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子どもの成長「乳幼児期〜学童期〜思春期」に合わせた部屋割り大公開 2LDKに5人家族でも「パーソナルスペース」ができる〔一級建築士が伝授〕

コクリコ

ファミリー層の「家が狭い!」問題を解決するには? 第3回は実践編。一級建築士で模様替えアドバイザー・しかまのりこ氏インタビュー。全3回

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思春期の子どもに個室を用意したいけれど、部屋数が足りない。かといって、都心の不動産価格は高騰し続け引っ越しも難しい。そんなファミリー層の悩みに、一級建築士のしかまのりこさんが、安心して一人になれる「パーソナルスペース」の作り方を伝授。第3回の実践編では、パーソナルスペースを作るための部屋割の考え方、そして実例を紹介します。

パーソナルスペースを作りやすい間取りの特徴

まずは、間取りの凸凹の部分に注目してみてと、しかまさんは続けます。

「パーソナルスペースを作りやすいのは、長方形よりも、L字型やT字型のように、凸凹のある間取りです。ベランダからの光や風の通り道を考えても、長方形の中に間仕切りを作っていくのは実は難しいんです。

その点、リビングがL字型であれば、リビングダイニングの一部に間仕切りを設けることで2部屋を作ることができます」(しかまさん・以下同)

イラスト左のようなリビング(緑部分)の場合、間仕切りを使ってイラスト右のように2部屋を作ることができる。

また、リビングが長方形でも入り口を合わせてT字型の間取りだと、部屋を分けやすいです。

「階段・廊下からリビングの中央に入るT字型の間取りの場合、リビングを中心に間仕切りを設ければ、左右に空間を作ることもできます。要は、T字の飛び出ている左右部分を子ども部屋にしたり、親の一人スペースにするという考え方です」

イラスト左のリビング(緑部分)を、間仕切り等で仕切って左右に部屋を作ったのがイラスト右。出かける際も帰宅時もリビングを通過することで、家族の気配を感じられ安心感がある。

部屋割りは「機能別」「性別」で考える

さらに部屋割りをどう工夫するかが大事なポイントになります。

「部屋割りの考え方として“子どもは子どもだけで一部屋”とせず、【1】“機能(目的)別”に部屋を分ける、【2】“性別”で部屋を分ける、2パターンがあります。いずれも、家族の希望や教育方針に応じて、柔軟に考えることが大切です」

機能別の分け方では、きょうだいの年齢に開きがあり、上の子が土日など日中に勉強に集中しなければならない場合は、“時間差”で勉強部屋と寝室を分ける方法があります。

「たとえば4人家族で2DKに住んでいる場合、2部屋のうち1部屋に上の子の勉強机ときょうだいの2段ベッドを置きます。昼間は上の子の勉強部屋にして、下の子(小学生)はリビングに小さなテーブルを置きリビング学習をしてもらう。

夜になったら、その部屋は寝室として使い、上の子が夜遅くまで勉強するときはリビングに移動してもらいます。そして残りの1部屋は両親の寝室に。こうすると、子が2人いても、子ども部屋は1つですみますね」

2DKの場合、1つの子ども部屋を上の子の勉強部屋兼きょうだいの寝室にして、下の子はリビング学習という方法。勉強部屋を分けることで上の子は学習に集中できる。

性別の部屋割は、子どもが思春期以降で年齢の近い異性のきょうだいがいる4人家族などに有効です。

「2DKに4人家族で暮らしている場合、たとえばママと娘で一室、パパと息子で一室作り、どちらの部屋も間仕切りやカーテンを使って親と子それぞれのパーソナルスペースを確保します。

間仕切りがあれば、子どもの一挙手一投足が気になり過干渉になってしまう事態もふせぐことができます。同時に、子だけでなく親が一人でほっとできる空間も生まれますね」

子どもは親が仕事などで不在のとき、一部屋を自分だけの空間にすることができる。一方、子が学校などに出かけている昼間の時間帯は、親は一人で在宅ワークに集中できる。

このほか、5人家族で子どもが3人の場合、子ども2人が姉妹なら母と姉妹の3人1室で寝室にし、兄弟なら父と兄弟を1部屋にすれば狭いスペースを有効活用できます。

姉妹は2段ベッド、母は布団で就寝。姉妹が学校に行っている時間帯は、親の仕事場に。

ここからは実際にしかまさんが模様替えでパーソナルスペースを作ったケースを紹介します。

●【実例①A家 2LDKに夫婦+子ども3人の5人家族】の場合

2LDK(リビングダイニング 12.3畳+洋室A 4.3畳+洋室B 5.7畳)に、夫婦と子ども3人の計5人で暮らすA家の間取りを改善したケースです。子どもの成長に合わせて部屋割りを3段階で変えていきます。

[1]乳幼児期
乳幼児のころは、リビングの一部を子ども3人のスペースとし、残りの2部屋は洋室A(4.3畳)を物置に、洋室B(5.7畳)を家族5人の寝室として活用します。

乳幼児期の間取り(2LDKに5人家族)

[2]学童期
小学校に進学したら、学用品などはリビングに置いてリビング学習を。そして洋室B(5.7畳)を3人の子の寝室に、もう一部屋の洋室A(4.3畳)を両親の寝室としました。

学童期の間取り(2LDKに5人家族)

[3]思春期
思春期になったら、3人の子どもに1人ずつパーソナルスペースを与えます。ここから部屋割りを工夫します。

「まずは、リビング内に6畳ほどのスペースを作ります。さらに3畳ずつに分け、真ん中と下の子どもの2人の部屋(C、D)にします。それぞれに机とベッドが一体化したロフトベッドを用意し、ロフトベッドの間は、突っ張りパーテーションで区切る。これで子ども2人のパーソナルスペースができます。

