“いつまでも追い続けるがいい……”『名探偵コナン』黒ずくめの組織「アイリッシュ」の解説・情報まとめ|人物像や能力、ジンとの確執、ピスコとの関係、コナンに伝えた言葉の重み
『名探偵コナン』は、週刊少年サンデー(小学館)にて1994年より連載中の青山剛昌先生が描く人気推理漫画。長きにわたり親しまれてきたTVアニメシリーズは、2026年で30周年を迎えました。
作中で最大の敵かつ重要な位置づけにある「黒ずくめの組織」。劇場版『名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)』(2009年)のオリジナルキャラクター・アイリッシュは、とある人物に変装して警視庁に潜入していました。
本稿ではアイリッシュの情報をまとめてご紹介。人物像や能力、ジンとの確執、ピスコとの関係などを解説していきます。
※本稿には、『名探偵コナン』のネタバレが含まれます。
黒ずくめの組織とは
黒ずくめの組織とは、「あの方」と呼ばれるボスを頂点に暗躍する国際的犯罪組織。構成員は黒い装束で身を包み、地位の高い者には酒名のコードネームが与えられています。
組織の目的は不明ですが、活動内容は億単位の大金の取引、プログラムソフトの取引、有能なプログラマーリストの入手、薬品開発、重要人物の暗殺など。暗殺ターゲットは幅広く、組織から離脱した裏切り者をはじめ、裏社会での取引相手、組織の秘密を知った者、組織内の疑わしき者も消され、現場に犯行の痕跡を一切残しません。
まだまだ謎が多く組織の名称も不明ですが、構成員が黒い服を着ていることから、江戸川コナンは「黒ずくめの組織」と呼んでいます。
劇場版『名探偵コナン 漆黒の追跡者』
劇場版第13作『名探偵コナン 漆黒の追跡者』では、黒ずくめの組織との対決が描かれ、劇場版オリジナルキャラクターとしてアイリッシュが登場。その他、組織のメンバーではベルモット、キャンティ、コルン、ピスコが劇場版に初登場しました。
全国各地で連続殺人事件が発生し、警視庁、神奈川県警、静岡県警、埼玉県警、群馬県警、長野県警の刑事たちが集結。すべての現場にアルファベットが刻まれた麻雀牌が残されていたことから、同一犯による事件として捜査が開始されます。
捜査会議の後、山村警部がトイレで「七つの子」のプッシュ音を耳にしたと聞いたコナンは、そのメールの送り主らしき人物がジンのポルシェに乗り込むところを目撃し、黒ずくめの組織のメンバーが捜査会議に潜入していたとして警戒します。
組織を追いながらも事件の真相に近づくコナン。しかしその裏で、「コナン=新一」の真実が暴かれようとしていました。
「七つの子」のプッシュ音
以前ベルモットが組織のボスにメール送信した際、コナンは携帯電話のプッシュ音を入手しており、童謡「七つの子」のメロディであると判明。コナンはこれを検証し、あの方のメールアドレス(#969#6261)へと辿り着いています。
アイリッシュの目的は?
