2級小型船舶免許取得を取得してみた 気になる試験の内容と費用について解説
幼少期から釣りという遊びに親しみ、早いもので40年以上。社会人になってからは、陸っぱりでシーバスやアオリイカを追い求め、30代に入ったころ初めてボートに乗船。熊野沖で格闘したシイラ釣りは良い思い出だ。
そんな私がこのたび、2級小型船舶操縦士免許を取得。遊びの幅が広がるのはもちろんだが、今回は免許取得までの道のりなども交え、新たなオヤジの挑戦とその魅力を紹介しよう。
船舶免許取得のキッカケ
私は年間を通して、四季折々のターゲットを追い求めているが、特に最近ではボートでの釣行回数が増えた。青物やアオリイカ、ここ最近ではビンナガなども大好きなターゲットだ。もちろん、沖釣りといってもマイボートは所有しておらず、釣友のボートや遊漁船、釣友に船長をしてもらいレンタルボートで遊びに行くのがもっぱらだ。
正直私の中では、今まで誰かに操縦してもらい釣りをするのが当たり前で、多くの大物にも出会い感動も味わってきた。しかし、船長さんに「どうぞ、始めてください」と言われ釣りだけに集中し、さまざまな考察から仕掛けやアプローチを駆使し大物を狙う。もちろん釣れればうれしいが、いつからか「なぜこのポイントで釣れたんだろう」とか「遊漁船ってよく釣れるよな?」など、釣り場の選び方やボートの流し方など、その考察や海の中の様子を詳しく知ってみたいと思うようになった。
また今までお世話になってきた船長たちの人柄も素晴らしく、釣り人以上に喜んでくれる姿が印象的で、自らが釣るのではなく「釣らせてあげたい」という思いからハンドルを握り、喜びを共有する。そんな景色を私も見てみたいというのも大きなキッカケだった。
免許の種類
プレジャーボートやレンタルボートで沖に出て船長として操縦するために必要となる資格が、小型船舶操縦士免許(国家資格)となる。この免許には1級と2級の2種類があり、操縦できる船の大きさ(24m未満、総トン数20t未満)は同じだが、航行できる区域に違いがあり、1級であれば水域制限はなく2級は陸から5海里(9.26km)の範囲となる。
私の場合、いきなり1級取得も考えたが、講習費用や試験内容、2級からのステップアップ試験などもあることから、現状楽しんでいる釣りの内容も踏まえて、2級で十分な航行範囲を確保できると判断した。ただ、ビンナガやカツオなどを狙う海域までは含まれないことが多いので、注意してほしい。
講習内容・費用について
受験する免許の種類が決まったら、次は講習や試験手続き、免許申請などを代行してくれるボート免許スクールを探す。独学で勉強し、講習や試験手続きの代行を受けず、全て自分で行うこともできるが、手間や合格率も考えて私はスクールにお願いした。
主にボートを管理するマリーナや、ボート販売店が行っていることが多いようだ。私の場合もインターネットで「2級船舶免許地域(お住まいの場所など)講習」などのキーワードで検索すると、数社がすぐヒットした。
どこも費用や内容に大きな違いはなく、2級免許取得の通常コースであれば、週末に行われる学科講習1日(8時間)と実技講習1日(8時間)、国家試験費用や教材代が含まれ、8万5千円前後だった。
またスクールによっては学科講習がなく、自宅学習を選択できるコースも用意してあり、こちらは学科講習で試験に出る要点などは確認できないが、講習に取られる時間はなく自分のペースで勉強を進めることができる。費用も7万5千円前後と1万円ほど安く、週末が忙しい人や費用を抑えたい人にはオススメで、私はこのコースを選択した。
あとスクールを決定する際のポイントとしては、講習会場や日程も確認しておきたい。学科講習と実技講習の場所が違う場合もあり、私の場合はいずれも自宅から20分程度の場所だった。日程に関しては、どこのスクールも講習は週末、試験は平日といった内容だった。
その他スクールによっては、国家試験免除コースなどを通常費用の1・5倍程度で選択できるスクールもあった。このようにある程度選択肢があるので、スクールや受講コースを決定する際は自分の都合や予算、受講会場なども確認して、自分にマッチした内容を選べばいいと思う。
申し込みに必要なもの
スクールが決まったら、次は申請に必要な書類などを準備し、講習日と試験日程を決定する。必要書類だが、私の場合スクールのホームページから受講申込書と免許申請の委任状をダウンロードし、講習希望日など必要事項を記入。住民票1枚をコンビニの行政サービスから交付し、免許や受験票で使用される証明書用写真3枚を準備。
日程は5月上旬の申し込みを想定し、その際に申請できる最短日程の6月16日(日)に実技講習。6月27日(木)に国家試験(実技・学科)とした。
