Yahoo! JAPAN

鈴木拡樹・荒牧慶彦の絶大な信頼感「目が合うだけでアクションの距離感がわかる」~「バクマン。」THE STAGE製作発表会レポート

SPICE

(左から)鈴木拡樹、荒牧慶彦

「バクマン。」THE STAGEの製作発表会が2021年7月2日(金)、都内某所で行われた。本作のダブル主演となる鈴木拡樹(真城最高 役)と荒牧慶彦(高木秋人 役)、ウォーリー木下(演出・脚本)、松田 誠(プロデューサー)の4名が登壇し、舞台化の経緯や完成したキャラクタービジュアルの感想を語った。

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」の松田誠とウォーリー木下 新しい風を業界に吹き込む意気込みを語る

松田:漫画やアニメ、劇場映画などすでに高いクオリティで大成されている作品です。2.5次元の舞台化が多い中、このタイミングで「バクマン。」をやることにどういう意味があるか、舞台にする必要があるのかという自問自答をしました。今回は演劇的チャレンジをしたいなと思っており、舞台ならではの「バクマン。」をお見せしたい。ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」でご一緒させていただいたウォーリー木下さんに演出・脚本をやっていただくことになりました。演出が新しく、こんな表現の仕方があったのかと最初に観た時は驚きました。そして舞台化と言えばとても魅力的で人気があり、人としても素敵なおふたりです。荒牧くん、鈴木くんが作品を背負って舞台に立つ。ウォーリーさんが演出だから走り回ったりさせられちゃうかもよ?(笑)

荒牧:走る気でいます!

鈴木:そうなるだろうなって予想してます。

ウォーリー木下:演劇は集団創作です。僕一人ではなく、言い出した人がいて、それを相談する人がいてクリエイターが集まって、キャストが中心になって作っていきます。本作も原作は本当に面白くて、いろんな要素が詰まっています。ジャンプの王道的要素やちょっと泥臭い漫画の世界、漫画が作られるまでのハウトゥー要素、恋愛や友情、親子関係などそれを僕らが素材を壊さないように、演劇として面白いものを作れたらと思っています。

鈴木:この作品への出演の発表をしたら、想像を超える反響で驚きました。個人的にはネルケプランニングさん(※制作会社)の作品は舞台のタイトルを見ただけでワクワクさせられるなと思っており、例えば「ハイキュー!!」にも“ハイパープロジェクション演劇”とついていたり、これっていったいどういうこと!? と興味をひかれる仕掛けが多いことを記憶しています。映画などとはまた違い、生の迫力で皆様に熱い臨場感などを届けられると思います。

荒牧:僕はこの作品が本当に大好きで原作漫画は全巻持っていますし、アニメも全部見ましたし、小畑 健さんの絵が本当に大好きです。その世界観を自ら俳優として加われることにすごく誇りと喜びを持って臨みたいと思います。頼もしい仲間たちと素晴らしい演劇を作り上げていきたいです。

荒牧慶彦

鈴木拡樹


荒牧慶彦プロデューサー⁉ 舞台化のきっかけ

松田:荒牧くんとは作品のことのみならず将来のことなどいろんなことを話すんですが、その中で「バクマン。」が大好きだという話を本人がしていたんです。いつか舞台もやれたらいいねなんて。

荒牧:ただただ願望を松田さんにお話ししていたら、それ面白いじゃないかって。

松田:もし荒牧くんがやるとしても、この作品にはもうひとり相手が必要。

荒牧:理想ですけど、多分無理だと思うんですが鈴木拡樹くんがいい! とポロっと言ったんです。

鈴木:企画だけでなくキャスティングもしている!

松田:もはやプロデューサーですよ!

荒牧:やりたい作品と共演したい役者を言ったら、それを叶えてくださったという。

ーー荒牧さんが演じるのはシュージンですが、自分がサイコーを演じるとはならなかった?

