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【Do As Infinity インタビュー】⑥ 大渡亮が選んだ “30代の1曲” とギタリストとしての矜持

Re:minder

2025年10月03日 Do As Infinityのライブ「Do As Infinity 26th Anniversary LIVE」開催日(LINE CUBE SHIBUYA)

結成25周年を迎えたDo As Infinity。ボーカルの伴都美子とギターの大渡亮が影響を受けた音楽、そして四半世紀にわたる波乱万丈の活動を語るスペシャル・インタビュー。最終回となる第6回は《人生を共にすると決めた音楽》として、大渡亮に “30代の1曲” を挙げてもらいつつ、ギタリストとしての矜持やDo As Infinityの音楽的な変化についてもクールに語っていただいた。

ミシェル・ブランチ「エヴリウェア」を聴いた時の衝撃


―― 1999年に結成されたDo As Infinityは、立て続けに楽曲をリリースしていき、人気グループとなっていきます。

大渡亮(以下:大渡):ただ、僕らはエイベックス内で、MAX松浦が匙を投げた異端のグループと言われていたんです(笑)。サウンド面では亀田誠治さんもベーシストとしても参加してくれて、プロデュースも務めてくださったので、だんだん松浦さんのカラーではなくなってきて、“なんだかよくわからないから勝手にやっていいよ” みたいな話になって(笑)。松浦さん直系のユニットであるday after tomorrowとかgirl next doorに比べ、僕らは独自に歩を進められました。僕自身も、自分が体験してきた洋楽を楽曲に投下することができたし、制約なく活動してこられたと思います。

―― 20代で、レッド・ホット・チリ・ペッパーズをきっかけに、ブラックミュージックへの扉が開いた大渡さんですが、30代になり《人生を共にすると決めた音楽》に選んでいただいたのは、カナダ出身のロックアーティスト、ミシェル・ブランチのデビュー曲「エヴリウェア」です。

大渡:Do As Infinityをスタートさせたのが28歳の時で、30代に入った時期は、聴く音楽もDo Asの肥やしになるものを積極的に聴いていました。R&Bやヒップホップは20代の時と同様に聴いていたけれど、さすがにもうレゲエは休憩(笑)。やはりアメリカ西海岸やカナダから出てくる女性アーティストに興味が湧いていた頃です。
その中でも、この曲を聴いた時の衝撃は忘れられなくて、とにかくかっこいいと思いました。

女性らしさも兼ね備えていて、ロックのダイナミクスも備わっていて、アコギの質感も素晴らしい。これがデビュー曲というのも驚きだけど、この曲の入っているアルバム『スピリット・ルーム』もかなりヘビーローテーションで聴いていました。その後出てきたアヴリル・ラヴィーンのファーストもかなり良かった。アヴリルは、ザ・マトリックスという名前のコライトチームで制作していて、その "コライト" という概念もいいな、とすごく影響を受けた記憶があります。今はもう、コライトが普通のことになりましたけど、そのハシリでしたよね。

ロック的な性質をこのグループでも示唆したい


―― 女性ヴォーカルを立てたユニットの音楽をどのように作っていくかという点でも、彼女たちの作品が参考になったと。

大渡:はい。僕のやることは、グループの一員であることを自覚しつつ、その車輪を止めないことを常に考えていました。意外と長尾さんも伴さんも宇宙人なので(笑)、僕はグループの運営みたいなことに軸足を乗せていたんです。

―― 具体的にはどのようなことでしょう。

大渡:うちのグループは歌詞が弱かったんです。活動をしていく上で、“何かアンセムみたいなものを書かないとこのグループはまずいぞ” と思い始めて、そこから僕は歌詞を書き始めるんです。ファーストアルバム、セカンドアルバムでも1曲だけ詞を書いてはいるんですが、3枚目ぐらいから、もっと書かないとダメだと思うようになってきました。ライブ活動も増えていったので、自分たちの意識をライブで共有できる楽曲を作りたいという思いが強くなっていったんです。当時の僕らで引きがあるのは、マイナーのバラード調が多かったので、それなら、ライブの定番曲を作る必要があるだろうという考えに至りました。

―― アーティストと観客が、意識をひとつにして盛り上がれる曲ということですね。

大渡:はい。僕の好きなロックは、そういう曲を持つバンドが多かったので、ロック的な性質をこのグループでも示唆したいと思っていました。音楽を作るというより、メッセージを届けるような感覚でしょうか。意識は常にそこにありました。

―― デビュー当時の作詞クレジットはD・A・Iになっていましたが、実態としてはメンバーやスタッフが個別に曲を書かれていたんですか。

大渡:歌詞に関してはそうです。スタッフ側からD・A・Iでいいんじゃない?って提案がありそうしたんですが、そのことを僕は後悔しています。実は伴さんが書いていたり、僕だったり、仮歌を担当していた新地佳代子さんが書いた詞もあったんですよ。「深い森」は新地さんの詞です。他の人が1コーラス作って、この後は俺が書きたいって、書かせてもらうケースもありました。まさにコライトですね。

