あまりに満を持しすぎているカルビー「ポテトチップス」サラダ味が新発売されたので、「じゃがりこ」と比較してみた / ブランド50周年の重み
例えるなら、数多の古傷を帯びた歴戦の猛者が、パリパリの折り目のついたスーツを着て、新人たちに混じって入社式に出席しているような、そんな光景だった。
コンビニの菓子コーナーにて、いかにも同類という顔をして新商品と一緒に並ぶカルビーの「ポテトチップス」サラダ味を見て、筆者は思わず失笑してしまった。「いやいや、古株のあなたの席はそこではないだろう」と、何らかの手違いを想像して意地悪く面白がった。
が、直後に強烈な違和感に襲われ、思い直した。「ポテトチップス」のサラダ味というのは、今まで販売されていたか。同社の「じゃがりこ」サラダ味があまりに馴染み深すぎるため、これも古株だろうと勝手に決めつけていたが──もしも本当に、新商品なのだとしたら。
失笑を浮かべていた口元を手で覆い、もう一方の手でスマホを操作する。検索の結果、ものの数秒で新商品であることが判明した。
カルビーの「ポテトチップス」サラダ味は、このたび2025年8月4日より全国のコンビニで先行発売された。追って25日にコンビニ以外の店舗からも発売される予定で、前者の内容量は68グラム、後者は53グラムとのことだ。
ここで付け加えておかねばならないのが、カルビーの「ポテトチップス」ブランドが、同年9月に50周年を迎える点である。50年の時を経て、その節目についにサラダ味が発売されたというわけだ。
筆者は震えた。いくら何でも、あまりに満を持しすぎではないか。定番中の定番のフレーバーを、今の今までよく取って置けたものである。もし筆者がカルビーの開発部にいたら、「そろそろ売り出しちゃいましょうよ」などと余計な口を叩いて最低でも5回は叱られたに違いない。
震えたと同時に、長年に渡って満を持しおおせたこの商品の味が急速に気になりだした。気が付けば筆者はそれを手に取り、税込168円を支払っていた。ついでに「じゃがりこ」サラダ味も比較のために購入した。
まずは「ポテトチップス」の方を開封し、口にする。先に結論を正直に書くと、定番のフレーバーであるだけに大きく目を見張るような仕上がりではなかったが、しかし静かに感心するような驚きはあった。そしてその驚きは、「じゃがりこ」との比較によってもたらされた。
野菜のテイストを前面に押し出している「じゃがりこ」を食べてから振り返ると、「ポテトチップス」は塩味のあとに野菜の旨味がにじむような味わいだったのである。あっさりと素朴な「じゃがりこ」に対し、「ポテトチップス」は軽い後味ながら濃厚であると言い換えてもよい。
まさしく好対照だ。元より優劣がつけられるとは思っていなかったが、両者のあいだでこのような、人によって好みが分かれそうほどの差異が見られるとも思っていなかった。同じサラダ味でこうも幅を持たせる技が成り立つのは、カルビーの手腕によるところが大きかろう。
ただ惜しい部分を挙げるとするなら、前述した通り、この「ポテトチップス」サラダ味単体で見た場合にインパクトに欠けることは否めない。それでも、50年のあいだ積もりに積もったノウハウが、決して食べる者を失望させることはない。
筆者とて、この商品の前で失笑したことを恥じはすれど、後悔などしていない。あそこで足を止めていなければ、この実りある体験も得られなかったのだ。
当記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひとも本商品を手に取り、筆者と同じく体験してほしい。カルビーが満を持して披露する新境地を。「新鮮でいて円熟したサラダ味」を。
参考リンク:カルビー 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.