荒牧:僕はあまり絵を描くのが得意ではなく、やるなら想像力や企画力というタイプの人間をやりたいと思っていたので、シュージン派でしたね。

松田:リアルな会議ではなくて、こんなことやれればいいねなんて話の中で出てきたものです。でも企画ってそういうもので、種って意外にいろんなところにあり、いつの間にか芽吹いていくこともある。そういう成功例のひとつだと思います。そして僕も、もし「バクマン。」を舞台でやれるなら新しいことやりたいなというイメージになっていきました。

ーー鈴木さん、その話を聞いたときは驚いたということで。

鈴木:そうですね。相棒役として選んでくれたことが本当に嬉しくて。荒牧くんとは何度も共演していますが、その中では同年代というキャラでタッグを組む作品はなかったのですごく楽しみです。今まで一緒にやってきた作品とはまた違った形でこうして一緒に過ごせるのは嬉しいですね。

ーーウォーリーさんはこの話を聞いたときどう思いましたか。

木下:アニメ化や映画化を見ていましたが、とてもうまくいっているので、舞台化してコケたら大変だなぁと。現実的なところが先に浮かびました。

ーー演出が気になると思いますが、今考えている演出ポイントは。

木下:生身の俳優さんがそこで“今”演じているという点が演劇のいくつかある魅力のひとつだと思います。漫画や小説、映画だとひとつフィルターがかかっている状態なので、なかなか身体性というものは伝わらない。昨今されるようになったオンラインでの会議もそうですが、実際に会うと会わないではやはり違うということもよく言われますし、身体って気付かないうちにいろいろな情報を発している。そういうものが演劇の大きなトピックであり、それを大きく生かしたものにしたい。

もちろん作品的には漫画を描いたり構成を考えたりという行為が主軸になります。でもただ舞台で漫画を描くだけではお客さんには伝わらない。その行為を何か別なものに置き換えながら、でも漫画を描くことの何かとして伝わるような……。「バクマン。」という世界をこう表現するんだって直観的にわかる仕組みにしようと考えています。絶対誰も想像していないことだと思います!

ウォーリー木下(演出・脚本) 

松田 誠(プロデューサー)

作曲家、振付師、演出、造形、イラストレーター……キャストは芸術家ぞろい!

「バクマン。」THE STAGE プロモーション映像

舞台化決定のPVでは、サイコーとシュージンが着用しているのは原作にもない白い生地に黒の線が入った衣裳。これについて荒牧は「この服の意図――漫画のコマや吹き出しのデザインの意図を聞いて、なるほどなと。そこからこのPVや舞台を作るスタッフさんの熱意を感じました」と、鈴木は「あえて抽象的にしているところが、アナログ的というか。舞台の魅力というものを表現しているのかなと思いましたね」と話した。また製作発表会同日に公開されたキャストのビジュアルを見ての感想もひとりずつ聞かれた。

なおキャラクタービジュアルについては、別記事にて掲載中(https://spice.eplus.jp/articles/289508)。

■真城最高役・鈴木拡樹

松田:待ってましたって感じです。

鈴木:ほかのパターンの服も作中では着ていますが、彼と言えば一番最初に浮かぶのがこの服ですね。

■高木秋人役・荒牧慶彦

荒牧:生意気そうですね。あまり舞台上で眼鏡をかけたキャラクターをやったことがないので新鮮です。眼鏡やヘッドホンなど小物はいろんな表現方法ができたりするんで、そういうのを生かして役作りしていきたいと思います。

■新妻エイジ役・橋本祥平

荒牧:もうそっくりですよね。彼にこういう役をやらせたらピカイチだなと。楽屋での祥平はいつもこんな感じではしゃいでいるので。

鈴木:想像できますよね~。結構動くステージだって言ってましたが、彼が一番動きますね。

木下:祥平くん、動かそうと思ってます。

■福田真太役・オレノグラフティ

松田:劇団鹿殺しという小劇場出身のゴリゴリの演劇人です。とてもシャープなお芝居をされる方です。

鈴木:ビジュアルを見て、すごく納得感がありました。

松田:この写真一枚で、圧みたいなものが見えますね。

■平丸一也役・福澤 侑

荒牧:独特な雰囲気を再現されてますね。

鈴木:難しいだろうな、でも誰かハマリ役の人がいるだろうなと思っていました。こうして実際に写真で見るとびっくりしますね。

■中井巧朗役・村上大樹

松田:まんまですね。村上さんは普段お芝居の演出をされるクリエイターさんです。

木下:村上さんは役者としても素晴らしいので、頼らせていただこうと思ってるくらいです。

■佐々木 尚役・唐橋 充

鈴木:唐橋さんは一言で言うと、「とても変わった方」です。いろいろ不思議なのでどんどん知りたくなる先輩。昔からいろんなことを何気なく言ってくれるんですが、それがすごくためになることが多くて。唐橋さんの言葉は聞き逃しちゃだめだなっていつもアンテナ張ってますね。イラストも描かれる方です。

荒牧:僕はまだがっつりお芝居でご一緒したことはないんですが、不思議な方だなっていう印象ですね。すごく低姿勢で、尊敬できる方だなと思っています。

■服部 哲役・長谷川朝晴

松田:僕やウォーリーさんの世代だとジョビジョバ(演劇ユニット)のメンバーで。演劇界では彗星のように現れて、すごく新しい時代を作った方々ですね。長谷川さんとやれるのはすごく嬉しいです。

木下:僕も初めてです。昔から舞台を見させていただいていたので、緊張しますね……!