Do As Infinityと同時進行していたミサイルイノベーション


―― 2005年にDo As Infinityは解散しますが、この時期の大渡さんはどんな思いで活動されていたのでしょうか。

大渡:2004年ぐらいから、ミサイルイノベーションというグループでも同時進行で活動していました。Do Asが解散してからは、ミサイルイノベーションと、他のアーティストのサポートをやっていくスタイルになりました。そこで思うところがありまして、Do Asではかなり運営側の感覚で活動していたので、人様のライブでギターを弾かせていただく際、ギタリストとしてのハートをおろそかにしていたなと気づいたんです。

―― 具体的な出来事があったのでしょうか。

大渡:セッション的なイベントに出た際、守るだけで楽しめていない自分がいたんです。Do As再結成のタイミングは2008年でしたが、僕も40代目前になって、もうちょっとギターが弾けるようにならないと、この先やばいなと思ったんです。そこからは急にギタリストモードになって、歌詞なんて書いてる場合じゃない!となってしまった。

―― これだけ長いキャリアをお持ちで、さらにもう一度ギターと向き合うというのも凄いことですね。

大渡:でも、この再結成以降の学び直しというか、遅れを取り戻すために頑張っていた時期が、今の僕の軸になっているんです。小さいライブハウスなどでセッションもやるんですが、等身大で音楽を楽しめるようになりました。これは感覚的な話になりますが、身体にインストールするためにはどうしたらいいのかと考えて、とにかくブルースをたたき込みました。本当は大昔にやってなきゃいけないのに!

―― 原点回帰でしょうか。ただそうなると、それまでのご自身の個性が失われてしまうのではという恐れはなかったですか?

大渡:そう、それで悩んだ時もあったけれど、なんていうのかな… 攻守の感覚をシュミレートする感じでしょうか。攻めというのは、"このフレーズやこの音域だったらこうする " というもの。逆に、"こうすれば次のコードに行きやすい " というのが守りです。僕は、その中でも最短距離にこだわって、効果的に相手に届くよう弾くことを習得していました。

実際、昔の自分は、理屈はなくて感覚的にやっていたし、今聴くと下手で恥ずかしいけれど、それが聴き手には届いたんです。でもいつの間にか届かなくなっていた。僕、エレキギターのような楽器は “感覚でいいじゃん” というのも強みだと思っているんです。そしてそこに理屈が付いてきたらなお良い。僕が目指しているのはそこだし、好きなギタリストも、理屈があって、より届く人たちなんです。

―― 例えば誰でしょう。

大渡:ラリー・カールトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス。影響も受けているし、そのプレイが聴き手にちゃんと届く。あとはマイケル・ランドゥも好きでした。ジャズ、フュージョン系もそれまで聴いてこなかったけれど、2009年ぐらいから意識するようにしています。ギターを学ぶ際に、避けては通れないので。さらにAORも聴き始めて、一番最後に、最も大事なギターを全部吸収し直して、結果、音楽的には網羅したと思います。

Do As Infinityの大渡亮とは違う感覚


―― ここまでお話を伺ってきて、ギター音楽総まくりの人生のように思えて来ました。

大渡:異質なのはダンスホールレゲエぐらいですかね(笑)

―― 2016年に発表された『2 of Us[RED]-14 Re:SINGLES-』というアルバムは、過去の楽曲をリアレンジした内容でしたが、ここでは大渡さんが様々なギタープレイを試されていますね。

大渡:はい。あれは伴さんが出産などで活動ができなかった時期に、当時のA&Rから "亮がアコギでアレンジしたらどう?" って提案されて、僕もその夏の日課として楽しむ感覚でやってみたんです。自宅からスタジオまで車で移動する道中で、その日のアレンジを決めたんです。それで「under the sun」をサンバにしてみようと思い、結構楽しんでやりました。

―― ブラジリアンギターはどうやって習得されたんですか?

大渡:そんな素養なんてないから、YouTubeを見て、どんなふうに弾いてるのか勉強したんです。どうやったら本物っぽくなるかな?って(笑)。「under the moon」も突然思いついて、4ビートにしてみようとか。「Mysterious Magic」ではレゲエもやりました。昔を懐かしむわけでもないですが、俺が料理するならこうかな?と、ダブっぽい要素も加えたりして。

―― あのアルバムを聴くと、大渡さんのテクニックやセンス、音楽ルーツの数々を楽しめるように思えます。

大渡:そうかもしれないですね。あのアルバム、もう10年前になりますが、自分が虜になった音楽の要素が出せるかなみたいな、Do As Infinityの大渡亮とは違う、異質のものをぶち込んでやろうという感覚はありました。

―― この先のDo As Infinityは、大渡さんのギタープレイのバリエーションの広さにも注目して聴いていきたいと思います。

大渡:ありがとうございます。10月には26周年のライブもありますので、そちらも楽しみにしていてください。

Live Information
▶ Do As Infinity 26th Anniversary LIVE

・日程:2025年10⽉3⽇(金)
・会場:LINE CUBE SHIBUYA


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