「私は医療過誤被害者の親族です」 『脳外科医 竹田くん』作者が声明
医療事故を繰り返す医師と隠蔽する病院の内情を描いたウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』が、赤穂市民病院で起きた医療過誤の被害者親族によって描かれたことが5日に明かされた。
作者は自身の立場を明かした上で、漫画を制作した動機を、「医療事故が闇に葬られていくプロセスを克明に描くことで、救済を受けることもなく苦しんでいる人々が数多く存在しているという社会問題に目を向けていただきたかった」と語っている。
作者がネットで発表した「声明文」によると、作者は2020年1月22日に赤穂市民病院の脳神経外科手術で発生した医療過誤により、重度の後遺障害を負わされた被害患者の親族。「一連の医療事故や脳神経外科の内情について、当事者や関係者の方々から直接、あるいは間接的に情報を取得することができる立場」にあったという。
声明では漫画を制作した動機について、「一連の医療事故の真相が究明されないまま事件の記憶が風化すれば、また新たな犠牲者が生まれてしまうのではないか、といった強い危機感」「医療事故が闇に葬られていくプロセスを克明に描くことで、救済を受けることもなく苦しんでいる人々が数多く存在しているという社会問題に目を向けていただきたかった」などと説明。「手術に立ち会った医療従事者を含む複数の関係者から長期間にわたる聴き取りを行った内容」を参考にストーリーを進めたという。
また、「読者にわかりやすく伝えるために設定を単純化したり、比喩的表現を用いることはあった」と漫画自体はフィクションであるとした一方、「実際の医療事故を重く見せる目的での誇張や改変、特定の人物を殊更に悪者に仕立て上げるなどといった悪意のある脚色や誇張は一切行っておりません」と核心部分は事実に即した内容であることを強調している。
この漫画は2023年1月からインターネット上で掲載が始まり、同年7月までに142話が発表された。「赤池市」という架空の町の市民病院を舞台に、未熟な手技で立て続けに重大医療事故を起こすフリーの医師「竹田」と適切に監督指導できない上級医や医療安全部門、事故を公表しない病院などを風刺的に描いている。物語の中で描かれている医療事故の概要は、赤穂市民病院で2019年以降発生した医療事故と酷似しており、誰が描いたものなのか明かされてはいなかったものの、読者の間では「漫画のモデルは赤穂市民病院」「作者は内情に詳しい関係者に違いない」と見られていた。
一連の医療事故をめぐっては、神戸地検姫路支部が昨年12月、関わった医師を業務上過失傷害罪で起訴。作者は自らの立場を明かした理由について「さらに漫画に関心が寄せられる中、制作の意図などについて事実と異なる憶測が生じることがないよう、漫画作者としての思いを読者の皆さまにご説明させていただきたいという考えに至りました」と述べた。
作者によると、「発信者情報開示請求」によって昨年7月には氏名と住所が当該医師に開示されたといい、「今後、一連の医療事故に関わった医師から、漫画の表現について刑事告訴や訴訟提起が行われることがあったとしても、堂々と公益性を主張し、粛々と対応してまいりたいと考えております」としている。