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ひとつの場所をみんなで使う。ふらっと気ままに、中目黒の“お手製”公民館へ

Harumari

ひとつの場所をみんなで使う。ふらっと気ままに、中目黒の“お手製”公民館へ

コロナ禍において私たちの生活は大きく変化したが、逆に私たちの生活を支えてくれている業界の方も大きな変革の時を迎えている。 テレワークの普及に伴って、固定のオフィスを構えなくても良くなったし、フードデリバリーの普及によって、特定の店舗がなくても間借りやシェアスペースを活用するようになった。“ひとつの場所をみんなで使う”……それは一見、新しいビジネスやコミュニティの在り方のように見えるが、かつて地域の人々の集まる場所であった“公民館”にあった光景と似ている。人が集い、交わり、広がるというつながりが、今の時代に合わせたスタイルにかたちを変えて、再び「中目黒ふらっと公民館」で生まれ始めた。

さまざまなジャンルの飲食店が軒を連ね、ライフスタイルショップからアパレルまで、常に最新トレンドを発信し続ける街、中目黒。華やかなイメージの一方で、目黒川を少し離れれば昔ながらの個人商店や住宅が立ち並び、あたたかな町並みが残っている。その象徴ともいえる中目黒銀座商店街から、さらに細い路地を奥へ奥へと進んだ秘密基地のような場所に2020年6月、「中目黒ふらっと公民館」がオープンした。

名前こそ“公民館”ではあるが公共施設ではなく、手がけるのはひとりの民間の女性オーナー・登坂麻美(とさか あさみ)さん。
「フラッと立ち寄ったら、誰か知っている人がいてみんなで集まったり、何か楽しいイベントをやっていたり。こどものころにあった公民館のような、街のコミュニティスペースがつくりたかったんです」
二児の母であり、池尻大橋の居酒屋「イザック」のオーナー、さらにはPRフリーランスと3足のわらじを履く彼女はそう話す。

企業勤めが必ずしもスタンダードではなくなりつつある昨今、年齢や業種を問わず、彼女のようにひとりで店を切り盛りしたり活動をしたりする人は少なくない。だが、営業しながらひとりで集客も宣伝もすることは非常に負荷が大きかった。
「飲食でもアーティスト活動でも、自分のお店を持って継続させていくことは、資金的にも精神的にもハードルが高い。だから、ひとつの場所をいろんな人と一緒に使うことで、ここを拠点にそれぞれのファンやお客さん同士がつながって、相互にプラスになっていけばいいなと思っています」

施設内にはWi-fiなどのネットワーク環境、プロジェクター、スピーカーといった各種設備のほか、キッチンを備え飲食店としての営業許可も取得した。最新のシェアスペースにはスタイリッシュで大型のものが多いなか、古民家風にリノベーションしたのは、公民館のようにこどもから高齢の方まで、誰もが落ち着いて過ごせるようにという理由からだ。約10坪というあえてこじんまりとした規模を選んだのも、ひとりやふたりで利用する人が、“自分の店”や“自分の場所”として、自分色に染めることができる広さにしたかったからだそう。間貸し居酒屋、間貸しカフェ、個展、ポップアップイベント、ワークショップなど、まるで中目黒に自分の店を持ったような感覚でこの場所を自由に使えるというわけだ。

壁には定期的な利用者を紹介する札がかけられている

実際に中目黒で一から飲食店やショップを開こうと思うと、資金面や開業後の競争率を考えてもかなりの思い切りが必要だが、ふらっと公民館ならまずは1日だけ、週1だけとさまざまなスタイルで利用できる。新しいチャレンジをしたい人にはもってこいの場所だ。逆に、公民館を訪れる人にとっては「ここに来れば、いつも何か楽しいことが待っている」というわくわく感が味わえる。

取材に訪れた2020年10月現在、定期的に利用しているのは3店。

ナナシノ氷菓店

「ナナシノ氷菓店」は、故郷北海道での開業を夢見る店主が間借りで営むかき氷専門店。「記憶に残る最初のひと口」をコンセプトに、フルーツや野菜、ナッツなど、複数の素材を掛け合わせることで、食べ進めるごとに味が変化していく“進化系かき氷”が味わえる。もちろん、シロップやクリームはすべて手作り。ひとつのかき氷の中でさまざまな食感、味、香りが楽しめるよう層を重ね、ひと口目の感動だけでなく、ふた口目以降も何度も驚きを与えてくれる。オンラインでの予約制だが、連日完売の人気店。

別邸 でんやふじさわ

夜に営業できるのも、ふらっと公民館のひとつの特徴だ。自由が丘の会員制のおでんや「おでん夜長月ふじさわ」は、2号店「別邸 でんやふじさわ」としてこの場所を利用する。「規模、立地、条件面でとても魅力的」と、女将。仕込みは本店で行うため、公民館の利用は夕方以降と効率的に活用している。ひとりでキッチンに立ち、旬の季節食材をふんだんに盛り込んだ創作おでんや、丁寧に仕込んだ定番おでん、オリジナルの逸品料理を振る舞う。本店から通う客はもちろん、普段は会員限定でしか味わえないおでんが楽しめると、はるばるやって来る食通も多い。女将自慢のおでんはその日のラインナップから好きなタネを10種選べ、逸品料理とフリーフロースタイルのドリンク付きのコースでの提供。要予約。

定番のだいこんはもちろん、カマンベールチーズの巾着やレモン入りの焼きがんもなどオリジナルのタネも。
逸品料理のオリジナルパッケージ入りの焼売。中にはオリーブと大根入りのお手製焼売が。

サウンズスキャニングセラピー REIC/令育

飲食店以外でももちろんこの場所を使うことができる。ここを活動拠点のひとつとしている「REIC/令育」は、“サウンズスキャニングセラピー”の専門店だ。ヘッドフォンから骨伝導を使い、音で身体全体をスキャン。その「波動」によって現在の健康状態や未来の健康度を予測する。「音だけで?」と不思議に思うかもしれないが、実際に受けてみると自身が抱える不調や健康の悩みが見事に解析されることに驚くだろう。得られた情報はぜひ生活習慣や意識の改革に役立てたい。ニーズに合わせて利用日数や時間がカスタマイズできるのもシェアスペースならではだ。

「他にも、フローリストさんやパーソナルカラー診断の方などがスポットで利用されたり、ワークショップ会場などとしても利用していただいています」と、登坂さん。利用者同士がコラボイベントを行ったり、他の店舗の客同士が行き来したりというつながりも生まれ始めているという。もちろん、テレカンファレンス室としての企業の利用や、子どもの誕生日会のような個人的な集まりでも利用可能。ひとりでもみんなでも、かつての公民館のように使いたい時に自由に使えるのが、この場所だ。

利用者は随時募集している。店を持ちたいと夢見ている人、アーティスト活動をしている人は、ステップアップの場として利用してみよう。
中目黒を散歩中、近くを通ったら「今日は何をやっているかな?」と気軽にのぞいてみてほしい。朝から夜まで人が集いつながることができる、中目黒ふらっと公民館は、多くの人がフラッと訪れるのを待っている。

写真・文 山本愛理

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