超一級釣りフィールドに移住して気づいた【釣り場で当たり前になってしまっている非常識】
近年、釣り人のマナーが問題となり釣り禁止になる場所が後を絶たない。和歌山県南部も例に漏れず、このままでは人生をかけて移住したのに釣りをする場所がなくなりそうで不安だ。第6回となる今回は、移住してから感じた地方の釣り場の現状と、釣り場を失くさないためにできることを考えていく。
移住して気づく釣り場マナー問題
釣りのメッカである和歌山県南部では、ジャンル問わず様々な釣りが楽しめ、記録級の大物も度々飛び出す。週末になると他府県からも多くの釣り人が夢を求めて訪れる。そんな和歌山県南部に移住して感じたのが、釣り人のマナー意識の低さだった。マナーを守らない釣り人たちを見て、地元になった私が何を思い、どう感じたのかを綴っていく。
自身も元遠征組
はじめに、私自身も移住して数ヶ月の元遠征組である。愛知県在住時には和歌山県南部に限らず、様々な地方へ遠征していたが、その際に意識していたのはルールとマナーを守ること、そして挨拶を含めた地元の方とのコミュニケーションだった。
「釣りをさせてもらう」という気持ちは常に意識していた。今までは当たり前と思っていたが、あまりにも意識していない釣り人が多く、少し驚いている。
駐車の問題
漁港は漁業関係者の職場だ。釣りをさせてもらっているという認識を持ってほしい。駐車場所には注意を払い、地元の方が釣りをしていれば駐車可能な場所を聞くと良い。経験上、遠征の際に最も苦労するのが駐車場所の確認である。
わからないからといって疎かにしてはいけない。駐車禁止と書かれた場所に停めるのは論外だ。路上駐車も良くない。駐車スペースがいっぱいなら、別の釣り場へ行くようにしよう。
先日、磯が隣接する国道で、カーブを曲がった先に、路肩からはみ出しそうな場所に釣り人と思われる車が停まっていた。もし一般車と事故でも起きたらどうなるのか、よく考えてほしい。
立入禁止区域への侵入問題
和歌山県など外洋に面した漁港では、過去の事故を受けて危険な場所には柵が設置されている。立入禁止と書かれていない場所もあるが、常識的に考えれば入ってはいけないと判断できるはずだ。
ある漁港を訪れた際、数人のグループが柵の中に入り釣りをしていた。地元の人に聞くと、注意をしたにもかかわらず無視して侵入していったとのことだった。車は私の地元と同じナンバー。同郷として恥ずかしい限りだった。
この漁港に限らず、和歌山県では釣り人を思って本当に危険な場所にのみ柵を設置し、それ以外の場所は釣り人に解放されているケースが多い。にもかかわらず立入禁止区域に入り、釣りをして事故が起きれば、漁港を管理する人たちは何を思うか。入口を封鎖し、全面立入禁止にされても文句は言えないだろう。
ゴミの問題
毎週末になると、釣り場のあちこちにゴミが落ちている。値札を見ると、たいてい都市部にある釣具店のものだ。ゴミを捨てる人は論外だが、ある風の強い日、ファミリーで釣りをしていた方が風で袋を飛ばされたのを見て見ぬふりしていた。
私が回収して「飛んできましたよ」と渡すと「すいません」と持ち帰ってくれたが、人間誰しも“めんどくさい”と思うことはある。だが、飛ばされたゴミは可能な限り回収すべきだ。
それら釣り人が出したゴミを片付けているのは、釣り場を守りたい地元の釣り人たちである。都市部から来る釣り人を嫌う人が多いのは、このためではないかと実感している。
また、釣り場の空き地でキャンプやバーベキューをするのも考えものだ。法律で禁止されていなくとも、夜間の騒音や焚き火のゴミ放置など、地元の人にとっては迷惑行為となる。キャンプは近隣のキャンプ場を利用してほしい。ちなみに田舎では夜9時を過ぎれば「深夜」である。釣り場での騒音にも気をつけてほしい。
コミュニケーションの問題
釣り場に着いたら、釣りを始める前に先行者に挨拶をしてほしい。都市部から来るほとんどの人が挨拶をしないのが不思議である。前回の記事で紹介した、青物ラッシュに沸く釣り場でのこと。週末に混雑しているのを見て、車から降りずにそのまま引き返す人が多かった。
もちろん、人混みが苦手な人はそれでも構わない。しかし、挨拶をすれば地元の人は快く入れてくれた。実際、車から降りて挨拶をした数人だけが青物ラッシュを体験し、笑顔で帰っていった。
挨拶をきっかけに、お互いが気持ち良く釣りができるように意識すれば、おのずと釣果も上がってくる。また、民家に近い釣り場では釣り人以外の人にも挨拶を心がけてほしい。
田舎では通りすがりに挨拶するのが当たり前である。犬の散歩やウォーキング中の人にも声をかけることで、“釣り人”の印象を良くしていくことが、釣り場を守るという意味でも大事だと思う。
これ以上釣り場を失くさないために
釣り場を減らさないように釣り人が意識すべきことを以下にまとめてみた。
1.マナーを守る
当たり前だが、駐車・ゴミ・騒音の問題、立入禁止区域への侵入などは絶対にしないこと。
2.次のステップとしてマナー向上活動
「ゴミは持ち帰る」から「ゴミを拾って帰る」へ。マナーを知らない(または意識が緩い)人を見かけたときは、勇気を出して注意する。具体的には、駐車場所が適切でないとき、立入禁止と知らずに入ろうとしているとき、ゴミを落としたり飛ばされたままにしているときなどは、声をかけて注意を促す。
ただし、トラブルにならないよう注意が必要だ。逆上され、釣り人同士のトラブルが原因で釣り禁止になってしまっては本末転倒である。落ち着いて、冷静に対処しよう。
釣り場の公開について
移住してから地元の釣り人に言われたことがある。それは「むやみに釣り場を教えないこと」「SNSに釣り場をアップしないこと」「写真の背景に注意すること」。すなわち、情報を広めるなということだ。
上述したような状況を考えれば、情報を見て多くの釣り人が押し寄せれば問題が起きるのは目に見えている。「そこまでする必要があるか?」と思っていたが、移住して数ヶ月でこの言葉には納得している。
なお、釣り場公開の是非については語ると長くなるので割愛するが、あくまでライターとして中立の立場でいたいと思っている。しかし本心を言えば、前回の移住記事で紹介したショアからのブリについて、リアルタイムで釣行記を書き、多くの人に釣って楽しんでもらいたかった。
だが、上述したような状況を考えれば、もし私の記事を見て多くの釣り人が訪れたことで問題が起き、釣り禁止になったら……。身近な釣り場を失うだけでなく、「場所を公開した人」として責任を問われる可能性もある。そう考えると、公開には踏み切れなかった。
釣り人の行動と釣り場の未来
移住して地元になって感じたこととして、この情報社会の時代でも表に出ない情報は少なからずあり、信じがたい釣果の話を聞いたり、実際に目にすることもある。もちろんそれらの情報は出せないが、釣り人全員がマナーを守り、広い心でゆとりを持って釣りを楽しめるようになれば、いつかそんな釣行記を書いて紹介したいと思っている。
あなたの行動が釣り場の未来を変えていく。釣り人のマナー向上活動、みんなで進めていければと思う。
<稲垣順也/TSURINEWSライター>