【シカの出没が止まらない!】大都市・札幌に出るには理由があった。どうしたらいい?考えるヒント
大都市・札幌のマチなかで、シカの出没が止まりません。
10月29日、札幌市西区の市街地に現れたシカ。パトカーが警戒します。
シカはJR発寒駅近くの線路に入り込み、列車と接触。
一時、列車の運行が止まりました。
札幌市環境共生担当課の坂田一人課長は、「10月・11月は、シカにとっては繁殖期に当たりますので、今の時期、オスジカがメスの鹿を追い求めて、かなり広い範囲を動き回っている」と話します。
10月中旬から、札幌市内の広い範囲で、市街地でのシカの出没が相次いでいます。
どうやって市街地までやって来たのか?そして、出没への対策は?
都会のシカを調査しました。
その理由が、クマとも通じるところがあるので…連載「クマさん、ここまでよ」番外編としてお伝えします。
## 札幌の道路をシカが猛ダッシュ!なぜ?
10月16日、中央区宮の森の道路をシカが猛ダッシュ。
車のすぐそばを駆け抜けていきました。
18日には白石区のマンションの敷地にシカが出現。
この直前には、シカと乗用車が衝突する事故が発生していました。
こうしたシカが、市街地までやってくるルートは?
札幌市環境共生担当課の坂田課長は、「大きな川、豊平川とか新川とか河川がたくさんあります。そういった川や防風林、緑地を伝って市街地まで簡単にたどり着くことができます」と話します。
10月24日には、中央区の北大植物園にシカが入り込み、臨時休園に。
翌日の朝には、この場所からはシカはいなくなっていましたが…
植物園にいたのと同じ個体とみられる大きな角のあるオスジカが、東区の住宅街に移動していました。
近くに住む人は、「キツネは出ることはあったが、角があるシカはビックリ」と話します。
シカは、いっこうに住宅街から立ち去る気配をみせません。
こうしたとき、札幌市はどう対応するのでしょうか?
坂田課長は、「急な鹿の飛び出しによって、自動車や人に接触して事故になることがないように、何人か職員をつけて『見守り』をするというのが現状。危険な場所に行かないように、なるべく誘導できるようにしたい。川や緑地が近くにあれば、そちらの方に少しずつじわじわです」と話します。
東区に朝から居座っていたシカは、夕方、豊平川へと向かい、姿を消しました。
目撃からおよそ9時間後のことでした。
一部では、シカを麻酔で眠らせ移動させたほうが、早く解決できるという声もありますが、坂田課長は、「麻酔を打ってから麻酔がかかって眠るまでに、20分ぐらいはかかるんじゃないかと思います。その間に麻酔を打たれたショックで、びっくりして走り回る危険性もあるので、逃げ場がいっぱいあるような場合には、麻酔で眠らせて、ということにはならない」と話します。
札幌市内では、シカの生息数が増えているとみられ、市街地への出没と同時に、シカによる農業被害も出ています。
3月、札幌市などの要請を受け、北海道猟友会札幌支部が、南区の国有林でシカの有害駆除を行いました。
ハンターの強い味方となるのは…
ドローンです。
ドローンが上空からシカの位置を正確にとらえ、その情報をハンターに伝えます。
この日は、ハンターら65人が参加し、オスジカ7頭を駆除しました。
効率的な駆除を行うことで、シカを適正な数に保つことが求められています。
札幌市内の農業被害額は、昨年度、大幅に増えて5000万円を超えました。
その前の冬が大雪で、山でエサ不足になったシカが果樹園まで来て、樹木の皮を食べる被害が深刻化しました。
そんな中、新たな試みもあります。
道内企業が、開発中のシカ駆除システム「ファント」の実証実験が、9月に南区で行われました。
シカの被害を受ける農家が、シカが出る場所をシステムで地図に記録し、直接ハンターに駆除を依頼します。
ハンターはその場所に出動して駆除を行います。
今回は駆除依頼と出動の部分を実験しましたが、最終的にはシカを食肉処理施設に持ち込み、オーダーのあった飲食店に肉として卸し、有効利用するまでをこのシステムで一貫して行います。
開発企業では、各自治体への導入を目指しています。
市街地や農地に出るシカとどう向き合っていくか、豊かな自然に恵まれた札幌だからこそ、避けられない課題です。
そして、「みどり」をつたって住宅地に迷い込むのは、シカだけではありません。
キツネもクマにも通じる、考えなくてはいけないポイントです。
大都市でありながら、市民運動によって豊かになった、札幌の川やみどり。
この連載では、そんな札幌ならではの特徴との向き合い方や、シカとクマとの関連について触れてきました。
野生動物とどう“いい距離”を保つのか?
Sitakkeと連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。
連載「クマさん、ここまでよ」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」での放送時(2023年11月2日)の情報に基づきます。