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「クジラのうでもの」は鯨の内蔵料理のこと 部位によっては食べる人を選ぶものも?

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クジラの刺身(提供:PhotoAC)

日本でもっともクジラを食べる地域のひとつである南紀には、非常に独特なクジラ料理があります。

南紀のクジラ食文化

世界的にも知名度が高い日本のクジラ食文化。かつてと比べると現在はクジラ消費量がかなり減少してはいるものの、いまでも全国各地にクジラを食べる地域が残ります。

そのなかでももっとも有名な地域が和歌山県南東部から三重県南部、いわゆる南紀地方です。ここには現在でも捕鯨が盛んな太地町があり、クジラの水揚げが多いとともに、全国への流通拠点となっています。

クジラの刺身(提供:PhotoAC)

黒潮が直接当たる南紀では古くから捕鯨が行われており、江戸時代にはすでに組織的な大規模捕鯨が行われてきました。そのためクジラ食文化が発達しており、今でも様々なクジラ料理を食べることができます。

クジラは捨てるところがない

クジラは大きい生き物であるため、1頭捕獲すれば大量の肉を得ることができます。しかし、クジラという生き物の資源上の価値は、肉だけではありません。

まず、全身にたくさんある「軟骨」も、肉と同様美味な食材として珍重されました。小型のハクジラ類であるイルカは、そのヒレも塩漬けにしてスマシという名前で食べられます。

マッコウクジラ(提供:PhotoAC)

食材以外にも、ヒゲクジラのヒゲはぜんまい状に巻いて細工人形の動力源となったり、おもちゃの材料に用いられました。皮下脂肪から捕れる液体脂である鯨油は、石油がポピュラーになる前は日常生活に欠かせない燃料でした。そしてマッコウクジラの糞は、非常に良い香りがするために香料として用いられてきました。まさに捨てるところのない生き物なのです。

クジラ料理の極北「うでもの」

このほか南紀地方では、他地域では捨てられがちだったクジラの「内臓」もきっちり利用してきました。その使い方はずばり「食べる」。クジラの内臓料理は当地では「うでもの」と呼ばれ、高級珍味として珍重されてきたのです。

クジラのうでもの(提供:PhotoAC)

筆者も先日、飲食店のメニュー表に見かけたので注文してみました。出てきたのはゴンドウクジラの小腸、胃、腎臓、肝臓で、茹でられたものが一口サイズに切られて提供されました。

味はいずれもやや獣臭があるものの、胃袋は強靭な弾力と脂があり、腎臓は独特の歯ざわりと強い旨味が特徴、肝臓はザラッとしていてレバーの風味が強い……など、食感の違いやクジラ独特の旨味が楽しめて良い経験となりました。

ただし小腸については、内容物のせいか強烈な苦みがあり、食べる人を選ぶな……とも思いました。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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