創業100年!名物「そば寿司」はいかが? 山口市「長州そば 東京庵」
山口市が、NYタイムズ紙「2024年に行くべき52カ所」に選ばれて半年以上が経ち、県外ナンバーの車や外国人観光客を見かける機会が以前に増して増えたような気がします。
その山口市のシンボル的な存在でもある、国宝・瑠璃光寺五重塔のお膝元にある「長州そば 東京庵」は、今年、創業100年を迎えます。
今回は、老舗そば店の暖簾を守り続ける「長州そば 東京庵」をご紹介します!
創業100年の歴史!山口にありながらも「東京庵」とは?
「長州そば 東京庵」(山口県山口市香山町6-16)は、瑠璃光寺の門前に店を構えている山口市民には言わずと知れた老舗そば店です。
店内には、カウンター席やテーブル席、座敷もあります。
どこか懐かしく温かみのある雰囲気。家族連れはもちろん、一人でも入りやすいお店です。
店内には、五重塔などの絵も飾ってあります。
お客さんから贈られたものもあるそうで、今は、改修工事でシートに覆われている五重塔も、こちらの絵で拝むことができますよ。
そもそも、なぜ、山口にあるそば屋さんなのに、「東京庵」というのか。疑問に思われたことありませんか?
というのも、大正12(1923)年、東京神田にあった「東京庵」というそば店が関東大震災で倒壊してしまい、そこで働いていた山口県出身の職人を初代が引き取り、その名前と技を引き継いで開業したことから「東京庵」となったのだそうです。
元々は湯田温泉の地で開業し、今年でちょうど創業100年の節目を迎えます。瑠璃光寺近くにある東京庵は「香山店」として平成8年に開店しました。ですが、16年前に湯田温泉の本店が閉店したことから、山口市を代表する観光地・瑠璃光寺の門前で「東京庵」の暖簾を受け継ぎ守り続けているのです。
名物は「そば寿司」
東京庵と言えば、やはり、「そば寿司」が有名ですよね!
・そば寿司 1人前(10切れ) 1300円
県外出身の私は、この東京庵のそば寿司を始めて知ったとき、「そばが巻き寿司に???」と?マークがたくさん浮かびました(笑)
確か、初めて食べたのは、14年前。どんな味なんだろう?と好奇心から食べてみたことを覚えています。
実際に食べてみると、その美味しさにビックリ!!!酢飯がそばに代わっているけれど、酸味があるのはつけ汁のほうで、ほどよい酸味と甘みでさっぱりとした味わい。具材も甘辛く味付けされていて、そばともつけ汁とも相性良し!
わさびを少しだけ付けると、ピリッとした風味がアクセントになります。そばの食べやすさもあり、あっさりさっぱりとしているので、箸も進みます。
この「そば寿司」は、1963年(昭和38年)に山口国体が開催されるにあたり、「山口の名物となる一品を」と、2代目が考案したものだそう。以来、約60年にわたって、地元の人はもちろん、観光客からも愛されている名物となっています。
こちらのそば寿司は、テイクアウトも可能です。ただ、風味や美味しさを保つために、2時間以内に召し上がってくださいね。
人気のメニューもご紹介
そば寿司もそばも両方食べたい!という方に人気のメニューがこちら。
・そば寿司セット 1520円
そば寿司(4切れ)に加えて、かけそば、または、ざるそばを選ぶことができ、小鉢もついています。
暑い夏場は、やはり、ざるそばが人気だそう。
東京庵のそばは、小麦粉が2割、そば粉8割の「二八そば」で、少し太めの平打ち麺が特徴です。
そばの風味もしっかり感じつつ、ツルツルっと滑らかでのど越しが良い!甘みとコクのあるそばつゆと一緒に美味しくいただきました。
もちろん、そば湯もついています。
そばの甘みが感じられて、私は、そばつゆは入れずに、そのままいただくほうが好きでしたよ。
そして、セットには「そば外郎」のデザートもついています!
そば湯をベースに甘みを加えて固めたものなのですが、そばの風味とモチモチ食感がクセになるほどの美味しさ!
