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「テレワークの先駆者」ネットワンシステムズに聞く 新しいワークスタイルを支えるしくみづくり

キャリコネニュース

コロナ以前からテレワークに積極的に取り組んできた(画像提供:ネットワンシステムズ。以下同じ)

コロナ禍でテレワークを導入したものの、その後取りやめた会社が都内企業の約3割にのぼる――。東京商工会議所の調査で判明した実態だ。その一方で、すでに何年も前からテレワークに取り組み、完全に定着しているところも。情報インフラ・インテグレーターのネットワンシステムズ(東京・丸の内)は、そんな会社のひとつである。

「働き方改革」の先進的な取り組みで知られ、2017年には総務省の「テレワーク先駆者百選」で総務大臣賞、厚生労働省の「輝くテレワーク賞」では人事部長が厚生労働大臣賞 個人賞を受賞している。新しいワークスタイルを支えるのはITシステムなどのハードだけでなく、人事制度や運用ルールなどのソフトも重要だという。次世代の働き方を模索する会社の参考になるだろう。同社管理本部 広報・IR室の西田武史さんに話を聞いた。(キャリコネニュース編集部)

社員数を増やさずに「大幅増収増益」を実現

ネットワンシステムズの業績は、ここ数期で右肩上がりに伸びている。2020年3月期は売上高が1863億円、営業利益は164億円で、4期前と比べるとそれぞれ1.3倍、ほぼ10倍に伸びている。

本体(単体)の平均年間給与は837万円で、4期前から約76万円増加。その一方で、連結従業員数は2431人で、4期前の2252人から大きく増えていない。それだけ会社の生産性が高まっているということだ。

2021年3月期の第2四半期累計決算も、コロナ禍の影響を受けながらも前年同期比で増収増益を達成している。

ネットワンシステムズがテレワーク制度を導入したのは2011年4月。東日本大震災の直後のことだ。「対象は全社員」「利用回数や利用理由の制限なし」「最も生産性が高まる場所で働くことを推奨」という本格的な取り組みは、社長のトップダウンによるものである。

「実は2009年から、全社アンケートで"在宅勤務"に対する興味を聞いていました。2010年の11月から3ヶ月、テレワークのトライアルを実施しており、震災時の緊急事態もテレワークで回避できていたのです。
震災後には、生産性向上や社員の満足度向上の方策としてだけでなく、BCP(事業継続計画)の観点が加わりました。おかげで新型コロナの緊急事態宣言でも、仕事にはあまり影響は生じませんでした」

社外や在宅勤務でもオフィスと同等の環境を実現する「仮想デスクトップ」を導入。ビデオ会議やチャットなど、コミュニケーションを支えるツールも導入。同時に人事制度を改訂し「フレックスタイム制」を導入。2018年には「深夜勤務の原則禁止」とともに、「コアタイムの撤廃」にも踏み込んでいる。

さらにツールや人事制度の活用を促すため「テレワーク活用ガイド」を策定し社内説明会や管理職研修を開催し、ケーススタディを社内報でも紹介。推進上の課題を吸い上げる「全社員向けアンケート」を毎年実施し、改善につなげているという。

テレワークで「妊娠出産に伴う離職」もほぼゼロに

テレワークの本格導入による成果は、数字でもはっきり現れた。

社員一人あたりの法定時間外労働(いわゆる月の残業時間)は、2012年度の平均21.7時間が、2019年度には5.5時間まで減少。月40時間以上の残業を行う「過重労働者」の割合も、15%から3%にまで減っている。

テレワーク活用度(月に3時間以上テレワークを実施する社員の比率)も2015年度の45%から2019年度には74%に増加した。中でも、育児時短勤務社員では100%に近い数値で推移している。育児や介護などの事情を抱える社員が継続して安心して働けるようになり、妊娠出産に伴う離職もほぼゼロとなった。

テレワークは社員の「成果志向」への意識改革を促した面もあったという。

「以前は"とりあえず会社に行くことが仕事"になり、出社してからやることを考えることもありました。しかしテレワークという選択肢ができたことで"必要に応じて会社に行く"ことになり、仕事をする場所を決める前に目的を考えるようになりました。この下地があったことで、新型コロナの状況でも約70%をテレワーク勤務としつつ、円滑に業務が進められています」

社員の働き方の変化に応じて、会社も「オフィス改革」に取り組んだ。東京本社を2013年5月に、中部支社と関西支社を2014年に移転。大規模なリニューアルを実施した。

「フリーアドレス」や「無線LAN環境の整備」などオフィスの設備改装のほかにも、社内承認のペーパーレスとスピード向上を実現する「業務フローの見直し」や、いつどこでも業務ができる「モバイル端末対応」をあわせて行っている。

移転前は、オフィスには社員数の95%にあたる座席数があり、働く場所も働き方も固定されていた。それが、移転後には座席数が社員数の65%にまで減少。カフェなどのリラクゼーションエリアや、ビデオ会議用のコラボレーションエリアも設けた。

マネジメントに対する意識も変化した。2011年度の段階では、テレワークの阻害要因の上位に「紙の書類が多い」「上司の目が気になる」が入っていたが、2016年度では「対面重視の仕事がある」「チームワークを維持したい」などに入れ替わっている。

「ジョブ・ディスクリプション」の本格運用も開始

ネットワンシステムズの取り組みがここまで積極的な理由のひとつは、自社の試行錯誤をクライアントへの提案を活かそうとしているためだ。

「クライアントに先んじて先進的なIT環境を導入し、まずは自分で試してみるという企業風土があります。とにかく思いつくことはやってみて、うまくいかなかったことも含めて知見をためて「ユーザーの声」としてクライアントに伝えることで、説得力が高まります。
昨年からは、新型コロナの拡大にともなって、多くのお客様でテレワーク環境が突然必須となりました。当社はIT環境を提供することでテレワークを支援することはもちろんですが、実際に提案する営業担当者やエンジニアが、自身の経験を踏まえた「使い方」もお伝えすることで、お客様からご評価いただいています」

テレワークは、目標管理的なマネジメント、成果主義的な評価を必要とするという指摘がある。ネットワンシステムズでも2020年から「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書。JD)」の本格運用を開始している。

社員に対する期待役割については、これまでも「グレード」という形で定義されていた。これをさらに、所属部門のミッションや求められるスキルと紐付けて可視化し、個人に期待する「責任」「行動」「スキル」をより詳細に言語化している。

JDの作成により人事評価を透明化するだけでなく、社員の自律的なキャリア形成を促すことも目指しているという。社員は、上長との1on1の面談などで目指す姿を積極的に発信し、自らのキャリアを主体的に開発することが求められる。

このほか、ネットワンシステムズでは、2017年に静岡市と地方創生に向けた連携協定を締結し、実際に静岡市に住みながらテレワークを行う「実証実験」を実施。2019年には北海道岩見沢市でテレワークシステムを活用して障がい者雇用を推進したりするなど、様々な地方自治体での取り組みも進めている。

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