【第49回静岡県高校演劇研究大会の生徒コメント、講評など】駿河総合が開校後初の関東大会出場。「笑顔を届けたい」
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は11月29~30日に三島市民文化会館で行われた2025年度静岡県高等学校総合文化祭演劇部門・第49回静岡県高校演劇研究大会で関東高校演劇研究大会出場を決めた駿河総合、星陵、浜松聖星の3校の代表生徒の声をお届けする。講師を務めたのは千田恵子さん(演出家)、鈴木裕司さん(山梨県立身延高演劇部顧問、山梨県高校文化連盟演劇専門部事務局長)、高梨辰也さん(作新学院高演劇部顧問)。(文・写真=論説委員・橋爪充)
最優秀賞の駿河総合は2013年4月の2校統合による開校後、関東大会初出場。公園に集う人々を励ます「一人応援団」の女子中学生が主人公の、伊作・作「ヒトリダケノ」を躍動感あふれる演技で表現した。主人公があえて姿を現さないラストシーンも評価が高かった。
▽主人公の愛架(あいか)役を務めた松下明奈さん(2年、部長)の話
「最優秀賞をいただけるとは思っていなかったので、驚きと喜びが半々です。キャスト、照明、音響、それぞれにミスはちょこちょこあったかもしれませんが、お客さんの反応がわっと伝わってきて。笑っていただいたり、ラストシーンで感動したといった声をいただいたりしたので、最終的には全力を出し切ったいい公演になりました。関東大会も皆さんに笑顔を届けられるよう、部員一丸となって頑張ります」
▽講師コメント
【鈴木さん】幕が上がると、とある公園となっていて、公衆トイレまできちんと丁寧に作られていた。演者がそれぞれに魅力的。パブリックスペースにいろんな人がいるんだよということを見せてくれたのも良かったと思う。主人公については、「病気なのになぜ他人を応援するのか」という点をもう少しはっきりさせてほしかった。
優秀賞5校から6年ぶりの関東への切符を手にした星陵は初日のトップバッターだった。畑澤聖悟作「アメイジング・グレイス」は鬼ケ島を舞台にした戯画的なコメディーかと思いきや、話が進むにつれて現代社会の問題点を鋭く突く内容だった。
▽舞台監督を務めた平野咲楽さん(2年、部長)の話
「初日の1番目で、喉が起きているか起きてないかの時間帯。午前5 時に起きてここに来ました。舞台の前の発声からいい緊張感でやれたので、結果的には1番目で良かったと思います。脚本選びからずっと力を注ぎ、思いを込めてきた作品です。みんなの努力が形になって良かった。関東大会は未知の世界ですが、扉を開くワクワク感があります」
▽講師コメント
【千田さん】自分たちの感情と共に発話できていた。いい意味でも悪い意味でも全体的に安定していた。小道具を使わないということを徹底しているのもいいことだと思った。せりふを発したら、その気持ちがどこまで続くのかを整理すると、さらに豊かになるように感じた。
浜松聖星は8年ぶりの関東大会出場。優秀賞5校の中から選ばれた。「パッション・ミッション・ディスカッション」は演劇部のオリジナル脚本。未来と現在のコミュニケーションの差異を問う舞台で、登場人物5人の描き分けも見事だった。
▽「ハルカ」役を務めた幡野瑛さん(2年、部長)の話
「うまくできなかったことが多い舞台でしたが、優秀賞をいただき、関東大会に行けることにもなりました。うれしいと言うより、困惑が先に来てしまっています。悔しい気持ちが残ったので、関東大会までこれを忘れないでいたい。もう 1 回チャンスをいただいたので、みんなで確認し合って、楽しくできたらと思います」
▽講師コメント
【千田さん】舞台美術について。最初は違和感を持たせつつ、話が進むうちに「こういう世界観ね」と分かってくる。生徒たちがなぜリアルな修学旅行を選ぶのかという理由がきちんと書かれているなど、台本が一生懸命頑張っていると思った。5人の芝居の温度差を合わせることをもう少し考えてほしい。
◆今後の日程
関東(南)大会
開催期間:2026年1月24、25日
会場:三島市民文化会館