名物のそば寿司から甘味まで、東京庵の美味しいお蕎麦が堪能できる「そば寿司セット」はオススメです♪
ざるそばも美味しいですが、やはり、温かいそばも気になりますよね。
温かいそばで、一番人気のメニューがこちら。
・天ぷらそば 1150円
大きなえび天が一尾のった天ぷらそばも、もちろん、そばの風味と滑らかな食感が楽しめる一品。温かいおそばなので、出汁の風味も加わり、おそばって美味しいなぁとしみじみ感じました。
「東京庵」のつゆは、全て鯖節といりこ出汁がベースとなっており、そこに様々な醤油を加えて作っています。なので、出汁の風味も強く、深みのあるコクと甘めの味わいが楽しめます。
そして、小さなお子さん向けのメニューもありましたよ。
・こどもうどん(温または冷) 300円
未就学児限定メニューで、温かいうどんか冷たいうどんを選ぶことができます。我が家の5歳の息子にはちょうど良い量だったようで、子ども向けのうどんがあると家族連れでも安心してお蕎麦屋さんに入りやすいなぁと感じました。
昔ながらの石臼で自家製粉
「東京庵」のそばは、手打ちなのはもちろんですが、なんと、お店で製粉もしているんです!
というのも、長年、取引をしていた製粉所が4年前に閉業してしまったため、自家製粉をすることにしたのだそう。しかも、その製粉所の石臼を引き継いで使用しています。
こちらが、その石臼。
金具に覆われていますが、中には、石臼が縦に配置されています。縦に回転して挽き出す「縦型石臼機」は、現在では非常に珍しいそうです。
「東京庵」で使用している玄そばがこちら。
以前は山口県産のそばを提供していましたが、まとまった量を仕入れることができなくなってしまったため、現在は島根県産を使用しています。「東京庵」では、この玄そばから挽き出した3種類の粉を配合してそばを打ちます。
最初に挽き出されたものをふるいにかけた「一番粉」です。
色が白っぽく、味も良い一番粉がそばのベースとなります。ただ、この縦型石臼で挽くと、横型に比べて少し粗め挽き出されるため、このままではそばが切れやすくなってしまうそうです。
次に、一番粉にはならなかったものをふるいにかけた「二番粉」です。細かい殻を含んでいるので、そばらしい色味や風味、甘みを引き出してくれます。
そして、一番粉をさらに挽き出して細かくした粉です。この粉を配合することで、そばが切れやすくすることを防ぎ、つるっとしたのど越しの良いそばに仕上げることができます。
この3種類の粉を配合して、毎朝、その日に必要な量のそばを打ちます。土日には、約200人前を準備するそうです。
また、自家製粉を始めたことで、新商品も誕生しました!
・さらざん茶 1杯200円
フランス語で「そば」を「サラザン」ということから名づけられた「そば茶」です。臼にかける前の二番粉を自家焙煎しており、香ばしいそばの風味に加えて、ほんのり甘みもあり、ホッとする味わいです。
ちなみに、二番粉は「そば外郎」にも使用されていて、モチモチ食感を生み出してくれるんだそうですよ。二番粉すごい!と思いつつ、手間暇かけて製粉したそば粉をできるだけ余すことなく活用して、そのおいしさを伝えたいという想いも込められているように感じました。
より美味しいそばを目指して
創業100年の暖簾を受け継いでいるのは、5代目の店主・藤村信明さんです。
曾祖父が開業し、祖父と伯父が守ってきた本店、そして、父が始めた香山店と、100年に渡り代々受け継がれてきた東京庵の味を引き継いでいます。
しかし、長年取引のあった業者が後継者問題などで閉業したり、天候不順などで玄そばの仕入れが安定しないなど、その味を守り続けることは容易ではありません。
ですが、藤村さんは、「できることをできる範囲で、地道に焦らず、納得のいく味を提供していきたい」とのこと。その言葉から、そばを挽くこと、打つことにじっくりと向き合いながら、長年愛されている味を守りつつ、より美味しいそばを食べてもらいたい、という職人としての純粋な想いも感じました。
お店には、観光客はもちろん、湯田温泉にあった本店に通っていた常連さんも多く訪れるそう。昔なじみのお客さんが今なお通い続けているのは、「東京庵」の味を継承しているからこそなんでしょうね。
ぜひ、名物のそば寿司をはじめ、「東京庵」のそばを味わってみてくださいね。