スクールでは申し込みを行うと、その場ですぐテキスト、問題集、実技試験チェックリスト、試験内容の説明書類、結索(ロープの結び方)の練習用ロープが渡された。
学科試験に向けて
学科試験は3項目となり、心得・遵守事項、交通の方法、運航といった船を操船する上での基本的な内容がメインとなり、合格基準は50問中33問正解で、各科目50%以上の正解率が必要だ。
覚えることも多く、学習用のテキスト、問題集はともに130~150ページとボリューム満点。私の場合、試験日の約1カ月前からボチボチと学習を始め、昼休みにテキストを読み夜は30分~1時間程度問題集を行うという形で、全ての問題を解いた。好きなことなので非常に興味深く学習が進み、ある程度知っている部分もあったが、操縦や航路のルール、標識や海図記号の見方など無知な部分も多かった。
ちなみに、スクールに通った人の学科試験合格率は9割程度。決して難易度が高い試験ではないが、受験した印象から言うと適当な勉強で合格できるとは思えず、これから実際にボートを操縦することも考えれば、ひと通りテキストと問題集に目を通しておくことが重要だ。
実技試験に向けて
実技試験は点検やトラブルシューティング、結索などの小型船舶の取り扱い、直進や後進、旋回などを行う基本操縦と人命救助や着岸・離岸などの応用操縦の3科目。300点満点の減点方式で各科目60%、合計70%が合格基準。結構盛りだくさんな内容だが、実際に船に乗れる実技講習は午前9時集合、午後4時半解散の1日のみ。
最初こそ初めて滑走した際は、「めっちゃ気持ち良いやーん」と余裕だったが、講習が進むにつれ「船ってまっすぐ走るの超ムズイ」「着岸では桟橋にガツンッ」「安全確認マジ忘れる…」と、心配な感じ。とはいえ、指導員の人にしっかりとポイントを教えてもらい、操縦に関してはかなり余裕が持てるようになった。
試験日までの10日間で復習が必要となったのは安全確認や結索、トラブルシューティングなどの部分。結索については暇があればロープを結び、試験前には手が勝手に動くまでになった。
あとはYoutube動画をフル活用。実技試験の動画が多数アップされているので、それを活用して操縦や安全確認などはイメージトレーニングした。実技試験に関しては、こちらもスクールに通った人の合格率は9割程度。指導員の話では、実技講習で習った部分をしっかりと復習しておけば、合格間違いなしとのことだった。
学科・実技試験
試験当日は午前8時45分集合で、まずは学科試験から始まる。ここで絶対忘れてはいけないのが受験票。ちょいちょい忘れる人がいるようだ。
そして試験説明、視力検査と進み、いざ学科試験の開始。試験時間は70分。マークシート形式で時間的には十分余裕があった。ただ注意点としては「適切なもの」「適切でないもの」など、正誤判定が多いので問題を最後までしっかり読んで、最後の見直しもしておくと良さそうだ。あとは試験後、すぐに回答が張り出されるので、解答用紙に答えを書いておくと自己採点が行える。ちなみに私はしっかりと勉強した甲斐もあり、自己採点では49問正解。惜しくもパーフェクトは逃したが、まずはひと安心。
続いて実技試験会場に向かう。実技試験はその日のうちに行われ、学科試験終了後に自分の試験時間が指示される。私は、午前11時半からスタート。会場はいつもサワラ釣りなどでお世話になっている伊勢市内のマリーナ。普段から見慣れた光景だが、試験ということで普段は気にならないちょっとした微風やさざ波まで、海のコンディションが気になる。
自分の番号が呼ばれ、実技試験スタート。まずは結索の試験から始まり、試験員からの課題は「巻き結び」。「そんなん楽勝やん!」と思ったものの、緊張からか「あれ?あれ?」と焦ってしまい、頭の中は混乱状態。しかし、日々の練習が生きた。勝手に手が動く形で無事に結索完了。
ここからは実際にボートへ乗船する。ポイントとしては、まずは安全確認を忘れないこと。大きな声で「前方ヨシ、後方ヨシ、右ヨシ、左ヨシ」など、常に周囲の状況を確認する。人命救助も一発でクリアし、ポール間を滑走する蛇行運転も無難に終了。着岸こそ風の影響を受けて、あまり寄せることができなかったが、何とか桟橋にボートを係留し試験終了。あとは結果を待つだけになった。
合格発表までの流れ
合格発表の速報は日本海洋レジャー安全振興協会のホームページで、試験日の1週間以内に発表される。ドキドキで結果を確認し無事合格。免許は7月10日に届いたので、試験日から約2週間で新米船長の誕生だ。有効期限は5年。新たな釣りライフの始まりにワクワクが止まらない。
<週刊つりニュース中部版APC・橋本広基/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2024年8月9日号に掲載された記事を再編集したものになります。