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パリ五輪「絶対に出る」 セーリング競技・新嶋莉奈さん(鎌倉市在住)〈鎌倉市〉

タウンニュース

国内トップ選手に成長した新嶋さん(本人提供)

今夏に開催される「パリ五輪」を目指すアスリートがいる。大町在住の新嶋莉奈さん(エリエール所属)、24歳。元プロ選手であり、材木座のスクール「セブンシーズ」を主宰する父の影響でウインドサーフィンを4歳から始めた。それから20年、国内トップの選手にまで成長し、半年後に迫った大舞台の出場権獲得に挑む。

新嶋さんが五輪出場を狙うのは、セーリング競技の中のウインドサーフィン種目「iQフォイル級」。ボードの底に取り付けられた水中翼により、走行時にはボードが浮き上がりスピードが増す。2021年の東京五輪で実施された「RSX級」に替わる新種目だ。

五輪での種目変更に、新嶋さんは適応した。「これまでのRSXとはまったく違う乗り物」と評すも、自らの地位を上げていく。東京五輪の日本代表選考において種目別で5番手の選手だったが、五輪後の21年11月に開催された全日本選手権で優勝を飾る。

22年春に大学を卒業し、大王製紙(株)のエリエール所属選手としてプロ契約。競技に専念できる環境になったことで、勢いはさらに増した。

昨年23年は、4月にスペインで行われた大会で日本人1位、フランスでの国際試合「フレンチオリンピックウィーク」では銀メダルを獲得した。50年以上の歴史ある同大会のiQフォイル級で、日本人が表彰台に登ったのは初。「強い選手が一部いなかったのもあるけれど、勝負強さを感じられた」(新嶋さん)

日本の1番手に躍り出し、そのまま順調に行けば五輪切符も射程圏内。そう思えるような結果が続いた矢先の昨年7月、新嶋さんの身体を異変が襲った。

“人生最悪の1カ月”で成長

7月、五輪と同じ会場の「パリ2024テストイベント」に出場すべく、新嶋さんはフランスへ。空港へ到着すると発熱。その後も、「気持ち悪くなって吐いたり、ごはんがずっと食べられなかったり。現地でのレースには出続けたので、疲労は溜まるばかり」。

鎌倉へ帰っても、食欲は戻らず。そして異変はピークに達する。「夜になって、何でかわからないけれど体がめちゃくちゃ震え出して、けいれんして」。夜中に病院へ駆け込んだ。糖尿病の一歩手前だった。

原因は、この3年間続けてきた増量。東京五輪のRSX級は適正体重が58kgなのに対し、パリのiQフォイル級は70kgとされる。水中翼による浮力を体重で抑え、前に進む力へと変えていく。もともと53〜54kgだった新嶋さんは食事量を増やし、ケーキなど甘い物も積極的に摂取。一時65kgまで増えたものの、体が悲鳴をあげてしまった。

7月中旬から1カ月間、練習休止。「外をちょっと散歩しただけで、今日は歩けたと喜ぶレベル。競技をやめたいではなく、続けられないかもとさえ思った」。寝ることが大好きだが、眠れない日々が続いた。

新嶋さんにとって昨夏は、「人生で1番辛い1カ月だった」。ただ、成長も垣間見えた。家にこもって自分と向き合い、乱れそうな心を整える。「何も得なかったわけではない。いい経験だった」と笑って話せるまでに回復した。

まもなく最終局面

8月下旬に復帰し、これまでの食事による増量から、ウエイトトレーニングでの筋肉増に重きを変えた。10月以降は沖縄合宿、スペイン遠征を消化。現在の体重は56kgと適正には遠いが、「前にはなかった体のキレが出てきた。少し先が見えたかな」。

五輪へは2つの条件を満たさなければならない。国として出場枠を得ること、そして日本代表の1枠を勝ち取ること。2月の世界選手権(スペイン)、4月のラストチャンスレガッタ(フランス)の結果次第だ。

海外勢の躍進、国内でも若手の成長が耳に届く。「やってみなければ本当にわからない」という五輪選考レース。追われる立場から追う立場に戻り、遠い未来のことを考えている暇はない。頭にあるのはひとつだけ。

「絶対にパリ五輪に出る」-。

苦しい時期を振り返る新嶋さん=昨年11月

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