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観る者の心を震わせる唐十郎の傑作戯曲を、宮沢りえ、磯村勇斗らが熱演 舞台『泥人魚』がいよいよ開幕

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『泥人魚』(宮沢りえ、磯村勇斗)

2003年、「劇団 唐組」で初演が行われ、第五十五回読売文学賞 戯曲・シナリオ賞、第三十八回紀伊國屋演劇賞(個人賞)、第七回鶴屋南北戯曲集、第十一回読売演劇大賞 優秀演出家賞といった賞を総なめにした、唐十郎の名作『泥人魚』。井上ひさしからも大絶賛を受けた作品が、18年ぶりに上演される(2021年12月6日(月)〜29日(水)Bunkamura シアターコクーン)。

唐十郎と蜷川幸雄に師事し、アンダーグラウンド演劇に真摯に取り組んできた劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍が演出を行い、キャストには宮沢りえ、磯村勇斗、愛希れいか、風間杜夫ら実力派が顔を揃えた。脇を固める面々も、唐十郎の世界を表現するのにふさわしい曲者揃い。6日(月)の初日に先駆けて行われたフォトコールの様子をお届けしよう。

<あらすじ>
港の町を去り、都会の片隅にあるブリキ店で暮らしている蛍一(磯村勇斗)。店主の静雄(風間杜夫)は、夜になると急にダンディになるまだらボケの詩人だ。
ある日、詩人の元門下生であり、蛍一とともに長崎の諫早漁港で働いていたしらない二郎(岡田義徳)が店を訪れる。
蛍一が町を出たのは、干拓事業に対する賛否で町が揺れる中、湾を分断する「ギロチン堤防」によって調整池の水が腐って不漁続きになり、埋め立てに反対していた漁師たちが次々に土建屋へ鞍替えしたことに絶望したからだった。一方二郎は、月の裏側を熟知していると語る月影小夜子(愛希れいか)により、港に派遣された「さぐり屋」だった。
二郎の裏切りを詰る蛍一のもとに、やすみ(宮沢りえ)が訪れる。幼い頃、漁師のガンさんに助けられた彼女は、「ヒトか魚か分からぬ子」と呼ばれていた。そして、何をしに来たか尋ねる蛍一に「人の海の貯水池で、言った通りの人魚になれ」という約束を果たしに来たと語り、脚に張り付いたきらめくものを見せる――。

物語は、二郎と彼を脅す踏屋(六平直政)たちとの乱闘でスタート。数多くの唐十郎作品に出演し、金との付き合いも長い六平だけあって、冒頭から見事な台詞回しと立ち回りで唐ワールドへぐっと引き込んでくれる。岡田は踏屋、月影、蛍一それぞれに対して違う表情を見せる二郎の複雑な立ち位置を魅力的に表現。

今回が初のストレートプレイである愛希も、ミステリアスで凛とした女性を好演している。また、歌のように叙情的でリズミカルな台詞を情感たっぷりに発する詩人・風間により、物語にさらなる味が加わっていた。

そして、人魚になるという約束のために訪れる不思議な女・やすみを演じる主演の宮沢は、ハッとするような存在感と艶やかさを放っている。どこか浮世離れした儚さと美しさに目を奪われること間違いなしだ。

今回が唐作品初参加となる磯村は、確かな演技力でファンタジーと現実が入り混じるような世界を繊細に表現。

一部シーンのみのフォトコールではあったが、18年ぶりの上演を待ち望んでいた作品ファン、キャスト陣のファンの双方を納得させる、力のある作品になっていることが感じられた。

<キャストコメント>

金守珍(きむ・すじん)

先ずは、Bunkamura シアターコクーンでの唐作・『泥人魚』は公演成功間違い無しと確信しています!なぜならば台本の素晴らしさはもちろんのこと、キャスティングが完璧なので、悩むところなく演出をすることができました。特に宮沢りえさんや六平直政氏からの豊富なアイデアにも助けられ、とても楽しい、笑いの絶えない稽古場でした。見どころは、風間杜夫氏演じる劇詩人の作るユーモラスな世界と宮沢・磯村両コンビの演じるピュアな世界が相まって表現される、唐ワールドのたとえようもない美しさです。また、蜷川幸雄師匠からの「幕開き3分勝負!」も実行しています。コロナ禍で鬱屈した毎日が続いていますが、それらを洗い流してくれる聖水をぜひ浴びに来てください!

宮沢りえ

金さんをはじめ、キャスト、スタッフのみんなが、唐さんの戯曲を、言葉を握りしめ突き進んできた稽古を経て、遂に皆さんの前でお披露目する時が来たことに緊張と興奮が溢れています。劇場という空間に観に来てくださった皆さんの心の中を泳げるよう、千秋楽まで、心震わせ惜しみなく頑張ります!

磯村勇斗

本番が始まってようやくこの作品が見えてくる気がします。もちろん、稽古場でお客様に楽しんで頂けるところまでは作り上げていますが、幕が上がったあとは皆さんと共に日々変化を遂げる作品だと感じています。唐さんの世界とお客様の世界を繋ぐのが僕達の役目なので、観てくださる方の空気を感じながら出演者一同楽しんでお届けしたいと思います。夢の中のようなファンタジーの世界へと導かれたと思ったら、突然現実を突きつけられる。それはまるで長崎の「ギロチン堤防」のように。物語が急変する。その波が行ったり来たりと舞台上を駆け回る中、でもそこには唐さんの描く「美しさ」「純粋さ」が波飛沫となってお客様の心に届くのではないかと思います。

愛希れいか

約一ヶ月のお稽古でたくさんたくさん悩みました。正直、まだまだお稽古が足りない……と思ってしまいますが、みなさんと切磋琢磨した時間を信じて、舞台に立ちたいと思います。この作品は、言葉では上手く表現できないので…是非劇場に体験しに来て頂きたいです!!そして舞台を観て少しでも皆様に元気になって頂きたいです。心に響く舞台になるよう、全身全霊をささげます!どうぞよろしくお願い致します。

風間杜夫

稽古は、怒涛のような日々だった。唐十郎の世界を誰よりも美しく感動的に伝道したいと、全身全霊で舵を取る金守珍の姿が、役者たちを惹きつけてひとときも離さなかった。その金さんの目指す高みにみんなが食らいついて、瞬く間に表現が豊かになっていく様は、役者として肝になるところの自由と開放を得たのではないかと思える。作品の全編が見どころというしかないだろう。幕が上がってから降りるまでのあらゆる瞬間が、刺激に満ちている。お客様には、アングラと呼ばれる舞台の神髄を観て頂きたい。その演劇的興奮が、生命力になることを信じて疑わない。

本作は2021年12月6日(月)より29日(水)まで、Bunkamura シアターコクーンにて上演される。また、12月15日(水)18:30公演では、イープラス「steaming+」ほかにて配信も決定している。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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