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「1番」にこだわる4歳娘の"珍"提案に絶句!負けず嫌いでマイルールを押し通す…娘と母の運動会までの攻防戦

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「1番」にこだわる4歳娘の"珍"提案に絶句!負けず嫌いでマイルールを押し通す…娘と母の運動会までの攻防戦

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

次女からの、とんでもないお願い

保育園の4歳児クラスに通う次女・あずさは、診断はついていないものの、集団で浮きがちという困りごとがあって療育(発達支援施設)に通っています。

友達と衝突しやすい理由の一つが、負けず嫌いなところです。
たとえば、家族でメモリーゲーム(神経衰弱)をしているとき。ゲーム終盤になって旗色が悪いと「……このままじゃママに負けちゃう……。みんな、私に力を!」と、パパやお姉ちゃんの取ったカードを吸収合体して勝利をもぎ取りにくることがあります。
また、オセロで遊んでいるときも、負けそうになると「チェーンジ!!」と叫んで白黒交代しようとすることも。
【ルールの中で遊ぶ】【ルールは勝手に作らない】といったことを繰り返し伝えてはいますが、あの手この手で負けまいとしてきます。

そんなあずさが、運動会が近づいてきたある日、神妙な面持ちで「ママ、お願いがあるの……」と言いました。
ただごとではない雰囲気を感じた私は、家事の手を止め、膝をついて「どうしたの?」と聞いてみました。すると……

運動会シーズン目前。きっと保育園でかけっこの練習をして、負けたのが悔しかったのでしょう。そして、あずさなりにひねり出した1位になる方法が、「自分より足の速い子を追い出してもらう」だったようです。あまりのお願いに、何からどう話していいのか固まってしまいました。

努力したくないけど、勝ちたい

「ママが誰かを追い出すことはできないし、できたとしてもしたくない」
「1位になれたらすごいけど、一生懸命やって、力を出し切れたらそれだけでハナマルなんだよ」

と諭してみるも、あずさには全然響かず、「ハナマルは要らないから1位になりたいんですけど」と言われてしまいました。
綺麗事では納得できないようなので、その勝ちたい気持ちを目標に向かうための燃料にできれば、とこんな提案をしてみました。

「じゃあ、速く走るための特訓を一緒にしてみようか!」

そんなに勝ちへのこだわりがありながら、なぜ。
“目標のために努力する”という正攻法が早々に封じられましたが、大人として親として、説得を続けます。

「かけっこは勝ち負けが分かりやすいから1位に憧れちゃうよね。
でもさ、脚の速い子もいれば、物知りな子や、人に優しくできる子もいて、カッコイイところって人それぞれじゃない?もし、かけっこで1位になれなくても、あずさが『これは負けないぞ!』って思うところで頑張ったらいいと思うけどな?」

あずさがハッとして顔を上げました。

「そっか……!わたし、お友達にお手紙かくね!完成するまでママは見ないで!」

「え?お手紙?なんの?」とハテナを浮かべる私を置いて、あずさが大真面目に書き上げた文面は以下のとおり。

おともだちへ。はやいひともいるけれど、おそいひともいるよ。だからうしろにいてください。あずさ

……つまりは「人それぞれだから順位は気にせず、私を抜かさないでください」ということを言いたいのでしょう。肝心なところが伝わっていないばかりか、自分に都合よく解釈してみんなを出し抜こうとする姿に頭痛がしてきます。

けれどそんな様子から、あずさの「勝ちたい!!」という気持ちは相当強く、本気であることがよく分かりました。
その日は、「正々堂々と勝負するから楽しいんだよ」という私と、「それはそうだけど勝ちたい」というあずさで平行線のまま眠りに就いたのですが……。

保育園や療育(発達支援施設)での様子

翌日、保育園の先生にかけっこ練習中の様子を聞いてみました。

「あずさちゃん、かけっこで抜かされそうになると両手を広げて妨害することがあって……当たるほどじゃないんですが、注意させてもらうことがあります」

昨夜の様子から嫌な予感はしていましたが、やっぱりやらかしていたようです。
先生は「年中さんの年頃だと1位にこだわる子は多いので、あまり心配なさらず」とおっしゃっていましたが、「勝つためならズルしても構わない」という姿勢が気にかかり、療育(発達支援施設)の先生方にも相談することにしました。

