「音が丸聞こえのトイレ」で膀胱炎に…親会社から来た“現場知らず”の部長がドラッグストアを崩壊させた話
親会社から、現場のことをよく知らない上司が来た結果、職場が崩壊したというエピソードが寄せられた。
関西地方に住む三浦さん(仮名、40代女性)は10年以上前、あるドラッグストアに勤務していた。そこは調剤機能こそないものの、生活用品全般を広く扱う地域密着型の店舗だったという。しかし、新しくやってきた一人の部長によって、店は混迷を極めていく。
「35歳くらいの男性でした。親会社からの出向で、販売店のノウハウを全く知らない人だったんです」
編集部は、三浦さんに当時の状況を詳しく聞いた。(文:篠原みつき)
「売れるものこそ補充すべきなのに……」理解不能な在庫管理
その部長が打ち出した方針は、現場の常識からはかけ離れたものだった。「予算がないから」と商品在庫は常にスカスカ。さらに、食品などの期限切れを防ぐという名目で、あろうことか「売れたものから取り扱いを止める」という暴挙に出たのだ。
「雑誌で人気のコスメや、テレビCMが流れている洗剤、新発売のお菓子……。そういった売れ筋の商品ほど、一度売れたら補充しないんです。いやいや、売れるものこそ補充して、最後まで売れ残ったものをセールで売り切るべきでしょう」
結果として、棚には「売れ残った魅力のない商品」だけが並び、客足が遠のくのは火を見るより明らかだった。
一方で、部長はお門違いな場所には大金を投じた。10万単位の予算をかけて、効果の怪しい健康食品を大量に仕入れたり、季節ごとの過剰な飾り付けにこだわったりしたという。
「『がんが治る』とか『2週間で若返る!』といった、思わず吹き出しそうな商品ばかり増やして……。クリスマスや花見の時期には、センスの悪い電飾や巨大な看板を店中に張り巡らせていました」
そんな部長の施策に「そんなお金があるなら、まともなトイレや休憩スペースを作ってほしかった」と強く感じたという。
「倉庫の一角に寒風吹き荒ぶ和式トイレが一つあるだけ。そこはドアが薄く、周囲に音が丸聞こえでした。棚卸しの日などは至近距離で誰かが作業しており、男性スタッフから水を流しただけの音を揶揄されることもありました。そんな環境で用を足すことができず、トイレを我慢し続けた結果、私は膀胱炎になってしまったんです」
休憩室がないため、バイトが納品段ボール箱の上でカップラーメンをすする光景も日常茶飯事。「部長は知っていたはずです」と三浦さんは憤る。
「私は特別だから」蔓延するひいきと、月3万円の“自腹営業”
職場の人間関係も歪んでいた。部長はお気に入りのパート女性を露骨に優遇し、多忙な時間帯でも彼女にだけは接客やレジ打ちをさせなかったという。
「店内がどんなに混んでいても、彼女だけは悠々とポップを書いていました。他のスタッフが不満に思っても、彼女は『私はトクベツだからぁ~』と悪びれる様子もなくて。部長も見て見ぬふりでしたね。何が特別かは分かりません」
さらに、売り上げが目標に届かないときは、従業員に買い取りを強要する「自爆営業」も横行していた。三浦さん自身、月に1万〜3万円、店長や薬剤師クラスになると3万〜5万円もの負担を強いられていたという。
「物はたくさんあっても買いたいものが何もない、そんな店でした。親しかった業者の担当者が転職すると聞いたとき、それにつられて『私も辞めよう』と決断したんです」
2年後に通りかかると、店は跡形もなく消えていた
三浦さんが見切りをつけて退職してから2年後。たまたまかつての勤務先の前を通りかかると、そこには驚きの光景が広がっていた。
「店は跡形もなく消えていました。あんな経営を続けていれば当然の結果かもしれませんが、やはり寂しさはありましたね」
現在は別の道を歩んでいる三浦さんだが、当時の悔しさは今も忘れていない。
「今の私なら、商談も売り場の提案もできるし、黙って部長の好き勝手にはさせないと思います。ああ、昔に戻って、あのダメダメだった店を仕切り直したいです!」
無能なリーダーが、いかに現場をダメにするか。三浦さんの経験は組織運営に必要な多くの教訓を含んでいそうだ。
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