組織が今回の連続殺人事件を追っているのは、被害者の所持品を一つずつ持ち去ったという犯人が所持する「組織のNOCリストが入ったメモリーカード」を回収するため。この情報をコナンに流したのはベルモット。彼女はアイリッシュを警察関係者に変装させて、自身も捜査会議に潜入していました。
岡倉政明
連続殺人事件の被害者の一人・代議士秘書の岡倉政明は、自分の命の保険としてか、組織の重要情報を入れたメモリーカードを所持していました。その事実を把握した組織から抹殺される予定でしたが、今回の連続殺人犯から個人的に恨まれており、組織の手が及ぶ前に殺害されてしまったのです。
「江戸川コナン=工藤新一」を突き止める
コナンがいるとなぜか事件が解決するという会話、捜査会議の後ベルモットに気づいて飛び出して行ったコナンの様子から怪しんだのか、アイリッシュは「江戸川コナン」について調べていました。さらに、「工藤新一」について高木刑事と目暮警部から気になる情報を得ています。
新一が帝丹高校の学園祭で事件を解決したことを、高木がうっかり口を滑らせて目暮が注意しますが、松本警視がどういうことだと尋ねると、本人の希望で事件に関与したことを伏せているのだと明かします。以前は人一倍目立ちたがりだったのに最近なぜかそうなったとも口にしました。
するとアイリッシュは、新一が文化祭のときに使用した黒衣の騎士のカブトと、コナンが粘土で作ったイルカからそれぞれ指紋を採取。コナンの正体が工藤新一であることを密かに突き止めていました。アイリッシュに探られていることに気づいたコナンは、周りの人間と距離を置きつつ、服部平次に協力を仰いで事件の真相へと辿り着きます。
アイリッシュの変装
東都タワーでコナンが暴いた真犯人を、駆け付けた松本警視が制圧。コナンはこの松本警視がアイリッシュの変装であると看破します。アイリッシュは金髪に太い眉毛、がっしりした体格の男性。ベルモットは体格が違いすぎて松本警視に変装できず、アイリッシュが変装して警視庁に潜入していました。
松本清長
警視庁捜査一課を取りまとめる管理官。階級は警視。(後に警視から警視正に昇進して任を離れ、黒田兵衛が管理官に。)
松本警視に扮するアイリッシュは、蘭に挨拶されて「小百合先生は元気ですか?」と尋ねられると、ほんのわずかな間があったものの、毛利小五郎の娘の蘭であることと、小百合=娘であることも認識して無難に対応しています。ちなみに小百合は新一や蘭たちの帝丹中学校時代の担任。
アイリッシュの能力
アイリッシュは物語終盤まで誰に変装しているのかも素顔も伏せられていましたが、これまでの動きを辿ると極めて能力の高い人物であることが見えてきます。
まずは優れた洞察力と情報収集力。本来の目的はメモリーカード奪還でありながら、捜査会議後にコナンの不可解な動きを見逃さず、これを裏付けるかのようなわずかな情報から、彼の正体が工藤新一ではないかと疑い始めています。
続いては高い戦闘能力。格闘技に長けており、東都タワーに集結した警察官たちも全て無力化し、犯人を一撃で制圧。空手の実力者である蘭を倒すほどの強さを披露しました。さらに、コナンのアイテムをことごとく撃ち抜き、一人でコナンを追い詰めています。
また、松本清長の特長や人物関係まで把握して見事に演じきり、周りの人間に疑われることなく捜査の指揮をとるという難易度の高い任務をやり遂げていました。
ピスコの死をめぐるジンとの確執
コナンの正体を突き止めたアイリッシュは、「そういえば、あの高校生探偵を例の薬で処分したのはお前だったな」「工藤新一だよ…忘れたか?」とジンに問いかけていますが、「バラした奴の名前なんざいちいち覚えちゃいない」と一蹴されています。
組織のメンバーであったピスコを父親のように慕っていたアイリッシュは、ジンに対して「ピスコを射殺した上、炎上する杯戸シティホテルに亡骸を放置して黒焦げにしやがった」と恨んでおり、報復の機会をうかがっていました。
コナンが自分の正体を知りながらジンに黙っていた理由を尋ねると、「工藤新一を殺し損ない、正体を見抜けなかったのは奴の大きな失点」であり、ジンを失脚させる証人としてコナンを生かしたままあの方の前に連れて行くと説明しています。
ピスコ
