勤務時間外に仕事での嫌な記憶が蘇る人が増加、課題解決のカギは「コミュニケーション」 民間調査
ジュノー(神奈川県横浜市)は4月24日、正規・非正規社員の男女を対象に、「感情労働」と「持ち帰り感情ストレス」に関する実態調査を実施し、その結果を公表した。
ネガティブな感情を抱く「感情労働の持ち帰り」問題
日本企業は現在、深刻な人手不足に直面するほか、メンタルヘルス不調が増え、事業活動に多大な影響を及ぼしている。また近年はカスタマーハラスメントやパワーハラスメントも増加傾向にあり、従業員の「感情労働」による負の影響が問題視されている。
感情労働とは、顧客・同僚・上司に対して、仕事上求められる感情状態を、自己の体調や本来の感情にかかわらず、意図的に作り出したり適切に示すなど感情のコントロールを必要とする労働のこと。感情労働は精神的負担が大きく、心身に影響を与える。最近では、勤務時間外に仕事中の出来事を振り返り、ネガティブな感情を抱く「感情労働の持ち帰り」も報告されている。
こうした状況を踏まえ、ジュノーは今回、感情労働研究の第一人者である東京成徳大学応用心理学部の関谷大輝准教授と共同で、仕事中に経験する感情や勤務時間外に思い出す感情・頻度・内容・ストレス反応などをまとめた。
8割以上が「勤務時間外に仕事中に経験した出来事を思い出す」と回答
調査によると、仕事中「感情労働」を行っている人(「常にある」「よくある」「ときどきある」の合計)は94.5%に上った。また、勤務時間外に、仕事中に経験した出来事を思い出している人(「とてもよくある」「よくある」「ときどきある」「まれにある」の合計)は88.1%となった。
思い出しの頻度と、その際に思い出した感情との関連性を調べたところ、ネガティブな感情との関連が強く、「思い出す頻度が多い人ほど、ネガティブな感情を抱きやすい」ことが判明した。
1気がかりな0.4632心配な0.3743不安な0.3424気が重い0.3185疲れた0.2606だるい0.2167自信がない0.1888ばからしい0.1769何もしたくない0.16610憎らしい0.07711いらいらしている0.07012うらんだ0.06213さわやかな-0.03514気持ちの良い-0.06415陽気な-0.099
職場内での上司からの理不尽な指導や否定的な言動をよく思い出す
「不快で嫌な気持ち」「快適で良い気持ち」になった内容について、よく思い出す場面や代表的な例を自由記述形式で尋ねた。
調査では、「不快で嫌な気持ち」になった代表的な内容や場面を自由記述形式で尋ねた。その結果、以下のような回答が多く寄せられた。
・上司からの理不尽な指導や否定
・非協力的な人や態度
・不平不満やネガティブな発言を聞いたこと
・お客さまからのクレーム
・失敗・ミスなど
「お客さまからのクレーム」は一定数あったが、「職場内での上司からの理不尽な指導や否定的な言動」がそれ以上に多く確認された。
企業は、気軽に相談や助言が受けられる環境づくりを
同調査に参加した関谷教授は、今後の重要なキーワードとして「コミュニケーション」を挙げる。
思い出しで抱く「気がかり」「心配」「不安」といったネガティブな感情は、未解決の仕事や対応に自信のない案件などを思い出していることが想定されるとし、このような不安や心配事は、勤務時間中に同僚・上司への相談や適切な助言が得られるといった良好なコミュニケーションの醸成により軽減される可能性があると指摘する。
同調査は、2024年9月14日から12月25日にかけて実施し、民間企業・公的機関に勤める正規・非正規社員の20〜68歳の男女253人から回答を得た。
調査の詳細は同社の公式リリースで確認できる。