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AI面接は邪道?いや、むしろ人事や転職者にとって救世主なのかもしれない

エンジニアtype

AI面接は邪道?いや、むしろ人事や転職者にとって救世主なのかもしれない

「AI面接って実際どうなんだろう……」

そう感じる人は、決して少なくないだろう。人間の判断が機械に置き換えられることへの抵抗感は自然なものだ。

だが実際の導入現場をのぞくと、そのイメージは少し違う。AI面接は「採用を自動化する便利ツール」という話にとどまらない。

では一体、何が起きているのか。関係者の声から、その正体を探ってみたい。

今、続々とAI面接が生まれている理由

今、採用現場で「AI面接」が急速に広がっている。

その背景について、AI面接サービス『AI面接官』を開発・提供するVARIETAS(バリエタス)社の広報・小澤礼奈さんはこう説明する。

「AI面接が導入され始めている背景には、公平に見たいけれど見切れないという人事側の限界があります。会いたい学生や求職者がいても、時間と人員が足りず、どうしても書類で足切りしてしまう。その結果、一部の学生や社会人にしかチャンスが回らないというジレンマを、人事も求職者も抱えているんです」(小澤さん)

「さらに短時間の面接だと、面接慣れしている人が有利になりがちで、実力を十分に発揮できず、不完全燃焼で終わってしまう人も少なくありません。AI面接はこうした課題を“AIで補う”発想なんです」(小澤さん)

事実、学生の約8割がAIでエントリーシートを作成しているという調査もある。「書類の出来」だけで個人の素質を見極めることは、ますます難しくなっている。

さらに大企業に志望者が集中することで人事の負担は増加。経団連が2030年に向けて「通年採用」や「職種別・ジョブ型採用」への移行を掲げていることもあり、従来型の採用体制では対応しきれない複雑性も高まっている。

そんな中、AI面接であれば、24時間365日、全国どこからでも受検でき、全候補者に一律の基準で対応できる。準備や慣れの差を減らし、実際の行動や思考を掘り下げる質問で、本質的な素質に迫ることがしやすいというわけだ。

面接官はもう人間だけじゃない時代へ

「つまりAI面接は、人事が本当に会いたかった求職者に光を当て、書類や短時間の面接では見えにくい力をすくい上げる技術なんです」(小澤さん)

採用の研究・実務の双方に精通し、多くの企業の人事制度にも助言してきた人材研究所 代表の曽和利光さんもこう続ける。

「そもそも10年以上も前から『面接の精度の低さ』は問題視されてきました。その代わりとして適性検査や構造化面接が導入されてきた経緯があります。AI面接は、そうした流れの延長線上にある新しい選択肢なんです。

実際には、まだAIだけで面接を行う企業はほとんどなく、一次選考のエントリーシート代わりに活用されているのが実態ですが、今後はさらに使われ方がアップデートされていくでしょう」(曽和さん)

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「AIが担っているのは初期選考の公平化です。一方で、最終判断は人間が行う。AIが広く可能性を拾い、人が深く見極める。その役割分担が理想的だと考えています」(小澤さん)

AI面接は、人間を排除するための技術ではない。

膨大な候補者の中から公平に可能性を拾い、人間が文化や価値観との相性を判断する。その“役割の最適化”こそが、採用の質を高めるカギとなっている。

AI面接が広げる“公平性”という視野

対話型AI面接「AI面接官」を開発・提供する株式会社VARIETASの調査によると、AI面接を受検した学生の受検者の94%が「ポジティブな体験だった」と回答し、「緊張せずに話せた」「自己分析が深まった」といった声も多いという。

もちろん、AIの評価ロジックが候補者からするとブラックボックスになりがちな点は、課題は残る。

それでも、AIが面接の公平性を担保する新しい方法として、一定の成果を上げ始めていることは確かだ。

「AIは万能ではありません。でも、これまで見落とされてきた可能性を拾い上げる力はある。 テクノロジーが進化しても、“誰を見るか”は結局人間が決めるんです」(小澤さん)

テクノロジーが補うのは、人間の視野の限界だ。

AI面接が拾い上げているのは、これまで選考の外にこぼれ落ちていた多様な可能性。

そして“誰を選ぶか”は、最後まで人間が決める。

AI面接は、人間の判断を奪う技術ではなく、その“視野”を広げる技術と言えそうだ。

VARIETAS マーケティング室 小澤礼奈さん

慶應義塾大学卒。リクルートに新卒入社 後、『スタディサプリ』のセールスに従事。 その後LINE(現LINEヤフー)へ転職し、 プロダクトPRを担当。2024年にVARI ETASへ入社、広報責任者に就任

人材研究所 代表 曽和利光さん(@toshimitsu_sowa)

主に企業の人事部への採用コンサルティングなどを行う。1971年、愛知県豊田市出身。灘高等学校を経て1990年に京都大学教育学部に入学、1995年に同学部教育心理学科を卒業。 (株)リクルートで人事採用部門を担当、最終的にはゼネラルマネージャーを務めたのち、(株)オープンハウス、ライフネット生命保険(株)などで人事を担当。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を越える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで執筆する。著書に『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』、『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)がある

編集/玉城智子(編集部)

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