■川口たろう役・片桐 仁

鈴木:片桐さんも芸術家ですよね。一度共演した時も楽屋で作っている姿を見てます。すごい「職人さん」ですね。

松田:僕全然気づいてなかったけど、キャストさんたち芸術家が集まってる! オレノグラフティさんは作曲、福澤くんは振付、片桐さんが造形、村上さんは演出。みんなクリエイティブ! そんなところも「バクマン。」らしいね!


舞台化をやってくれるなっていう気持ちもわからなくはないです

当日はメディア媒体の記者のみならず、アニメや舞台に関係ある専門学生や劇団の研究員という「バクマン。」の登場人物たちのような夢ある若者が招待され、登壇者に質問を投げかける場面もあった。

ーーウォーリーさんに伺います。漫画原作の作品で舞台化の上で一番気を使うことは。

木下:絵やコマ割り、トーンや集中線などの効果など漫画家さんそれぞれの絵のタッチや文体があって、それをできるだけ尊重したい。僕が漫画を読んで作家さんの意図を自分なりに解釈して、演劇にするのはどうしたらいいんだろうっていうことを考えることが一番ですね。

ーー荒牧さん、鈴木さんへの質問です。役作りで一番大切なことは。

荒牧:アニメ、ゲーム、漫画がすごく大好きなので、ファン目線というか作り手側ではない意識を持っています。観ている方の気持ちを一番意識して作ります。役者としてもそうですが、観ている方が一番気持ちいい間やトーン、そういうものを稽古動画など撮っていただいて見返して直すなど、そういったものを大切にしています。

鈴木:2.5次元では原作ファンの方が観に来られることが多いので、期待を裏切らないっていうことが大前提にあります。その漫画の意図を読んで反映させないと、伝えたかった気持ちをお客様に伝えるのは難しいので、僕は「読むこと」が一番大事だなと思っています。カメラ割りやセリフのテンポ、原作を読みこんで再現しています。距離感や世界は絵に描いているものと全く同じっていうわけにはいかないので、どういう風に折り合いをつけていくのかっていうのが舞台の独自性なのかなと。
普通に新しく書き下ろした台本でやるよりも、情報量が多いので答えが決まりがちです。そこを飛び越えられる瞬間を見つけられるとさらに嬉しいので、そういうところを気にして役作りに励んでいます。

ーー2.5次元にあまり馴染みのない原作ファンはどういうところに注目してみればいいのかを教えてください。

松田:カンパニーが「原作」をお預かりしていると思っています。究極で言えば漫画家さんが描いた「お子さん」を預かっているくらいの気持ちで、大切に育てなきゃといつも思っています。公演の楽屋も、そしてさっき僕らの控室にも原作が置いてあります。稽古場にも全巻揃っていたり、みんな迷うと原作に立ち返るくらいで、正解は原作にあります。ファン心理としてはどうやってやるんだろうっていう不安もあると思います。なんならやってくれるなっていう気持ちもわからなくはないです。変なことしないでね、って思った気持ちをひっくり返さなければなりませんが、原作者の先生がどういうことを考えて何を伝えたいのかをちゃんと我々が捉えて理解する。作品の本質的なところをつかむっていうことがかなり重要なポイントではないかと思います。

荒牧:その作品自体にすばらしい魅力が込められているので、それをうまく表現したいです。この「バクマン。」という作品を知らない方が観に来られても、原作に興味を持っていただけて、漫画を購入するなど作品への興味につながることが一番だと思っています。

