海洋学部出身の釣り好きがオススメする自由研究は【海辺の砂の中の生物を探してみよう!】
夏休みの自由研究のテーマに迷う?そんな時に使えるヒントを海洋学と海洋生物学を大学で専攻していた筆者の実体験をもとにお伝えしたい。
海辺の砂の中の生き物
大学生の時に夏休みの子供向けに同じことを行なったのでそのことを紹介したい。今回紹介するテーマは「海の砂の中の生き物の観察」だ。海水浴などで普段みんなが歩く波打ち際の砂や石の隙間には沢山の生き物が暮らしている。そんな生き物を観察してみてほしい。
用意するもの
まずは用意するものは以下の通り。
・虫眼鏡
・顕微鏡
・爪楊枝
・袋
・スコップ
・水
・海の砂
家庭で揃えるとなると唯一ネックなのが顕微鏡だろうか。細菌が見えるレベルとなる倍率2000倍とかの顕微鏡でなくネット通販で5000円程度で売られているもので十分事足りる。肉眼でも見える大きさの生き物も多いため最悪虫眼鏡だけでもいいだろう。
ただ見つけた生き物のスケッチをするとなると虫眼鏡の倍率では難しいこともある。その場合、顕微鏡は必須となる。海の砂は河口、砂浜、砂利浜などの異なる場所で採取したものを最低2ヶ所は欲しい。
研究手順
手順は単純。虫眼鏡で見る場合は、採取した砂をバットなどに乗せて生き物を探す!ひたすら探す!コツとしては採取した砂をバットに一気に乗せるのではなく、スプーン一杯分づつくらい乗せて薄く広げると見つけやすいだろう。
顕微鏡の場合
スライドガラスに薄く砂を乗せて、ひたすら探す。見つけられなければ砂を変えて同じことの繰り返し。砂を変える際、スライドガラスを指や布で拭うと傷がついてしまう。水を貯めた容器の中で砂を落とすといいだろう。本来、採取地の異なる砂が混ざらないように多くの器具において別々のものを使うべきだが、今回はそこまで気を使わなくてOK。まだ観察していない砂が混ざらなければひとまずは大丈夫。
見つかる生き物の代表例
採取地点により、生き物の量や種類が異なることが予想されるが、
・ヨコエビの仲間
・多毛類
・貝の仲間
などが見つかるだろう。
それぞれの特徴などを少し解説したい。
ヨコエビ
ヨコエビはエビと名前にあるがエビではない。砂浜などで釣りをしている時に波打ち際や漂流物の近くをピョンピョンと飛び跳ねる白っぽい生き物に遭遇したことはないだろうか。あれらがヨコエビだ。
東京大学大気海洋研究所によると1万種の報告があるそうだ。まだまだ未知種も多いと考えられている巨大グループだ。種類により見た目と異なる。何種類かいたら是非とも見比べてほしい。
多毛類
多毛類は釣り人にも馴染み深い生き物だ。釣り餌のゴカイ系はおおよそこの多毛類に分類される。多毛類も非常に繁栄しているグループで未発見も含めると万を超える種類がいるとされている。
釣り餌に使えるような立派なゴカイはなかなか取れないが小さく細いゴカイは意外と遭遇率はあるだろう。個人的には砂というか泥に近い細かい底質での遭遇率が良い。千切れやすい多毛類も多いので切れないように慎重に観察するといいだろう。
貝の仲間
貝の仲間も場所によっては多く見られるかもしれない。アサリやシジミのような二枚貝や巻貝がメインとなる。古代より我々人類の食を支えてくれている貝類も拡大して観察する機会はなかなかない。
動きは速くないため観察はしやすいのだが、周囲の砂や砂利と同化して見つけにくいこともしばしば。根気よく探してほしい。貝も種類により殻の質感や形が大きく異なる。
また二枚貝は殻をよく観察すると、その貝の年齢をわかる。見つけた貝の年齢を調べるのも面白いはずだ。
間隙性生物
ここで見つかった生き物のほとんどが間隙性生物というもので、砂や砂利の粒子の隙間で生活している生き物だ。
隙間なんてあるの?と聞きたくなるが、隙間はある!砂浜で穴掘って遊んだことがある人も多くいるだろう。その時、波がこない場所の穴でも底には水が張っているということもあるだろう。その水こそが生き物が棲まう隙間を満たしている水だ。ちなみにこの水を間隙水という。
少々話が逸れたが、ほかにも海浜性昆虫やカニなどが見つけられるかもしれない。また生きてなくても、漂着した死骸や体の一部など生き物の痕跡が見つかることもある。もしかすると意外な生き物の痕跡を見つけられることもあるかしれない。
ポイント選びのヒント
見つけた生き物を地点ごとに書き出して比べてると、生き物を多い地点、少ない地点、ほとんど見つけられない地点があるかもしれない。生き物の多さの違いは砂を採取したところや砂の大きさから理由を考えてみてほしい。底の粒子が小さいところは風や波、潮流が比較的穏やかで粒子が流されにくいと考えられる。
一方、底の粒子が大きいほど風や波、潮の流れが強いことが予想される。どちらが生き物にとって流されにくく、棲みやすいかが考察の大ヒントだ!
子供の興味は予測不可能
大学時代に同様のことした時は市の科学館でやったと記憶している。見つけた生き物をじっくりと見る子供もいれば、生き物を見つけるよりも、自らの指紋や髪の毛が気になり身近なものを観察する子供など反応は様々。なんなら指紋を見る子供の方が顕微鏡を離さない始末だ。子供からすれば見慣れない生き物より身近な存在の真の姿が気になるのだろう。
企画した我々の望んだ結果でなくとも個人的にはこれで良かったと思う。「これは何?」「どうなっているのだろう」という感情こそが科学の始まりであり、現代技術の礎になっていることは疑いの余地はない。この駄文が子供達の好奇心をくすぐるきっかけになれば幸いだ。
<永井航/TSURINEWSライター>