大切だからこそすれ違うニックとジュディ。「そこにはふたりの世界しかない」――『ズートピア2』日本版声優ニック役・森川智之さんインタビュー
2025年、約9年ぶりの続編として公開された『ズートピア2』。今作では、新たなキャラクターの活躍や「ズートピア」の成り立ちに迫る大きな物語を描きつつ、ニックとジュディの関係性の変化も丁寧に描かれました。
2026年5月20日には、大ヒットとなった今作のブルーレイ・DVDが発売決定! アニメイトタイムズでは、ニック役・森川智之さんインタビューを行いました。
新キャラクター、ヘビのゲイリーの登場によって広がる物語の魅力や、現代社会とも重なるストーリー、ニックとジュディの距離感について伺いました。また、森川さんが「一番時間をかけた」と言う、ふたりの本音が明かされたあの名シーンのアフレコ秘話も。
本編をじっくり鑑賞しながら、本稿もあわせてお楽しみください!
【写真】『ズートピア2』森川智之が語るニックとジュディ、ふたりの世界【インタビュー】
多層的に動物たちの世界を描いた『ズートピア2』
──今作は前作の公開から約9年越しの続編となりました。9年ぶりのファンの皆さんの熱量はいかがでしたか?
日本版声優ニック役・森川智之さん(以下、森川):舞台挨拶も含めて、皆さんのお顔も見させていただきましたし、実は観客として観に行ったこともあるんです。
ありがたいことに劇場は満員で、これだけ多くの人に応援されているんだなと実感しました。時間は経ちましたけど、こうして続編が実現したのは、応援してくれた皆さんのおかげだと思っています。
──皆さんと一緒に映画館でもご覧になったんですね。
森川:皆さんに感謝しながら、いちファンとして、純粋に今作を楽しむことができました。上映後に劇場を出るとき、周りの方々が作品の話をしながら帰っていくんですよね。「また観たい」とかって、すごく盛り上がっていて。そうやって帰っていく皆さんを見ながら、一緒に劇場を後にするのは感無量でした。
──ニックやジュディも長く愛されていますね。
森川:もう皆さん気になって仕方がなかったんじゃないでしょうか。一体、このふたりはどうなっていくんだって(笑)。
──魅力的な新キャラクターも多数登場しましたが、森川さんが印象的だったキャラクターを教えてください。
森川:やはりゲイリー(CV:下野紘)ですね。前作を振り返ってみると、そう言えば、爬虫類って登場していなかったな」と。動物たちの世界でありながら、なぜ彼らが登場しないのか。そういう謎と「ズートピア」誕生の秘密が絡んできます。
一方で、ニックとジュディの関係性も丁寧に描かれていく。この物語は凄く多層的で、気になる部分が沢山あって面白いです。多様な動物が生きているからこそ、どんどん物語が膨らんでいくんだろうなと思います。
──ズートピアの秘密、ニックとジュディの関係。スケールの違うお話を同時に進行していく構成も印象的でした。
森川:オオヤマネコのパウバートや、彼の一族であるリンクスリー家も。現代社会と重なるようなところも出てきますね。動物たちの楽園にも、複雑な問題がある。お互いに尊重しあって成り立っている世界でも、色々あるわけですよね。
──私たちの世界の歴史を想起させるような部分もありました。
森川:それでも、前に進んでいくキャラクターたちの姿が素晴らしかったです。ただ、可愛らしい動物たちが仲良く暮らすだけではない。それこそが『ズートピア』の面白さだと改めて感じました。
ゲイリー含め、爬虫類たちの悲哀というか、影で生きる部分。これまでの『ズートピア』って、明るい話という印象があったと思うんですけど、そこから閉じ込められて、外に追いやられてしまっている存在がいる。そういう人たちをどう助けていくかというストーリーは、素直にいいなと思いましたね。
──ゲイリーは、背負っているものに対して、すごく元気で明るかったです。
森川:純粋なんですよね。子どもっぽいところもあって。でも純粋だからこそ、自分たちの種を信じることができている。彼からしたら、この世界に飛び込んでくるって、相当な覚悟があったと思うんです。
見方によっては、反逆のようにも捉えられるし、「ズートピアを壊しに来たんじゃないか」というくらい恐れられている存在でもある。ウィンドダンサー市長も声が裏返るくらい驚いていましたし(笑)。本当によくできた映画だと思いました。
実はニックの方がジュディを意識している
──今回のニックは本音を言いづらそうにしているというか、距離を測りかねているように見えました。今作のニックの気持ちや言動について、どのように捉えていましたか。
森川:前作では、2人がお互いの気持ちを分かり合って、認め合えるところまでいったと思います。ラストシーンでは、ニックがファンの皆さんを痺れさせるようなことを言いましたよね(笑)。
でも、そこから今回まで、劇中ではそんなに時間が経っていない。なので、お互いの距離感も、更に近づいたというよりは、まだ本音を出しきれていない状態です。
ジュディはジュディで、気持ちを先行させて「私たちは完璧なバディなんだ」と、それを証明しようとして頑張っている。「世の中を正しく導いていこう!」という意識が強い。
──前作に増して張り切っていました。
森川:一方のニックは警察官になりたいというより、「自分を変えてくれたジュディのそばにいることが、自分にとっての幸せなんだ」というところがある。でも、それをなかなか言えない。
そういう意味で、今作には「やっと本音を言えたのかな」というシーンもあって。最終的にすごくいい距離感に収まっているんじゃないかなと感じました。
──本音を隠しつつ、余裕も見せるニックですが、演じる際に意識された点はありましたか。
森川:前作と変わらないと言えば変わらないかもしれません。前作では詐欺師でしたけど、今回は捜査官として、彼の持っている才能をフルに活用していくような感覚です。
ジュディとの関係性で言えば、ニックの方が少しドキドキしているのが伝わるかなと思います。ジュディの方が踏み込んでくるというか、家にも来ちゃうじゃないですか(笑)。
──部屋の汚さに呆れたり(笑)。
森川:ニックとしては「嘘だろ!」という感じで。たぶん内心は相当ドキドキしていると思うんですよ。尻尾で自分の部屋を隠したりする描写もありますしね。
「そこにはふたりの世界しかない」
──アフレコはどのように進められたのでしょうか。
森川:一緒には録っていないんですが、並行して進めていました。今日は僕、明日は彩ちゃん(上戸彩さん)みたいな形で、お互いの声を聞きながら収録できたんです。別々ではありましたけど、一緒にやっているような感覚でした。
──お芝居の中で、上戸さんから影響を受けた部分はありますか?
