能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第13回)
シリーズ・バス終点の旅 滝沢~矢田編その3・ぐるりん矢田
滝沢集落の探索を終えた私たちは、バスの終点の上滝沢停留所近くに停めた2メートル氏の車に戻りました。そして、車の中で、バスで来る途中に気になった矢田集落に向かう準備をしていると……そこにちょうどバスがやって来た。上滝沢発、東部営業所(野内駅の近く)行きというバスがあるようです。
このバスも私たちの目的地・矢田を通ります。このバスを追っていけば、矢田でぐるっと回るバスが見られるかも!グッドタイミング!
バスが出た直後に出発した私たちは、くしくも、バスを追っかける形となりました。
「運転手さん(2メートル氏)、あのバスを追って!」状態。
交通量が少ないし、バスに乗るお客さんもいないので、巻かれることも追い越すこともなく、ずーっと追えてしまった。
太い道に出ると、バスはマエダアリーナのほうに寄り道していく形を取るので、我々の車はバスを追い越してしまった。(地図をご参照ください)
こうなれば、矢田バス停に先回りして、悠然とバスを迎え撃ちましょう。
ということで、我々はバス通りの細道に入り、矢田に先に着いた。例のぐるりんとまわるバスの転向場(前々回参照)の近くに車を停め、さっきのバスをわくわく待ちます。
位置関係はこのようになっております。
矢田バス停と、バスがぐるっと回って帰っていくための転向場。
バスは上の写真の右側からこのロータリー(?)に入ってきて、向こう側の道を左回りにぐるっと回って手前に来て、写真右端の小屋のある「矢田」バス停に止まります。のどかな田舎道でバスがぐるーっと回る様子、見たくない?私は見たい。
私と2メートル氏がバスを待つこと数分……
さっきのバスが来たーーー!
あらためて動画を見てみると、出発時からいっしょだったので、バスを追っかけていたことが運転士さんに絶対バレている……と私は変なことを気にしてしまっている。それに対し、2メートル氏は「これ、かわいいですね!ぐるっと回るのかわいいですね!」と純粋に楽しんでいる。私は反省した。それこそがこの連載の精神だ!
ということで、このちっちゃいバスがゆ~っくりと円を描いてこのバス停にやってくるの、かわいくないですか?私は見に行って良かったと思ったよ!
そして乗客0人のバスは、「矢田」でも誰も乗ることなく、空気を運んだまま終点へと向かっていった。
かわいいバスを見送りました。無事に終点までお行きなさい。
さて、あらためて矢田バス停を見てみましょうか。
おそらく雪の季節のために待ち合い小屋があるのだけど、その足下にはかわいい花々の鉢が並んでいる。きっと住んでる人たちがお世話しているんだよね。キュンとしちゃうね。
待ち合い小屋があるのに、外にもベンチがあるという仕様もイケている。天気がよければテラス席的な感じでここでバスを待つことも可能ってわけですね。
鉢植えのお花、色の取り合わせがとってもかわいいと思う。センスいい。
そして、気になるのは、バス停のそばにある「猿田彦大神」と書かれた岩である。
なんか、妙にカラフル!これは………何?
周りを見渡しても神社らしきところはなく、この岩自体がご神体、的なことなんだろうか。恥ずかしながら私は神社関係に詳しくないのでよく分からない。
それにしても、この手のものとしてはずいぶんポップな色づかいじゃないですか?
文字は金色だし、月と日にかかる水色の雲もかわいいし。下に描いてあるのは富士山なのだろうか?あと、失礼ながらあまり字がきれいじゃない(特に右側、「実政」?の字)というのも素朴でほんわかしてしまう。
繰り返しますが、まるでこの手の神様に詳しくないもんで(しかもここはおまけで寄ったところなのであまり調べていない)、まるっきり見当違いのこと言ってたらごめんなさい。先に謝っときます。
少し調べたところによると、同じような岩が、近所のみちのくシェークの裏あたりと(こちらはモノクロの碑である)、少し離れた矢田前字弥生田にあるみたい(こちらは少し彩色がある)。
今回は近所の人に聞き込みしなかったので、書けることはこの程度である。ネットで調べた程度じゃあまり情報が出てこない。このあたりの神様事情、とても気になる……。
ついでに言えば、矢田集落にはやたら小さな鯉のぼりが飾ってあった。
ここに行った時の季節は秋である。鯉のぼりの時季から最も遠い。これもとっても気になるのであった。
ほら。なにやら水路沿いに。
物干し竿に、洗濯物ではなく鯉のぼりがそよいでいる。ほらほら。
おまけのように寄ったのであんまり深追いしていないんだけど、このように、矢田集落もかなり気になる案件がたくさんあるのだった。
そんなわけで、「バスの終点」という、住民くらいしか行かないしさすがに何もないのでは……?と思えるところでも、青森の終点であれば山ほど書くことがあるということが判明。
今後もぼちぼち、青森のはじっこや終点を掘り返していきたい次第であります。
by 能町みね子
【プロフィール】
北海道出身。文筆業。著書に、『逃北』(文春文庫)、『お家賃ですけど』(東京書籍)、『結婚の奴』(平凡社)など。大相撲好き。南より北のほうが好きで青森好き。新刊・アンソロジー小説集『鉄道小説』(交通新聞社)では青森の妄想上の鉄道について書きました。
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