【特別支援学校1年】入学前の不安、願いは「みんな同じ」だと知った。涙と笑顔の最後の授業参観
監修:森 しほ
ゆうメンタル・スキンクリニック理事
大切に名前を呼び合い、うれしそうに答える姿
昨年の4月から特別支援学校の小学部1年生となっていた息子「とつお」。保育園では毎日のように行き渋りし最後の運動会ではほとんど競技に参加できず、卒園式では私のそばから離れなかった彼。入学式でもパパにしがみついて入場していました。学校に通い始めると心配していた行き渋りは数日でおさまり、家でうれしそうに校歌を歌う姿も見られるように!入学後初めての運動会でもしっかりと親子分離でき緊張しながらも自分なりに走る姿を見た時は、居場所を見つけた彼の喜びが伝わってくるようでした。初めての授業参観では、私とパパの姿を気にしてチラチラと振り返りつつもニコニコ授業を楽しむ様子に驚きました。
そして、今回の1年生最後の授業参観は、やはり点呼から始まりました。クラスのみんなで1人の名前を呼び、呼ばれたら返事をする。そんな学校でのありふれた風景ですが、大好きな友だちの大好きな名前を呼べること、答えられることはこんなにも美しいんだということが輪郭はっきりと伝わりました。
終始落ち着き、うれしそうだった息子
授業では子どもたちみんな特性はそれぞれ違えど驚くほど成長していることが分かりました。コミュニケーションも多く、言葉数がたくさん増えた子や、以前は教室から飛び出そうとしていた子が、立ち歩く場面がありつつも廊下に出て行くことはなかったり。授業はみんなで劇を演じながら登場人物の名前や大小や数などを学ぶ様子が見られました。その後はそれぞれに適した課題プリントに集中して向き合う場面が。みんな自分の課題が終わるまで立ち歩くことなく取り組めていたことが印象的でした。
授業後は子どもも含めた保護者懇談会→保護者は先に帰宅するという流れでした。「この後ママは先に帰りますよ」と伝えたところ、以前であれば分離の場面で大泣きだった息子は「はい!僕は給食食べます!その後デイ(放課後等デイサービス)行きます!」とにっこり。そうそう、1ヶ月前から息子の一人称は「にいに」から「僕」になったんですよ‼
懇談会でみた保護者たちの思い
懇談会では学校生活の様子をスライドショーで見た後、保護者からわが子の成長したところなど、ひとことずつ話す場面をいただきました。みなさん涙していました。2人の担任の先生も。
「こんなに成長してくれると思っていなかった」こと、「入学前はちゃんと通えるんだろうかと不安だった」こと、「先生やお友だちみんなのおかげで成長できたんだと改めて感じた」ということ。どれもが私も同じ気持ちでした。一見強面のお父さんが涙している姿には、やっぱりみんな同じような思いを胸に歩いてきたんだと、胸がギュッとした私でした。
大好きな仲間たち、1年間ありがとう!
こうして、息子とつおの小学校生活最初の1年は終わりました。もちろん晴れの日ばかりなんかではなく、行き渋って休んだ日、気持ちの切り替えができずに1日中泣いてばかりだったという日もありました。放課後等デイサービスの記録に「楽しく遊んでいたと思ったら急に泣き出し、話をよく聞いてみると、ママに急に会いたくなっちゃったんだ。と教えてくれました」なんて書かれていたこともありました。
どんな時も根気強く向き合って指導してくださった先生と、ともに過ごした仲間たちのおかげで、息子は学校を安心できる場所として認識できた1年になったことが何よりもうれしいです。クラスや先生が変わってしまうのは寂しいけれど、これからも出会いと別れを繰り返してとつおだけの人生をつくっていってほしいです!
執筆/マミー・マウス子ビッツ
お子さんの成長を見守ってこられた体験談をありがとうございます。不安を乗り越えて「安心できる場所」を見つけたこと、とっても素晴らしいですね。
さて、発達特性をもつお子さんにとって、「安心基地の形成」と「自己効力感の芽生え」は、健やかな成長のためには非常に重要です。学校の行き渋りや分離不安が入学したばかりなど環境が変わった時に出ることは、ごく自然な反応です。環境の変化に敏感なお子さんほど強く出やすいもので、どのくらいの期間続くかは本当にお子さんによってさまざまです。「環境を予測できること」「保護者や先生、お友達など周囲が受容的に関わってくれること」「成功体験の積み重ね」があると、比較的落ち着きやすく学校を楽しめるようになると考えられます。名前を呼び合ったり、劇・課題に参加することで社会的コミュニケーション能力は発達しやすく、自己肯定感が育ちます。
一方で、急に「ママに会いたくなった」と泣き出してしまうといったことも、とても健全な反応です。安心できる対象(愛着対象)がしっかりあるからこそ起こる感情であり、むしろ心の発達としては順調といえます。感情の波がある中でも学校を「安心できる場所」と認識できることは、今後の学習や対人関係をしっかり築くために大切なことなのです。保護者の方々も手探りでの育児で不安と緊張でいっぱいですので、親子で環境に適応できたこと、お子さんの成長を感じると「ここまで来た」という安心でいっぱいになるのではないでしょうか。
大切なのは、「できたことに目を向け続ける習慣」です。どうしても課題や不安に目が行きがちですが、「行けた」「答えられた」「離れられた」といった小さな成功を認めてあげると、次の成長のエネルギーになります。日記やスマホのメモに「今日のよかったこと」を1つ書くだけでも十分効果的です。
また、親子が成長するために大切なことのひとつに、「予測可能性を高める工夫」があります。発達特性のあるお子さんは見通しが立つことで安心しやすいため、1日の流れを簡単なスケジュールにまとめるといいですね。絵や写真でもいいので、見える化すると、不安や混乱が減ります。「今日はママは先に帰る→そのあと給食→デイ」という流れを事前に共有しておくと、ママと離れるときに落ち着いて受け入れることができるようになります。
感情を言語化するサポートをするのも有効です。「ママに会いたくなって悲しかったんだね」「でも頑張って過ごせたね」と代弁してあげることで、子どもは自分の気持ちを理解しやすくなり、情緒の安定につながります。泣くこと自体を否定せず、「気持ちはOK、行動は少しずつ調整」というスタンスを取れるといいですね。
保護者自身が無理をしてしまうと続きませんから、孤立することがないように、同じ立場の保護者同士のつながりがあると心の支えになるのではないでしょうか。また、発達のスピードや形はお子さんひとりひとりで全く異なります。周囲のお子さんと比較することはまったく意味がありません(「あのおうちのお母さんはできるのに、なんでうちのお母さんはできないの?」と言われたら大人だってつらいですよね)。「以前のわが子」と比べて少しでも前に進んでいれば、それで十分です。今回の1年のように、振り返ったときに大きな変化が見えることが多いのです。
この1年で築いた「安心できる場所」と「できるかもしれない」という感覚を大切にして、積み重ねを信じて、引き続き温かく見守ってあげてくださいね。(監修:医師・公認心理師 森しほ先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。