱された「ランドセル症候群」の解消。成長途中の小学生が重すぎるランドセルを毎日背負って通学することにより、身体に不調が現れたり、精神面に影響が出たりする状態を指し、社会問題にもなりました。
そんな流れの中で、2021年以降は、新興のナイロン製ランドセルブランドが続々と登場しました。登山リュックのテクノロジーを採用した「エルゴランセル」や、新時代の軽量ランドセルを提案した「NuLAND(ニューランド)」が鮮烈なデビューを飾ります。
見た目はランドセル然とした、ナイロン素材の「ランリュック」と呼ばれる通学カバンがちらほら登場。いずれも軽いだけでなく多機能な製品が多く、アウトドアブームも相まってアクティブな親子に受け入れられ始めました。
中でも大きなニュースとなったのは、子ども服ブランド・familiar(ファミリア)の参戦! 2022年9月に丈夫な人工皮革と軽量のナイロン素材を掛け合わせたランドセル「air ran.(エアラン)」を発表し、国内最軽量の約880gで、カラフルな色使いとシンプルながら品格あるデザインで一躍話題に。
同年12月には、アウトドアブランド・mont-bell(モンベル)の通学カバン「わんパック」がリリースされ、こちらも一時入手困難になりました。子どもの使い勝手を考えたミニマムな通学カバンは親子に広く評価されただけでなく、富山県立山町や長野県駒ヶ根市などで学校の指定バッグとして小学校新入学児童へ無償配布されました。
固定概念を覆す「新素材」に「新機能」
軽量化を求めていくと、革製品からの脱却が必至です。
フットマーク株式会社が2026年4月に行った布製ランドセルの認知度に関する調査(※参考)では、布製(ナイロン・ポリエステル製)のランドセルがあることを「知っている」と答えた保護者は55.7%にのぼり、2023年調査の48.8%から6.9ポイント上昇。初めて過半数を突破したことがわかりました。少しずつ「ランドセルは革である」という固定観念が外れつつあります。
単なるナイロンやポリエステル製ではなく、環境負荷の低い新素材を使ったランドセル作りも始まりました。廃棄漁網を再生したナイロンを使用した「スクールリュックUMI」(豊岡鞄)や、パイナップルの葉を主原料にした植物由来の素材(人工皮革)を使用した「パイナセル」(セイバン)など、変わった素材のランドセルも登場。
学校で当たり前にSDGsについて学ぶ時代、「自分のランドセルは環境に優しい素材を使っている」というのは購入のきっかけにつながります。
機能性やデザインに新しい切り口を取り入れ、これまでの常識を鮮やかに覆していくランドセルも。かぶせをなくした上開き機能の「自由なランドセル」(norokka)や、6年間使うという固定観念を取り払った高学年向けセカンドランドセル「ラクサックジュニア」(フットマーク)や「エレメンタリーバッグ」(ミズノ)も登場しました。
老舗人気ブランドが「新ブランド」を立ち上げ
2026年5月現在では、ランリュックの登場から5年余り経ち、新ブランドの参入は落ち着いてきたかなという印象です。その隙を突くかのように、大手メーカーや工房系ブランドが新しい切り口の「オリジナルブランド」を立ち上げ始めました。
2020年に国内販売本数No.1を記録したフィットちゃん(ラ・ポンテ)から、新鋭ランドセルブランド「アーティファクト(ARTIFACT)」がデビュー。2024年には老舗メーカー・セイバンが、職人技術と現代的なデザインを融合させた新ブランド「+CEL(セル)」を立ち上げました。かぶせのない仕様や、有名デザイナーの採用で話題になりました。
工房系ランドセルブランドとして不動の人気を誇る土屋鞄製造所からも、2019年にパリの街並みにインスパイアされた愛らしく上品な「grirose(グリローズ)」、2025年には、タフで機能的な新しいランドセルブランド「depsoa(デプソア)」が発表されています。
土屋鞄の新作ランドセル「デプソア」を試着した三男。 写真:遠藤るりこ
10年前の「人気ランドセル争奪戦」のような過熱したラン活はここ数年でずいぶんと落ち着き、今のラン活は、子どもの好みを尊重しながら機能性、製品背景などをじっくり語り合い吟味する「親子の大切なイベント」へと成熟しました。
ランドセルは日本が誇る独自の文化です。時代に合わせてデザインやカタチを変えながら、常に進化し続けています。特に最近はもはや「多様性」という言葉が必要ないほど、一人ひとりの価値観に寄り添うランドセルが揃う時代。選ぶ楽しみは尽きません。
我が子のラン活はこれにて終了ですが、すっかりランドセルオタクになってしまった私。これからもランドセルを通して子どもたちを取り巻く社会を見つめていきたいと思います。
取材・文/遠藤るりこ