ピスコの表の顔は、経済界の大物と称される自動車メーカー会長の枡山憲三。あの方に長年仕え、組織の力をバックにのしあがったといいます。年齢は71歳。アニメ第176~178話「黒の組織との再会」(コミック24巻)に登場しました。
ピスコは「映画監督 酒巻昭氏を偲ぶ会」で政治家の呑口重彦を暗殺するも、殺害の瞬間を撮られるというミスを犯し、あの方に見限られてジンにより射殺されています。
死の直前にピスコが知ったシェリーの秘密
ピスコは灰原の両親・宮野夫妻と過去に親交があり、開発中の薬についてよく聞いていたといいます。組織のデータベースでシェリーの顔写真を確認していたピスコは、シェリーの面影がある灰原を誘拐して監禁。シェリーが大人の姿から子供の姿になった瞬間を目撃し、「まさかここまで君が進めていたとは…事故死した御両親もさぞかしお喜びだろう…」と称賛しました。
アイリッシュが遺した言葉
コナンとアイリッシュが対峙するなか、ジンたち組織のメンバーを乗せた軍用ヘリコプターが東都タワーに襲来。松本警視が偽物だとバレてしまい、警察に包囲されて逃げられないとして、ジンはアイリッシュに見切りをつけており、キャンティがメモリーカードごとアイリッシュを撃ち抜きます。
コナンは撃たれたアイリッシュに「大丈夫だ…急所は外れてる」と励ましながら、彼を担いで助けようとしていました。アイリッシュは敵である自分を助けようとするコナンに、「なるほどな…ベルモットが惚れるわけだ…」と笑みを浮かべていました。その直後、さらなる銃撃からコナンを庇いながら、最期に言葉を遺して絶命。
「工藤新一…いつまでも追い続けるがいい…」
ベルモットが新一を「シルバーブレット」として期待するように、アイリッシュもまた新一に心を動かされたようでした。銃撃からコナンを庇ったのは、おそらくベルモットと同じく、敵である自分を救おうとするコナンに心を奪われたから。
アイリッシュがあの時何を思ったのか、死に際の言葉の意味にも想いを巡らせずにはいられませんが、この少年ならあるいは、やり遂げるかもしれないという感情が芽生えたのではないでしょうか。
アイリッシュは敵でありながらも、圧倒的な強さやコナンを庇った行動などから、ファンから惜しまれるキャラクターでもあります。コナンは組織のヘリを撃退した後、アイリッシュの最期の言葉を思い返し、改めて組織と戦い続ける決意を固めていました。
劇場版オリジナルキャラクターでは、『純黒の悪夢』のキュラソーや『黒鉄の魚影』のピンガもまたシェリーもしくは工藤新一の秘密を知り、劇中で死亡していることも共通しています。
ベルモットも心を打たれた新一の言葉と行動
1年前のニューヨークで、ベルモットはFBI捜査官の赤井秀一をおびき出して抹殺するため、銀髪の日系人の通り魔に変装。しかし赤井に撃たれてしまい、逃走中に廃ビルで新一と蘭に遭遇した際、非常階段から転落しそうになります。
すると、蘭は咄嗟に手を伸ばして通り魔を掴み、駆けつけた新一も蘭に協力。2人は自分たちを殺そうとする人物を助けようとしていました。
なぜ自分を助けたのかと通り魔に問われた新一は、「わけなんているのかよ? 人が人を殺す動機なんて、知ったこっちゃねーが…人が人を助ける理由に…論理的な思考は存在しねーだろ?」と言い切ります。
神様の存在を否定し、これまで自分にエンジェルは微笑んでくれなかったというベルモットは、新一と蘭の言葉や行動に心を打たれていました。この出来事から、新一と蘭はベルモットにとって“この世でたった2つの宝物”に。
組織のボスは、組織を唯一壊滅できる「銀の弾丸(シルバーブレット)」として赤井を恐れていますが、ベルモットは新一(コナン)こそが長い間待ち望んだ「シルバーブレット」になれるかもしれないと期待を寄せています。
コナンに聞かれてベルモットが素直にアイリッシュの情報を教えたのは、アイリッシュからコナンを守りたかったからなのかもしれませんね。
アイリッシュの声優は幹本雄之さん
アイリッシュを演じているのは声優の幹本雄之(みきもとゆうじ)さん。3月15日生まれ、新潟県出身。『レイトン ミステリー探偵社 ~カトリーのナゾトキファイル~』のドリスタン役をはじめ、『鉄人28号』の村雨健児役など、人気作品のキャラクターを演じています。