あずさの一連の負けず嫌いエピソードを話すと、療育(発達支援施設)の先生方は「ごめんなさい、笑っちゃいけないんですけど……!」と言いながら大爆笑。勝ち負けにこだわるのは発達凸凹の子にはよくあることだそうで、療育中にかけっこのプログラムを入れてもらったり、先生の言葉で諭してもらったり、運動会で勝ちにこだわる子の絵本を読んでもらったりと、本番までの間、さまざまに対応していただきました。
これで少しは分かってくれるだろうか……とホッとしたのも束の間。
その後も、保育園や療育(発達支援施設)から聞こえてくる報告では

・相変わらず両手を広げて進路妨害している
・1位になれなかったとき、1位の子に拍手で近づき、褒め称えて大喜びするうちにあずさも1位だったような空気にする
・みんながゴールした後も自分だけ数メートル余分に走り、「真のゴールはここでした!私が1位!」と主張する
・先生の目を盗み、子どもたちを集めて「1位じゃなくてもいいんだよ。だから私を先に行かせてね」と説く

といった行動を続けているそうで、思わず頭を抱えてしまいました。

勝ちにこだわるのは、悪いこと?

私は、勝ちにこだわること自体は悪いことではないと思っています。
闘争心が原動力になることもあるでしょうし、それで勝てたときの達成感が誇りになることもあるでしょう。

けれど現実として、いつも1位になれるわけではありません。長い人生で人に負けることはいくらでもありますし、いちいち腹を立てていたら本人も周りもしんどいはず。

今のあずさの場合、問題は「勝ちたい」という思いそのものではなく、“真っ向から勝負せずにマイルールを押し付けてしまう幼さ”や、“負けたときの感情処理の未熟さ”なのだと感じます。
まだ年中さんなので幼くて当然なのですが、難しさを感じるのは、勝つための根回しやおしゃべりといった言葉の交渉は年齢以上にできる点です。本人に悪気はなくても、天真爛漫にずる賢いことをしてしまうので、その分だけ人より叱られる場面も多いのだろうと思います。

ルールで縛って足並みを揃えさせようにも、大人の目線で正しさを押し付けるだけでは、本当の意味で納得してくれないのが子育ての難しさ……私はなるべくあずさの気持ちに寄り添おうと、「勝ちたい」思いを尊重しつつ、来る日も来る日もルールを教え、相手の気持ちになることを教え、真っ当に勝てる方法を一緒に考えました。先生方に見守られながら練習で揉まれるうちに、本人が気づいてくれることを信じて。

そして迎えた、運動会前夜。
意気込むあずさの口から出た言葉は―――

これを聞き、私も「よし、明日は思いっきり負けておいで」と吹っ切れた思いで運動会へ送り出すことができました。
運動会本番の様子と、後日談はまた別の機会にお話します。

執筆/にれ

(監修:室伏先生より)
あずささんの負けず嫌いエピソードを共有してくださり、ありがとうございました。
一生懸命なご様子が可愛らしく、思わず微笑んでしまうエピソードである一方で、ご家族にとっては、戸惑いや焦り、頭を抱えたくなる瞬間の連続でもありましたよね。
理由を十分に説明しないまま「それはいけない」と押し付けたり、「勝ちたい」という大切な気持ちを否定したりすることなく、「分かってほしい」「一緒に考えたい」という姿勢で、試行錯誤しながら向き合い続けてこられたこと。その関わりそのものが、あずささんにとって大きな支えとなり、安心して成長していくための土台になっているのだと感じました。
にれさんのおっしゃる通り、負けを受け止める力がまだ育ち途中であることや、感情が高ぶったときにルールよりも自分の気持ちや論理を優先してしまうこと、言葉による交渉力は年齢以上に発達している一方で、感情調整はまだ未熟であることなど、発達のアンバランスさが背景にあるように見受けられます。「マイルール」を作って状況をコントロールしようとする行動も、不安や悔しさを何とか処理しようとする、あずささんなりの必死な工夫なのかもしれませんね。
にれさんがされていたように、あずささんの「勝ちたい」という気持ちに寄り添いながら、ルールや相手の気持ちを丁寧に伝え、先生方とも連携しながらみんなで支えていく関わりは、とても理想的なサポートの形だと思いました。
勝ち負けへのこだわりは、成長とともに形を変えながら少しずつ落ち着いていくことも多く、その過程で身につく悔しさの受け止め方や他者との折り合いは、将来きっと大きな力になっていくはずです。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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