森川:彼女のジュディの声を久しぶりに聞いたときに、「わっ! ”ニンジン”だ!」と思ったんです。全く変わっていないですし、すごくノリノリなジュディを完璧に演じていて。それがすごく嬉しかったと同時に、ちょっとびっくりもしました。最初から全開だったので、「こっちも頑張ります!」という気持ちになりましたね。
──そうやって今回のニックとジュディの関係が形作られていったんですね。終盤の互いに隠していた本音を吐露するシーンは、特に印象的でした。
森川:そうですね。台本を読んで、映像を見たときに、「ここが一番の肝だな」と思いました。アクションシーンだったり、パウバートとの対決のシーンだったり、様々な見どころはあるんですけど、あのシーンが成立しないと、全てが薄く見えてしまうかもしれないという思いがあって。
──あのシーンに向けての積み重ねがありましたよね。
森川:はっきり言って、一番時間をかけたシーンです。それは僕だけでなくて音響監督も凄くこだわっていて。容赦ないダメ出しをたくさん貰いましたよ(笑)。
──細かいディレクションがあったのですか?
森川:というよりも、普通だったらOKを貰えそうなところを「もう一回やろう」「もっとできるかもしれない」と。そういう形で、何度もトライしていました。
──精度を高めていくような感覚でしょうか。
森川:そうですね。やった分だけ精度が上がるという感じです。とは言え、やりすぎてもダメなんですけど、一番いい塩梅を探していくというか。そこに近づけていく作業でした。
──その中で、最終的に目指していたゴールはどのようなものだったのでしょうか。
森川:今まで隠していたものを吐露することによって、2人が「互いになくてはならない存在なんだ」と伝わること。そういう意味では、肩の力が抜けているというか、素のふたりになれることが1番のゴールだったのかなと思います。
──なるほど。ドラマチックなシーンですが、ふたりはどこかフラットな感じと言いますか。
森川:そうですね、劇場や舞台のような観客に魅せる芝居というよりも、「そこにはふたりの世界しかない」という感覚です。そういう演じ方のほうがいいと思って演じていましたし、彩ちゃんもそんな感覚だったと思います。ゲイリーも空気を読んで外したりしてましたね(笑)。
──その後、ニブルスにツッコまれたり。
森川:よく覚えてらっしゃいますね(笑)。そのゲイリーが気を遣ってくれるシーンから、4人でパウバートを追いかけるシーンは本当に良かったです。ニックが「ジュディとニック?」と問いかけたら、ジュディは「ニックとジュディ!」と返すのもまたニクいなと。
──シリアスがあって、コメディがあって、ふたりの世界がある。観ている側は気持ち良いですが、演じる森川さんたちは切り替えが大変そうです。
森川:作品がそうなっているので、やらざるを得ないんですよ(笑)。やはりあっという間の108分です。無駄なシーンが存在しなくて、ずっと楽しめる作品になっていると思います。あと、色々な作品のオマージュもたっぷりで。僕は、パウバートのシーンがお気に入りですね。『シャイニング』が大好きなので(笑)。
どこでも、誰でも、何度でも楽しめる!
──前作もそうでしたが、『ズートピア』シリーズではラストシーンやエンドロールの後もお楽しみがありますね。森川さんが、今後見てみたい作品の展開はありますか?
森川:「空」とだけ言っておきましょうか?(笑) 「ズートピア」の上空はまだ見たことがないです。ベルウェザー副市長を追いかけて、空港のような場所に行っていましたよね。これまで車や鉄道などは出てきましたが、飛行機が描かれているのは初めてのような気もします。なので、空に興味があります!
──ありがとうございます。最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします。
森川:劇場で楽しんでくれた方はもちろんですが、足を運べなかった方はブルーレイ等を手に取ってみてください。好きなシーンを繰り返し見ることができますし、劇場で見逃していた部分も楽しめます。細かいところを詳しく見てみるのも、楽しみ方のひとつですからね。
僕自身、何度でも観たいと思いますし、前作と併せて『ズートピア』シリーズをゆっくりと鑑賞するのが、しばらくの楽しみになりそうです。もし次に繋がるのであれば、いろんな妄想を膨らませつつ、ずっと待っていたいなと思っています。
[インタビュー/タイラ 撮影/胃の上心臓]