鈴木:原作ファンの方には、実写化した以上はやはり楽しんでもらいたいです。「楽しむ」というのは、そのままやることなのか、それとも舞台というアイディアにしたらこんなに楽しめるものなんだっていう発見を持ってもらうのか。無理やり裏切りたいわけでもないんです。世界観を大切にした中で演劇的な要素を入れるとこんな化学反応が起きるんだっていうことを楽しんでもらいたいです。漫画でもアニメでも映画でも見たことがない「バクマン。」を届けられたら、2.5次元を観たことがない人でも「おっ!」と思ってもらえるんじゃないかと思っています。

(左から)鈴木拡樹、荒牧慶彦


目が合うだけでその日の殺陣の距離感がわかる、鈴木・荒牧の絶大な信頼感

ーー荒牧さんへ伺います。相棒に鈴木さんを指名したとおっしゃっていましたが、その理由は。

荒牧:僕が指名というか、願望で鈴木拡樹くんが相棒だったらすごく素敵だなって思ったのは、「鈴木拡樹という役者が僕の中で最も尊敬すべき役者の一人である」ということが第一にありました。そして拡樹くんと「相棒」という間柄で芝居をしてみたいという役者としての気持ち、このふたつがあって拡樹くんがいいなという相談をさせていただきました。

ーーウォーリーさんに伺います。主演の二人にどういう印象があるか、今回作品作りを一緒にすることでどういうところを楽しみにしているかを教えてください。

木下:僕は初めてふたりとご一緒するのですが、お二人の活躍は見ていて素晴らしいなと思っています。こういうペアでやることは初めてということも聞いたので、今の彼らの最大限の魅力が出るといいなっていうことは考えて作りたいです。

ーー荒牧さん、鈴木さん。これまでの経験を通して、おふたりが共演することで生まれる化学反応があれば教えてください。

荒牧:以前共演した作品で、拡樹くんと殺陣をする機会がありました。殺陣は呼吸をあわせないとうまくいかない、ひとつ間違えたら大怪我につながってしまう部分もありますが、拡樹くんとはそういう打ち合わせを何もしてなくても、互いの目や体の動かし方でその日の殺陣のスピードが変わったこととか、距離感とかそういった部分がわかる、心の底から信頼できる役者さんだなって思えるのが、自分の中では化学反応だなと思いますね。

鈴木:目が合ってるだけだけど、これはいける! ってのは確実にわかるよね。そういう言葉のないコミュニケーションはすごくあります。

また「バクマン。」の、ふたりで物語を分けて作るという作業はとても舞台の座組づくりに似ているなと思いました。例えば僕は後輩に対してすごく強く言えないタイプですが、それを上手く言えるタイプの人に信頼して任せることによって後輩が上手く導かれるのを見ていますし、そのようにキャストやスタッフがそれぞれに埋めてくれるピースがあります。それらが全部集まって作品になるなって感じています。

ーー松田さん、木下さん。2.5次元という文化も漫画と演劇の相乗効果で新しい開拓をしているジャンルですが、この作品で目指したい相乗効果があれば教えてください。

松田:これはチャレンジだと思っています。歴史がある、成功している作品を舞台化するっていうのはかなりハードルが高いのですが、さらにより演劇的なことにチャレンジしたいなと思っています。演劇で表現することによってこういう新しいものが生まれるんだよと。もう気合です!

木下:僕としては今まで漫画と演劇のかけあわせでいろんな作品が生まれて、関わらせてもらいましたが、今回の「バクマン。」は直観的に楽しめるものを目指しています。原作を知らなくても、演劇を見たことすらなくても、言葉がわからない人でも、さらには子供でも、とにかくワクワクするものを作ればと思います。

鈴木拡樹

荒牧慶彦

最後に、「夢に向かうことは素晴らしいことなんだ、こんなに熱い気持ちにさせてくれるんだっていう気持ちを僕ら自身も持って、観に来てくれた方々にもそう感じてもらえるように作品作りをしたいと思います。」と言う荒牧、そして「こういう話をしているとすぐに稽古をしたい気持ちになってきます。お客様が入って初めて舞台は完成するという言葉があります。お客様のピースも加えさせてもらって、作品を完成させたいと思います」と鈴木がそれぞれ締めくくった。

木下や松田の「新しいものを作ろう」という熱量、そして鈴木と荒牧の絶対的な信頼感を感じ取れる製作発表会だった。

「バクマン。」THE STAGEは2021年10月8日(金)より東京、大阪にて公演予定。

(左から)ウォーリー木下、鈴木拡樹、荒牧慶彦、松田 誠

取材・文・撮影=松本裕美

【関連記事】

おすすめの記事