「今後初めて転職するかもしれない20代」が注意しておくべきこと【27歳からのキャリア戦略】
20代後半を迎えて周囲に転職者が増え、「自分もそろそろ…」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。転職サービスdodaが2023年に実施した調査(※)によると、20代の転職理由の上位には「給与が低い・昇給が見込めない」「人間関係が悪い/うまくいかない」「社員を育てる環境がない」などの項目が並びました。職場環境に不満を持って転職をするケースが多くなっていますが、今後初めて転職するかもしれない20代は、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
今回も、元「リクナビNEXT」編集長で、現在はミドル世代向けの転職支援・キャリア相談サービスを運営する黒田真行さんにインタビュー。「転職は自分のキャリアの方向性を修正するためのカード」と語る黒田さんに、20代が能動的に初転職をするための行動ステップについて、詳しくお話を伺いました。
(※)<出典>転職・求人doda「転職理由ランキング【最新版】みんなの本音を調査!」
https://doda.jp/guide/reason/#movingPosition01
転職はキャリアの軌道修正 まずは自分の「現在地」を見極める
Q. そもそも転職というものは、何のためにするものなのでしょうか?
転職は、自分のキャリアの方向性を軌道修正するためのもの です。今働きやすいか、働きにくいかよりも、自分がどんな方向でキャリアを作っていくべきかを考えて、そこにズレがあるなら軌道修正する。そのためのカードとして転職を使った方が良いと思います。
Q. 今すぐに転職するつもりがなくても、「このままで良いのだろうか」と悩んでいる20代は多いと思います。自分のキャリアに目を向けたとき、まず何をすればいいでしょうか?
自分の「現在地」を知ることです。これは、企業と求職者との需給バランスの中で、自分がどれくらいのポジションにいるのかを押さえるということです。
例えば「銀座に行きたい」となったときに、スマホの地図アプリを開いて自分のいる場所を把握しないと、ルートを決められませんよね。それと一緒で、転職市場での自分の座標的な位置がわからないと、進むべき方向を見出すことはできません。この「現在地」がわからないまま転職活動をしてしまう方が非常に多いので、特に転職が初めてという方には、まずその作業から入っていただきたいと思います。
Q. どんな観点で「現在地」を見極めるべきでしょうか?
大事なのは、自分がいろいろな企業から引っ張りだこの「売り手市場」にいるのか、その逆の「買い手市場」にいるのかということです。それは、ここまで積み重ねてきた経験やスキルはもちろん、今いる業界・業種・職種が右肩上がりで隆起しているのか、右肩下がりで地盤沈下しているのかということも影響してきます。
「業務そのものがAIに置き換わる可能性がある」、「この地方では仕事がどんどん減っていくだろう」など、今の企業でこのまま働くと未来はどうなるのかを予測するということになります。
数年間働いていれば、自分が今いる業界や職種のことはある程度わかってきているはずなので、まずはそれを他の仕事と比べてみてください。自分の職務経歴をスカウトサービスに登録して、どんな企業からスカウトが届くのかを見てみるのも方法の一つですし、知人に話を聞いてみるなど、いろいろな手段を使ってみましょう。
Q. 就活のタイミングでは「すごくいい」と思っても、当時とは状況が変わっていることもあります。
そうですね。就活のときには、そんなことを気にも留めていなかった人も多いでしょうし、単に「親がすすめるから」などの理由で入社したケースもあるかもしれません。
ですので、 今すぐ転職する気がなくても、現在地の点検をすることは大切 です。就活から何年か経って、そのときの選択が今どうなっているのか、一度確認してみてほしいですね。
Q. 現在地を確認して、もし自分が「売り手市場」にいないことがわかったら、新しい業界や職種にトライすることを考えなければなりませんね。
まずは先入観抜きで、どんな業界・業種・職種に需要があるのかを徹底的に調べて、洗い出してください。その中で自分が「やってみてもいいかな」と思う仕事に優先順位をつけて、順番にトライする。需要があるところに、ゼロから弟子入りして頑張っていくのです。
5年、10年先を見通して、自ら主導権を持って自分を変える
Q. 転職で企業を選ぶ際、入社した直後の待遇を気にする人も多いですね。
転職直後の給与の増減ばかり考えていると、貴重な機会を見過ごすことになります。単純に入社直前・直後という瞬間の切り口よりも、転職5年後、10年後の長期的な変化や成長を見通して、自分のキャリアにプラスになるかどうかを見きわめることのほうが大切です。給与については、提示された額面の大小だけでなく「どういう頑張り方をすれば昇給するのか」という評価制度についても確認しておきましょう。
Q. 初めての転職を経て新しい職場に身を置くとき、意識すべきことはありますか?
「何も課題がない企業は絶対にない」ということです。「こうなればいいな」という楽観的なシナリオだけでなく、二の矢となる悲観的なシナリオも持っておくと良いと思います。「今回の転職で得たい目的はこれだ。2年後にここまで達成できなかったら、このタイミングで次に移る活動を始める」など、次善の策の発動条件をしっかり決めておくこともポイントです。
当然、想定していた以外の事象も起こり得ますが、少なくともある程度想定できる範囲を押さえておくことで、慌てることなく次に移れるというメリットがあります。
楽観シナリオと悲観シナリオ
Q. 最後に、転職後に満足度高く働くためには、どのような意識が必要でしょうか?
「転職は環境を変えるのではなく、環境を変えることによって自分自身を変えるためのもの」 という考え方を大切にしてほしいですね。
「給料が低いから」や「なかなか上司との関係がうまくいかないから」など、ただ「自分の置かれた環境が不快だから転職する」という他責的な理由ではなく、 自分が主導権を握って、自分のキャリアをあるべきものに近づけるために転職というカードを切る という考え方です。業界や職種を変えて、場合によっては自分の経験や強みを捨てて、ゼロから勉強してでも、キャリアをあるべき方向に近づけていく。その点を意識していただければと思います。
プロフィール
黒田 真行
ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役
1988年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、 リクルートエージェント HRプラットフォーム事業部部長、株式会社リクルートメディカルキャリア取締役を歴任した後、2014年にルーセントドアーズを設立。35歳以上向け転職支援サービス「Career Release40」を運営している。 2019年、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を開始。
代表著書 『35歳からの後悔しない転職ノート』『転職に向いている人 転職してはいけない人』