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生活苦が進んでいる⁉エンゲル係数の急上昇はなぜマズイ?

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物価高が続く中、日本はエンゲル係数の上昇が続いており、「42年ぶりの高水準」とニュースでも話題になりました。エンゲル係数が上がることは良くないこととされていますが、それはなぜでしょうか。

今回は私たちの生活に大きく関わっている「エンゲル係数」について、近年の経済の動きを交えながら解説します。

エンゲル係数とは

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エンゲル係数とは「消費支出全体に対する食費の割合」のことです。

エンゲル係数(%)=食費÷消費支出合計×100

分かりやすく言えば、家計で出ていくお金の中で、食費がどの程度の割合を占めているのかを意味します。

一般的に「エンゲル係数は上がると良くない」と言われています。エンゲル係数が上がると食費に使うお金が増え、それ以外に使えるお金が減るため、お金の自由が制限され生活が厳しくなりやすいためです。

エンゲル係数は低所得者ほど高くなりやすい

エンゲル係数は「豊かさの指標」とも言われており、低所得者ほど高くなりやすい傾向があります。低所得者の場合、収入が少ないため消費支出全体に占める食費の割合が必然的に大きくなりがちです。いわば「食べるだけで精いっぱい」という状態です。

一方で高所得者は収入が多いため、贅沢をしなければ低所得者よりもエンゲル係数は下がりやすいのです。

食で贅沢をするとエンゲル係数は上がる

「毎日外食をする人」「料理に高級食材を多用する人」「食事の量が多い人」などの場合、食費にかかる額が多くなるため、エンゲル係数も上がりやすいです。

43年ぶりの高水準に。2024年のエンゲル係数はどれくらい?

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総務省が発表した2024年の家計調査によると、2人以上の世帯の「エンゲル係数」は28.3%で、1982年以来(43年ぶり)の高い水準となりました。

特に低所得世帯においては厳しい数値であり、食費を切り詰めて生活している人も増えてきている状況と言えるでしょう。

日本のエンゲル係数の推移

日本のこれまでのエンゲル係数を辿ると、高度経済成長期の1960年頃は30%台後半と今よりもさらに高い数値でした。その後1980年代、1990年代は下がり続けていき、2000年代は最も低く20%台前半で推移していました。

しかし2010年頃より徐々に上昇していき、特に新型コロナウイルスが流行した2020年頃からはさらに上昇が加速し、昨年2024年には43年ぶりの高水準まで上り詰めたという状況です。

 エンゲル係数が上がっている背景

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日本のエンゲル係数はなぜ話題になるほど上がっているのでしょう。ここでは昨今のエンゲル係数上昇の背景や要因について解説します。

要因1.物価高

日本の物価はここ数年急上昇しており、食料品の価格も軒並み上昇しています。これまでと同じ食料を買うのにもより多くのお金が必要になるため、必然的にエンゲル係数の底上げ要因となっています。

指標データを見ても、物価の変動を示す全国消費者物価指数(CPI)は、2020年を基準値100として108.5を記録しており、前年比では2.7%もの上昇が見られます。

物価高の背景には、円安による輸入コストの増加、賃上げによる人件費の増加など、さまざまな要因が関与していると言われています。

要因2.食糧不足

気候変動などの影響により作物が十分に育たず、食糧不足が問題化しています。食糧の供給量が減れば食糧の価格も高騰し、エンゲル係数の底上げに繋がります。

連日ニュースを騒がせている「お米の高騰」はその代表格となり、お米のような主食は買わないわけにはいかない必需品であり、価格が高騰すればエンゲル係数の上昇は避けられません。

また世界的に人口が増えており、これまでより食料が多く必要になったことも、食糧不足や食糧価格高騰に影響しています。世界人口は今後も増えていく傾向にあるため、こうした根本的な食糧不足は今後も慢性的に続いていくとも言われています。

要因3.物価上昇に所得が追い付いていない

ここ最近は多くの企業が「賃上げ」を進めてはいますが、度重なる物価上昇に対して追い付いていないとも言われています(特に中小企業など)。物価が上昇しても、所得もそれに見合うだけ上昇していればエンゲル係数は過度に上昇しないものであり、それが本来あるべき経済の形でもあります。

しかし現在は、物価だけが上昇しているため、節約などの工夫をしないとエンゲル係数の上昇を抑えきれない状況となっているのです。

エンゲル係数が上昇した今、できる対策は?

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エンゲル係数が高くなった今、これまで通り生活をしていると家計が窮迫してしまうこともあります。そこで以降では今できる対策について紹介します。

食費を節約する

食費を節約することで、エンゲル係数を下げることができます。食費の節約方法としては以下のような方法が挙げられます。

・ランチは外食を控える(お弁当を作り持参する)
・飲み物を持参する(マイボトルを使う)
・自炊をする
・食材の価格を抑える(その時期旬の安い食材を買う、高級食材の使用を控える)
・まとめ買いをしてスーパーに行く頻度を下げる
・セール品を積極的に購入する
など

賞味期限間近の食品や在庫の多い食品など、いわゆる「訳あり品」を安く販売するスーパーやネットショップなどもありますので、 食料を買うルートを見直すだけでも食費を大きく節約できることがあります。

フードパントリーを利用する(困窮している場合)

「フードパントリー」は、子育て世帯や母子家庭、1人暮らしの高齢者、経済的困難者など生活に困窮している人に向けた食料支援の催しです。NPO法人や地域の実行委員会、ボランティアなどが実施しており、身近な食品を無料で支給しています。

物価高などにより、最低限度の食事もままならないほど困窮してる場合は、健康を維持するためにもこうしたフードパントリーを積極的に利用したいところです。

以上、エンゲル係数について解説しました。
これまでエンゲル係数を意識しなかった人にまで話題にされるほどに、エンゲル係数の上昇は大きなニュースとなっており、食料品高騰が身近になっているとも言えます。これまで通り生活をしていると家計が回らなくなることもありえるため、この機会にエンゲル係数と普段の食生活、食品の節約について見直してみてはいかがでしょうか。

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