一番上の子には、洋室A(4.3畳)を与えます。そして両親の寝室は、洋室B(5.7畳)にします」

思春期の間取り(2LDKに5人家族)

思春期になった子どもたちのために、リビングの一角に作った2人分の子ども部屋(イラスト左)。間仕切りで2つに分け、1人3畳部分のパーソナルスペースに(イラスト右)。完全に個室を与えたほうがいい子には、別の部屋を用意。

●【実例②B家 3LDKに夫婦+子ども4人の6人家族】の場合

3LDK(リビングダイニング 10.1畳+リビング隣の洋室A 6.1畳+洋室B 7.3畳+洋室C 5.3畳)に、夫婦と子ども4人の計6人で暮らしているB家のケース。

「年齢差がある4人きょうだいは、第1子が思春期に入ったときにパーソナルスペースを設けるのをおすすめします」と、しかまさん。

[1]乳幼児期〜学童期が混在
子ども4人が乳幼児期から学童期(小学生)まで混在する時期は、少しきゅうくつですが、家族6人で洋室B(7.3畳)に布団を並べ寝室に。

学童期の子はリビング隣の洋室A(6.1畳)を勉強部屋に。そして残りの洋室C(5.3畳)は、親の仕事部屋として確保できます。

乳幼児期〜学童期が混在する間取り(3LDKに6人家族)

[2]学童期(小学校以上)
「子どもたちの年齢が近ければ、末っ子が小学校に上がった時点で子ども用の寝室を洋室B(7.3畳)にしても。その場合、親の仕事部屋にしていた洋室C(5.3畳)を親の寝室に変え、仕事スペースはリビング内に移動するのも手です。

子どもたちの年齢が離れている場合は、上の子たち2人だけ洋室C(5.3畳)を寝室にし、下の子たち2人と親は引き続き一緒に洋室B(7.3畳)を寝室として使ってもいいでしょう」

子ども3人が学童期の間取り(3LDKに6人家族)

[3]思春期
そして子どもが思春期に入ったら──。
「思春期は、完全な一人部屋を求める子もいます。そこで、思春期に入った子に洋室C(5.3畳)の個室を与え、残りの子3人と親で共有する2部屋を用意。

共有部屋の洋室A(6.1畳)は2つに分けて、子1人(A)と親1人(D)で共有します。親1人分の就寝スペース(D)と、子ども部屋(A)を突っ張りパーテーションで仕切りをつけて作ります。

洋室B(7.3畳)は子2人で共有し、2段ベッドと机を設置。子どもたちの共有部屋(B)は、机の間に突っ張り型のカーテンをつけることで個室っぽい雰囲気に」

思春期の間取り(3LDKに6人家族)

子ども2人の共有部屋(B)。机と机の間に突っ張り型のカーテンを挟むことで、個室のような空間ができあがる。

もう一人の親は、リビングの一角に仕事兼就寝スペースを作り、夜はソファベッドをベッドの形にして就寝します。これで、両親ともパーソナルスペースをもつことができます。

いかがでしょうか。A家・B家ともに、数回の模様替えで買い足したのは机やベッドくらいで、そのほかは同じものを移動したり形を変えたりして上手に使いまわしたそうです。

「数年先を見すえ、どの部屋でも使い回しがきく家具を買っておくと、経済的ですよ」と、しかまさん。

限られた資金は「住居費より教育費」に

最後に、しかまさんは改めて、「狭くてもいい。広さばかりにとらわれないで」と話します。

「以前当社でアンケート調査をした際、2DKの団地に4人家族、5人家族で住んでいて、自分の居場所がほとんどなかったという子が何人かいました。そうした中でも、現役で国立大学の医学部に入った子もいます。

このことからいえるのは、無理して完璧な環境を整えなくてもいい。それより大切なのは、子どもと向き合い、その子の成長・発達や性格に応じて、メンタルが安定するよう、大きさにとらわれずにパーソナルスペースも作ってあげることです。

そうやって住居費を最低限におさえながら、教育費の比重を増やして子どもの未来の可能性を伸ばしてあげたほうがいいと、私は思います。1人1部屋の個室を与えられる広めの家を買ったけれど、住宅ローンに圧迫され、その結果子どもが奨学金の返済で泣いている……というケースもよく聞きますから。

『○○を整えれば○○な子に育つ』という正解の法則はないし、『狭い=ダメ』ではない。狭い家でも立派に育った子はいっぱいいます。きょうだいが一緒の部屋で過ごしたことで絆が深まり、協調性が育まれていくケースも多々あります」

─・─・─・─・


わが子が全員巣立つまであと何年? もし10年以内なら、今の家でわずかながらもパーソナルスペースを作り、浮いた住居費を教育費に充てたほうが建設的──そんな、しかまさんの言葉に、ほっと胸をなでおろすファミリー層は少なくないはず。

分譲・賃貸住宅ともに高騰し続ける今、“部屋作りの工夫”が大きな助けになりそうです。

●しかまのりこPROFILE
COLLINO一級建築士事務所主宰。一級建築士、模様替えアドバイザー、建築基準適合判定資格者、耐震診断士。ゼネコン建築設計部等で設計・検査・審査など携わった住戸数はのべ5000件以上。独自のメソッドで、500件の問題を解決してきた。

取材・文/桜田容子

しかまさんがさまざまな家族構成と間取りの実例を紹介し役立つヒント満載の『狭い家でも子どもと快適に暮らすための 部屋作りのルール』(彩図社)

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